街中でサッカーユニフォームを着用する人が増えている。近年、ストリートファッションにおける一大潮流となった"ブロークコア"の例を出さずとも、確実にシーンに定着しつつあるアイテムといえるだろう。高円寺にあるサッカー古着の専門店"ソシオフットボールショップ"は、そんなファッションとしてのユニフォームスタイルをオープン当初から提案してきた。
店内には、90年代のレアなアーカイブから近年のモデルまで、オーナーの中川さんが買い付けたユニフォームやトレーニングシャツがところ狭しと並ぶ。今回はサッカー世界大会の開幕直後のリアルな熱気とともに、ファッションとユニフォームが融合する現在のシーンについて、中川さんに話を聞いた。
プロフィール
Socio football shop Owner
中川 陸|Riku Nakagawa
Instagram:socio_football_shop
小学1年のときに始めたサッカーに打ち込む傍ら、大学生の頃にはユニフォームの収集も本格的に開始。2024年にはユニフォームおよび古着に関する知見を活かし、欧州のヴィンテージユニフォームを中心に揃える"ソシオフットボールショップ"をオープン
ビッグ6、プレミア優勝、日本人在籍チームetc… 店頭でいま人気を集めるユニフォームの特徴は?
─ いよいよ開幕しましたが、やはりこの時期はお店も忙しくなるんでしょうか?
そうですね。ただ、自分も別のスタッフもW杯を現地に見に行く予定があるので、店に立つ人間をどう確保するのかという別の悩みが出てくる時期なんです…。現地で観戦する予定とお店の営業がどうしてもぶつかってしまうので、そこにちょっと頭を悩ませています(笑)
ー期間中はいちサッカーファンの希望とお店の運営を両立するのが難しい時期なんですね(笑)。ちなみに買い付けに関しては、どういったルートで行われているんですか?
現時点では、ほとんど海外からになります。最近はどうしても渡航費や滞在費がかさんでしまうので、なるべく価格を抑えて提供することを考えると、現地のディーラーさんに商品を送ってもらうことも多いですね。とはいえ、実際に自分たちがヨーロッパに行く機会は定期的に作るようにしています。今年の3月末から4月も、スコットランドとイングランドを回って集めていました。
ーどおりで店内を見渡すと、プレミアリーグのアイテムが目立つ気がします。お客さんがいま探されているチームや、人気のアイテムの傾向などはあるんでしょうか?
元々、オープン当初からイングランドのプレミアリーグに力を入れて展開していた名残りもあり、今でもプレミアリーグのチームの割合は高いです。最近はイタリアのセリエAやスペインのラ・リーガ、さらには代表チームのユニフォームにも力を入れていますが、商品の半分弱くらいはプレミアですね。今季のトピックとしては、アーセナルというノースロンドンをホームとするチームが22年ぶりに優勝したんです。元々人気が高いチームなのですが、年代問わずアーセナルのユニフォームを探されている方はいま多いですね。
ーアーセナルは昔から人気があるクラブですよね。5月末に地元で行われた優勝パレードもすごい盛り上がりだったようです。ほかに人気が集まるユニフォームの特徴はありますか?
プレミアリーグでいえば、ちゃんと強い上に資金力があるビッグ6(※)と呼ばれるチームは当然人気が高いです。さらに付け加えると、日本人選手が所属していたチームにはファンの方がつきやすいですね。それこそ冨安選手がいたアーセナルをはじめ、過去には南野選手、現在は遠藤選手が所属するリバプールに加えて、少し前だと香川選手がいた頃のマンチェスター・ユナイテッドのユニフォームなども人気があります。やはり、日本の選手がいると自然と応援したくなりますよね。
ーソシオさんでは年代問わずにいろいろなユニフォームを揃えていますが、最近のユニフォームと昔のユニフォームの違いはありますか? 今のファッションとの合わせやすさの違いもあればお聞きしたいです。
近年のユニフォームはパフォーマンスに特化する分、どうしても身幅が細くなりがちです。逆にそのシルエットを活かして、バギーパンツやワイドデニムを合わせるスタイルはすごく今っぽくてかっこいいと思います。近年ものはとにかく軽くて涼しいし、夏用のトップスとしての機能面でのメリットが大きいのも強調しておきたいですね。それに対して、90年代のユニフォームは身幅が広く、作りがボックスっぽいモデルが多いんです。襟が付くタイプのデザインも多く、スポーティーというよりクラシカルな印象になるイメージですね。古着っぽい感覚の延長で私服に取り入れやすいのは昔の90年代のほうのユニフォームだと思います。
ソシオに聞くユニフォーム選びの基本。オーセンティックとレプリカの違い、急増する偽物ユニ問題など
ー新品・古着問わず、ユニフォームに詳しくない方が一着目を選ぶにあたって、最初につまずくポイントのひとつに"オーセンティック"と"レプリカ"の2種類が混在することが挙げられる気がします。よく耳にするレプリカとオーセンティックは具体的に何が違うんでしょうか?
結論から言えば、プレー用ではなく普段使いの街着として使いたいなら、断然レプリカがおすすめです。レプリカというと、偽物みたいにも聞こえてしまう響きですが、サッカーユニフォームにおけるレプリカはれっきとした汎用の正規品です。対して、オーセンティックはより選手用に近い、もしくは同じ作りです。オーセンティックは軽量性や通気性などの機能性に特化して作られているため、レプリカに比べて耐久性はやや劣ることが多いんです。
ー耐久性という意味では、レプリカのほうが普段使いには向いているんですね。
そうですね。また、例えばエンブレムのロゴひとつ取っても、オーセンティックが圧着仕様だったりするのに対し、レプリカは刺繍仕様にアレンジしていたりと、作りはレプリカのほうが凝っている場合も多いです。もちろん、応援する選手が試合で着ているユニとできるだけ同じものを着たいという方もいらっしゃいますが、必ずしもそうでない方にはレプリカのほうをおすすめします。
ー最近はフリマアプリなどでの偽物問題も耳にします。本物を見極めるポイントについても話せる範囲で教えてください。
たしかに偽物は増えていると思います。中でも、このアンブロタグの偽物はよく見かける印象ですね。昔のユニフォームはアンブロが供給しているボディが結構多いので、昔のユニフォームの価値が見直されるにつれて、アンブロの偽物も増えてきています。また、うちでは商品に全て年代を記載しているのですが、年代や品番は内タグを見れば分かることが多いです。他にもプリントの種類やネームのフォント、パッチのディテールなど、話せばきりがないくらいチェックポイントはいろいろありますね。
デザインの好みだけで選ぶのもあり?「好きなチームのユニを着てる人を街で見かけたら、みんなテンション上がるはず」
ーWEBのオープンからカウントするとソシオさんは4年目とのことですが、サッカーユニフォームに対する街のムードや、世間での受け入れられ方の変化は感じますか?
いわゆるサッカー少年のものじゃなくて、おしゃれの一環として認められてきた感触はすごくあります。店を始めたときから、その兆しはありましたが、より多くの人に浸透してきたのはここ最近だと思います。バレンシアガやグッチに代表されるラグジュアリーブランドがアディダスなどのスポーツブランドとコラボする機会も増えましたし、もっと身近な例としては、GUがマンチェスターシティとコラボして昔のデザインをサンプリングしたコレクションも先月リリースしていました。サッカーユニフォームを私服で着ることの認知が進んできたので、いろいろな方が数年前よりも試しやすくなってきたのではないでしょうか。
ー普段着としてのユニフォームが広がりを見せる一方、「自分はサッカーに詳しくないけど着ていいのかな?」と躊躇してしまう方もいると思います。そのあたりについて中川さんはどう考えていますか?
個人的には全然ありだなと思っています。普通に街でもこれだけ着られるようになったという意味では、単純にユニフォームである前にまず服だと思うんです。ユニフォームというアイテムがこれだけ一般化した今であれば、デザイン先行で選ぶ方が増えるのも当然ですよね。事実、うちの店でも「チームのことはよく分からないけど、デザインがかわいいから買う」みたいな感じで買っていかれる女性のお客さんなどは増えています。
ーそもそも、気軽にユニフォームを手に取る方が増える状況自体が喜ばしいという考え方ですね。
その結果、自分が買ったチームのニュースがテレビやネットニュースなどで流れてきたら、やっぱり気になると思うんです。ユニフォームをきっかけにして、そのチームやサッカーのことを好きになる方もいるだろうし、僕は全然それでいいと思います。本当にファンじゃないと着ちゃいけないとか、詳しく知らない人は着ちゃいけないとかは全くないですね。やっぱりサッカーってみんなで応援するものじゃないですか。好きなチームのユニを着ている人を街で見かけたら、たぶん僕は無条件でテンション上がります。サポーターの人はみんなそうだと思いますけどね。
語りどころ満載!今だから袖を通したいソシオ的おすすめユニフォーム5選
ここからは今まさに袖を通したいユニフォームを店頭にてピックアップ。中川さんのアツい推しコメントとともに5着を厳選して紹介していく。
22年ぶりのリーグ制覇が話題。中川さん一押しの"アーセナル 1994/96 home"
先ほども触れたとおり、アーセナルの昔のユニフォームを探している方は今増えています。アーセナルに限らずですが、個人的にもこの96年あたりのユニフォームは特に好きなデザインが多いですね。この年代はどことなく品があるユニフォームが多かった時代だと思うんです。日本経済に勢いがあったこともあり、胸スポンサーには日本企業のロゴがよく採用されていました。ボックスシルエットを活かしてシブく着こなしてほしいですね(価格:44,000円 / サイズ:M)
遊び心あふれるレアなパイル地がポイントの"マンチェスター・ユナイテッド 1999/00 away"
マンチェスター・ユナイテッドの1999-2000シーズンのアウェイなんですけど、これがなんとパイル地なんですよね。今はもちろん、当時でもパイル地というのは珍しい。まあ、選手からは『汗を吸うと重くなる』という理由から不評だったらしく、すぐに撤廃されてしまいました(笑)。とはいえ、見た目はかっこいいですし、いい意味でユニフォームっぽくない質感なので、より普段着っぽい感覚で取り入れやすいと思います(価格:23,900円 / サイズ:XL)
ユニフォームにモードの感性を注入した先駆け的存在の"レアル・マドリード 2014/15 third (ヨウジヤマモトコラボ)"
これはヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)とのコラボなんですよね。いち早くユニフォームとファッションが融合したひとつの例ではないでしょうか。ヨウジヤマモトのデザインによる2匹の竜は、左を向く"ドラゴン・キング"がクラブの偉大さ・栄誉・強さを、右を向く"ドラゴン・バード"が忍耐力・信念・勝利を呼び込む鋭敏さを象徴しているそうです。ネックの内側にヨウジヤマモトのロゴがあるのもポイントですね(価格:39,900円 / サイズ:XL)
型破りなゴールの数々でサッカーファンを魅了した、あの名選手のネームが入る"スウェーデン代表 2014 home"
アディダス製の2014年モデルで、イブラヒモビッチのネームが入ったタグ付きのデッドストックです。この時期のスウェーデン代表はすごくアツいチームで、予選でドイツ相手に0-4から4-4に追いついたり、プレーオフでポルトガルと戦った際は、両チームのエースであるロナウドとイブラヒモビッチでバチバチに点を取り合ったりしていたんですよ。こういう試合の記憶やバックグラウンドを含めて肩入れしたくなるのも、サッカーユニフォームの面白さです(価格:22,900円 / サイズ:L相当)
代表ユニの中では1,2を争う人気を誇るデザインの"イングランド代表 2003/05 home"
近年、日本でサッカーユニフォームが私服として着られるきっかけのひとつになったのが、まさにこのイングランド代表です。インフルエンサーの柴田ひかりさんらが私服で着こなした姿がSNS経由で注目されたのは、日本ならではの流行り方だと思います。実はこれ、地味にリバーシブルなんですよね。裏はちょっとボーダーっぽいデザインになっていて、そちらも着やすいです。店頭に出せば、売れるスピードも早い人気の一着ですね(価格:22,900円 / サイズ:XL)
スニダンで人気のサッカーユニフォームもチェックしよう
ちなみにスニダンでもサッカーユニフォームの取引はいま増えている。巷で話題となっているアディダスのアウェイユニはもちろん、1993年のナショナルチームの復刻ユニや、7組の人気ブランドとコラボしたナイキの"X2コレクション"など、幅広い選択肢の中から自分好みの一着を選べるはず。ぜひこちらも併せてチェックしてみてほしい。



