Levi's®がこれまで世に出してきた歴史的名品の数々を忠実に再現するコレクション「Levi’s® Vintage Clothing(LVC)」が、いまアツい。デニムジャケットの王道である"1st"や、ジーンズに詳しくない人でも一度はその名を耳にしたことがあるであろうマスターピース「501®」など、さまざまなアイテムが復刻されては激しい争奪戦が繰り広げられている。ではなぜLevi's®の品々はファッション好きたちをそこまで虜にし続けるのだろうか?BerBerJinにてディレクターを務める藤原 裕さんに話を聞いた。
Profile
藤原 裕さん
BerBerJin director/BIG YANK creative director
Instagram:@yuttan1977
YouTube:ヴィンテージデニムアドバイザー藤原 裕 CH
「原点であり頂点」と称される、Levi's®の501®XX
─ 最初の記事では1stタイプについて、その次の記事では2ndと3rdタイプのデニムジャケットについて伺いましたが、今回はジーンズである「501®」について。いわゆる"大戦モデル"と1947年モデルをご用意いただきましたので、これらを比較しながらいろいろ伺っていきたいです。
藤原 裕さん(以下、藤原): 僕もこの書籍『THE 501®XX A COLLECTION OF VINTAGE JEANS』を11年前に出させていただいたんですけど、Levi's®の歴史上でもっとも代表的なのが「501®XX」です。ジーンズブームの火付け役というか「原点であり頂点」とよく言いますね。歴史で見ると、リベット止めのジーンズが生まれたのが1873年。ただ、そのころはまだ「ウエストオーバーオールズ」という言葉で呼ばれていて、ロット番号としての「501」ができたのがさきほどお話したジャケットと同じく、1890年代です。
藤原: そこからサスペンダーボタンだったり1stのデニムジャケットと同じように後ろにバックルが付いたり、1922年にはベルトループが付いたり、徐々に進化を続けてきた。その中で戦争中にいろいろなパーツが省略されたという事実があります。
さきほどのジャケットも同じですが、大戦モデルは「S501®XX」といった感じで「Simplified=簡略化」の意味を持つ「S」が頭に付いています。代表的なディテールとしては、本来ならポケットに入っているアーキュエイトステッチがペンキで描かれたりしていましたし、赤タブに関しては、この頃はまだ片側にしか文字が書かれていません。通称"片面タブ"というヤツですね。あとはベルトループが極太で。後に少し細くなっていくんですけどね。
藤原: 後の1947年モデルと比較していくと、お話の内容としては1stのジャケットとほぼ同じです。「501®」といえば、このボタンフライ。大戦モデルはトップボタンに安い月桂樹ボタンが使われています。そしてそれより下部分の外からは見えないところに採用されているのが、いわゆるドーナツボタンと呼ばれる安価なパーツ。あとはコインポケットですが、大戦モデルはここにリベットを打ってないんです。
藤原: なので「S501®XX」は安いボタンを使っている、コインポケットにリベットがない、アーキュエイトステッチがペンキで描かれている。あとは簡素化以外のポイントでいうと、縫製。当時はそこまで技術がなかったのか、股のこの部分が切りっぱなしになってるんです。それが1947年モデルになるときちんと内側に処理されているので、技術面の進歩なんかも見られますよね。
ポケット内側の布がイレギュラーな"激レアジーンズ"の存在
─ 藤原さんがYouTubeなどでお話されていて興味深かったのが、ポケットの布がイレギュラーな個体があるという話です。
藤原: そうですね。そういったモノはヴィンテージの評価になってきます。通常は生成り色の生地なんですけど、戦争中は外から見えないポケットの内側には別の生地が使われてたりする。僕の書籍にも載せていますが、こんな感じのいわゆる"グリーンポケット"という、戦争中ならではのミリタリーの生地です。それは(本来使うはずの)白のスレキの布を省略する目的があったんじゃないかな。
藤原: あとは、ネルポケット。これだけで、いまの古着市場だと価格が100万円くらいプラスされますね。レアだから。これは私が持っている1930〜40年代のネルシャツなんですけど、そういったモノの余り生地をポケットの内側に採用してるワケです。
藤原: 僕もこれまで見たネルポケットの個体は10本ないくらいですかね。それくらいの激レアです。あと"デニムポケット"ってのも存在してるんですよ。
─ それってデニムジーンズで、ポケットもデニムってことですか?
藤原: そうなんです。この頃、U.S. ARMYとかU.S. NAVYで使われてたデニム素材ってペインターパンツみたいにちょっと薄手なんです。だからそういった生地がポケットに使われてます。僕はこれを探し求めてるんですけど、自分のサイズは見たことがないくらい激レアです。
Levi's®の「アーカイブ室」に収められた、8本のデッドストック
─ そんな歴史のある「501®」ですが、こちらがジーンズの"王様"みたいになってる理由ってどこにあるんでしょうか?
藤原: やっぱり最初のモノだから。ジーンズを作ったのはLevi's®ですしね。だからやっぱり「原点にして頂点」の地位は不動ですよね。
─ シルエットとしては、昔からストレートなんですか?
藤原: ズドンとしたストレートが特徴ですね。だからいまのLevi's® Vintage Clothing(LVC)がそういったシルエットで復刻版を作られてるのは、間違いじゃないはず。大戦モデルのデッドストックをお持ちのはずなので。私もサンフランシスコの本社に行ったときにアーカイブを見せていただきましたし。
Levi's®には「アーカイブ室」というヴィンテージを保管してるところがあるんですけど、そこで所有していないモノは作らない(復刻しない)んです。かつては「501®XX」の紙パッチと大戦モデルのデッドストックは所有されてたんですが、10年ほど前のある日、Levi's®の方がBerBerJinの姉妹店であるFAKEαに来たときに、いろいろなデッドストックがあるのをご覧になって。
藤原: 「アーカイブ室には『1922年』『1937年』『1947年』『1953年』『1958年(紙パッチ)』『BIG E』『66前期』のデッドストックがない」と。そうなったときに「Mr.Fujiharaが『501®』の書籍を作ってくれたし、ここで買おう」となったんです。それまでLevi's®の本社はそういったモノをアメリカでしか買ってなかったんですよ。日本にヴィンテージファッションのすごい文化があるという事実がわかっていても「アーカイブ室にはアメリカで買ったモノしか入れない」という感じだったみたいなんですけど、そういった理由でFAKEαから8本のデッドストックを買ってくれました。
藤原さん所有の一番古い「501®」に残る"何かが擦れたような跡"の正体
─ すごいお話です…!ちなみに、藤原さんは「501®」を何本くらいお持ちなんですか?
藤原: どうだろう…。自分サイズのモノは…20〜25本とかですかね。あとは色落ちのサンプルになるようなのも買ってるんで「501®」だけで考えたら、たぶん50本くらいは持ってると思います。
─ やっぱり、一番のお気に入りパンツは「501®」だったりしますか?
藤原: そうですね。あー…でも細かく言うと、自分の体型に本当に合っているのは「505 ™」だと思います。シルエットもキレイだし。とはいえ、やっぱり仕事柄という意味では「501®」は"絶対"ですよね。持ってなきゃいけないし、もちろん大好きなモノですしね。
ちなみに、これが僕が持ってる中で一番古い「501®」です。
─ いつ頃のモノなんですか?
藤原: 1922年のユーズドです。土汚れが取れるまで、3回は洗いましたね(笑)。いまはダメージが入ってるんでリペア出さないといけないんですけど。ちなみに、右側の太ももにしか入ってない、この線。これ、なんの線かわかりますか?
─ なにかが擦れた跡ですかね…?ぜんぜんわからないです…。
藤原: これ、マッチの跡なんです。昔の映画なんかでブーツの裏でマッチを擦るシーンとかあるじゃないですか。それをデニムでやってたってことです。そういう当時のおもしろいディテールが残ってたりするモデルですね。