Levi's®がこれまで世に出してきた歴史的名品の数々を忠実に再現するコレクション「Levi’s® Vintage Clothing(LVC)」が、いまアツい。デニムジャケットの王道である"1st"や、ジーンズに詳しくない人でも一度はその名を耳にしたことがあるであろうマスターピース「501®」など、さまざまなアイテムが復刻されては激しい争奪戦が繰り広げられている。ではなぜLevi's®の品々はファッション好きたちをそこまで虜にし続けるのだろうか?BerBerJinにてディレクターを務める藤原 裕さんに話を聞いた。
Profile
藤原 裕さん
BerBerJin director/BIG YANK creative director
Instagram:@yuttan1977
YouTube:ヴィンテージデニムアドバイザー藤原 裕 CH
時代に合わせた「着やすさの追求」から生まれた、2ndタイプ
─ 前の記事では1stタイプのデニムジャケットについて伺いましたので、今回はその後に出たモデルである2ndおよび3rdについてお話を聞いていきたいです。これらはそれぞれ、いつ頃に登場したアイテムなんですか?
藤原 裕さん(以下、藤原): 1stから2ndに変わったのが1952年、3rdが1961年です。
─ なるほど。では1stと比べて、2ndはどういったところが変わったんでしょうか?
藤原: 1950年代に入って、Levi's®というよりアメリカ全体でファッションが盛り上がりはじめたんですね。デニムジャケットはそれまで「ワークジャケット」というカテゴリの中の、さきほど説明したとおり「ブラウス」という扱い。あとはウエスタンっぽい雰囲気のカウボーイジャケットとして、ジーンズをジャストサイズで穿いてチェックシャツを着てテンガロンハットを被って、そこにGジャンを着るという感じでした。
1stから2ndへの変化として、わかりやすいところでいえば胸のポケットが2つになった。そしてボックスタイプという四角い形にそこまで変わりはないですが、シンチバックがアジャスターになりました。というのもシンチバックの針だったりベルト部分だったりがどこかに引っかかって破けたりするのを考慮してか、背中をキュッと絞るのであればボタンでもいいだろう、と。そういったことで腰の帯の部分にボタンがついた仕様に変更されました。
藤原: そして1stは平に置いたときに袖が"真横"にきて、アームは広いんです。一方で2ndは袖をどう開いても、真横にはいきません。下向きに下がるんです。これは両者の違いの中では、あまり知られていないポイントですね。
─ へぇ!はじめて知りました!それってどういった理由なんですか?
藤原: 1950年代からアメリカ全体がファッションの時代になってきたので、そういった「着やすさ」の意味があるでしょうね。「より形をよく着よう」という感じ。1stのようにアームが広くて袖が真横を向くと、腕を降ろしたときに"溜まり"ができちゃうんですよね。そういったところの形を整えようということで、2ndからは袖が斜め下に下がるようになった。加えて、アームも狭くなったんです。そのおかげでタイト感が生まれるようになりました。だから1stと比べると、腕を降ろした時のシルエットが綺麗に出るようになりましたね。
なので着やすさやシルエットの良さが変わっているという感じですね。よく「1stと2ndは置いた状態だと着丈は変わらないのに、着用すると2ndの方が短く感じる」って言うんですけど、それはアームが狭いから後ろの着丈が短く感じるということなんです。
そして細かいところですが、補強のために「リベットで止める」という仕様が、2ndになるとカンヌキで止めるようになったりしてます。リベットの銅も省略されればコストダウンになりますしね。もう2ndの時代はある程度の大量生産がはじまってるので、そういった意味でもコストダウンが考えられてるんじゃないかと思います。
スリムパンツとのセットアップが考えられた、細みシルエットの3rdタイプ
─ そこから大幅な見た目のチェンジが行われたのが、3rdですよね。
藤原: 1stから2ndにチェンジしたときは完全に新しいモデルに移行してるんですけど、じつは3rdが生まれた1961年以降もまだ2ndって作られてたんですよね。それについては『LEVI'S® VINTAGE DENIM JAKETS TYPEI/TYPEII/ TYPEIII』にも書いています。
藤原: 3rdが生まれた1961年、60年代のアメリカって背景としてはトラッドとかアイビーファッションの時代です。ジーンズの「501®」といえばズドンとしたストレートなんですけど、ちょうどこの60年代に入ったころに、はじめてタイトめに穿く「551ZXX」というスリムストレートのモデルが出始めた。あとは「351N」というスーパースリム。
それらのジャケットとして登場したのが、こちらの3rdなんです。1stと2ndがボックスシルエットだったのに対して、3rdからはキュッとした細いシルエットになっています。そして胸ポケットからV字のステッチが下に伸びるようになりました。これはLEVI'S®が公式に言及しているワケではなく、あくまで僕の解釈なんですが、おそらくデザイナーが入ったんだと思うんですよね。
藤原: そしてじつは生地も変わっていまして、2ndには「XX」というモノが使われていたんですけど、3rdからは「プリシュランク」という防縮加工が施された生地になりました。1961年に「557XX」として登場したんですけど、それと同じ頃に同様のプリシュランクを使った「551ZXX」も発売されました。そういった"上下(ジャケットとパンツ)"が登場したのが、3rd誕生の背景です。
あとはコストダウンを目的としたものか定かではないんですけど、1stと2ndではシルバーだったボタンも3rdからはカッパー(銅)に変わっています。これはジーンズでも同様で。「501®XX」はシルバーのボタンでしたが、「551ZXX」はジッパー仕様でトップボタンはカッパーですね。
─ あとわかりやすい変化でいうと、2ndから3rdでは前のボタンの数が5個から6個に増えていますよね。
藤原: そうですね。胸ポケットのフラップは引き続き付いていますけど、V字のステッチが入るようになってデザインは明らかに変わっています。
─ 3rdの特徴であるV字ステッチって、単純に「デザイン」ってことなんでしょうか?
藤原: そうだと思います。2ndまではプリーツにステッチが入っていましたが、よく考えるとそれも体の動きを妨げないような目的で引っ張られても広がるようにプリーツが入っていたんですけど、ステッチってそれを押さえているので糸がプチプチ切れてしまうんです。そうなると当然、お客様からクレームとかがあったと思うんですよね。
それで明らかに変えたのが、腰に向けて少しタイトなシルエットになってるけど、胸の部分には余裕があるような3rdのデザインなんじゃないかな?
藤原さん流 デニムジャケットの使い分け&着こなし
─ さきほどは「デニムジャケットで人気なのは1stだ」というお話もありましたが、2ndと3rdの古着市場での人気っていかがですか?
藤原: みんなが本当にほしいのは1stなんですけど、金額的に買えないんですよね。「いつかは1stを!」という憧れを持ちつつも「手が届く範囲」ってなってくると、3rd。もしくはこの後に出てくる4th「70505」とかなら、まだ10万円くらいで手に入る範囲ですしね。
─ 藤原さんは2ndや3rdもお持ちですか?
藤原: 僕は全部持ってます。この業界が長いからこそ、研究をしているワケじゃないですけど「やっぱり1stから4thまではすべて持ってないとな」って意識を持ってやってますので。
─ それらの使い分けってどうされてますか?
藤原: もうその辺りは気分で。「薄めがいいな」と思う日は色の薄いダボっとしたヤツを選びますし、「今日はキレイめでいきたいな」ってなったら濃いめのを着るとかね。あとはボロボロのダメージが入ってるのとかも好きなので、そういうのはキレイな白のパンツに革靴、白シャツもしくは無地のTシャツに合わせたりしますね。
藤原さんが「27年間で7枚しか見たことない」と語る、激レアな2ndとは?
─ 2ndについて、もう少し詳しくお聞きしたいです。これの大きなサイズって、サイドの部分にいわゆる"ハギ"が付くのが普通かなと思っていたのですが、1stみたいに"Tバック"になってるモノもあるんでしょうか?
藤原: ヴィンテージの話だと、2ndはサイズ42から50までは横にハギが付きます。ただ、それ以上になるとハギを入れても形が悪くなっちゃうからって理由だと思うんですけど、2ndは52からTバックが採用されていますね。ただ、僕はこれまで1stのTバックはたぶん100着以上は見たことあるんですけど、2ndに関しては27年間で7枚だけです。
─ 藤原さんがお持ちの2ndもTバックなんですか?
藤原: そうです。これが1953年のプライスリストなんですけど、2ndを示す「507」の項目を見るとサイズ34から46を通常とするんですが、ここにあるように「507E」ってのがありまして。Eというのは、おそらく「Extra Size」のことだと思うんですけど、48と50までしか書いてないんです。カタログに50までしか載ってないのに52が存在するということは、たぶん特注品とかですよね。
─ リストに載っていないモノが存在するというのが、興味深いですね。