Levi's®がこれまで世に出してきた歴史的名品の数々を忠実に再現するコレクション「Levi’s® Vintage Clothing(LVC)」が、いまアツい。デニムジャケットの王道である"1st"や、ジーンズに詳しくない人でも一度はその名を耳にしたことがあるであろうマスターピース「501®」など、さまざまなアイテムが復刻されては激しい争奪戦が繰り広げられている。ではなぜLevi's®の品々はファッション好きたちをそこまで虜にし続けるのだろうか?BerBerJinにてディレクターを務める藤原 裕さんに話を聞いた。

Profile

藤原 裕さん

BerBerJin director/BIG YANK creative director

Instagram:@yuttan1977
YouTube:ヴィンテージデニムアドバイザー藤原 裕 CH

当初は「ブラウス扱いだった」という、1stタイプのジャケット

─ 本日はLevi's®のアイテムについて、中でも「Levi’s® Vintage Clothing」にて復刻される歴史的名品についてお話を伺っていければと思います。藤原さんにはいわゆる"1stタイプ"のデニムジャケットを2着ご用意いただきまして、片方が"大戦モデル"でもう片方がそうではないモデルです。そもそも、この1stのジャケットというのはいつごろ誕生したアイテムなんでしょうか?

藤原 裕さん(以下、藤原): こちらの書籍『LEVI'S® VINTAGE DENIM JAKETS TYPEI/TYPEII/ TYPEIII』にも書かせてもらってますが、1890年代に「506XX」というロット番号で登場したのが、こちらのワンポケットのジャケットです。でもじつは、元々はジャケットではなく「ブラウス」という呼び方をしていたんです。

─ え?そうなんですか?

藤原: はい。なのでこういったプリーツが入ってたりするんですよ。1904年のカタログにも「ブラウス」「506XX」と記載されていますが、当時のお値段で8ドル50セントだったみたいですね。だからいまの日本円に置き換えたら、おそらく7〜8,000円とかだったんじゃないかな?

自身の書籍『LEVI'S® VINTAGE DENIM JAKETS TYPEI/TYPEII/ TYPEIII』を指して解説してくれる藤原さん

─ 当時のディテールってどんな感じだったんですか?

藤原: 最初のモデルは胸ポケットにフラップがなく、フロントのボタンが5つでした。でも「ブラウス」扱いされていたこともあってか、ボタンが少し小さいんです。デニムパンツの「501®」を見てもらうとわかると思うんですけど、トップボタンが大きいのに対して、その下のものって少し小さいですよね?その小さい方がジャケットのフロントボタンに使われていたんです。1890年代から1935年まではそういった仕様で、しかも胸ポケットはもっと下(腰寄り)に付いていました。

─ そこから、いまのみんなが知ってる1stタイプになったのが…。

藤原: 胸ポケットにフラップが付き始めたのが、1920年代後半。ただ、まだボタンは小さいままで。ボタンが大きくなって、みなさんがよくご存じの形になるのが1936年からですね。

"大戦モデル"はノーマルの1stとどう違う?

─ その後、いわゆる"大戦モデル"が出てくると思うんですけど、それとノーマルの1stってどう違うんでしょうか?

藤原: 見た目でわかりやすいところだと、フロントのボタンが5つから4つになっています。というのも、戦争が本格化した1942年から「いろいろなパーツを省略しろ」という指令が国から出るんです。1stのジャケットは「506XX」というモデル名なんですけど、大戦モデルは頭に「S」が付いた「S506XX」になるんですね。それは「Simplified=簡略化」といった意味を持つ言葉の頭文字。それが戦争中には付くことになります。

藤原: 4つに減らした直後の時期はまだLevi's®のボタンを使っていたんですけど、より戦争状態が悪化していくと、安い鉄でできた月桂樹ボタンに変わっていきます。あとはボタン以外だとポケットのフラップがなくなっていますね。

─ 1stの特徴である、シンチバックも変わっていたりするんですか?

藤原: 僕がこれまで発見したものでいうと、3パターンあります。戦争のはじめ(1941〜42年頃)はバックルが黒で、さらに針がついてるんです。そこから時が進んで戦争末期になると、百合の紋章が付いたバックルに変化していきます。そしてそれは最終的にザラザラとしたパーツになっていきました。これらが大戦モデルに使用されたバックルのパターンですね。

藤原: 戦時中はおそらくですが、縫い子さんたちの中でも腕の良い方・熟練の方は軍服などを縫うのに駆り出されてしまう。なのでこの頃のアイテムには、入って半年とかの新人さんが縫ったようなヘタクソなモノがあったり(笑)。そういったところが、大戦モデルのおもしろいところだったりします。

─ そういったヘタさが目立つアイテムの方が、いまとなってはレアだったりしますよね(笑)

藤原: そうそう。だからフロントのプリーツ部分に入っているスクエアステッチっていうのも、戦後のモデルを見ると形が整ってるのに対して、大戦モデルを見ると左右でズレてたりするんですよ。そういった雑な感じも、この時期のアイテムでたまに見られるおもしろいディテールだったりします。

現在は「たまたま大戦モデルが人気」な状態になっているだけ

─ 私の印象としては、すべてのデニムジャケットの中でもっとも人気なのが、Levi's®の1stなんじゃないかなって思ってるんです。

藤原: そうですね。間違いないと思います。

─ その理由ってどういうところにあるんでしょうか?

藤原: なんでもそうですけど「一番」がいいですよね(笑)

─ たしかに(笑)。1stでも一番価値が高いのは、やっぱり大戦モデルですか?

藤原: ヴィンテージという括りで見たときに、ワインとか時計もそうですけど古いモノの価値って高い。なぜかというと希少だから。なので1stのデニムジャケットで考えると、1900年代のモノと戦時中のモデルのどっちに価値がある?って言われれば、僕は古い方が価値が高いと思います。

ただ、いまはたまたま「大戦モデルが人気」という状態になっているんです。だから需要という意味ではそっちの方が求められるかもしれないけど、本当にヴィンテージが好きな人たちにとっては、当然、より古いモデルの方に価値があると感じるんじゃないかな?

─ 「大戦モデル」ってフレーズも、キャッチーですもんね。

藤原: そうですね。あとはパッと見で大戦モデルだってわかりやすいんですよね。ボタンは4つだし、フラップもないし。でも便利さで考えたら、フラップがあった方が物は落ちないし、ボタンは5つの方がちゃんと前を閉じられるし、用途としては大戦モデルじゃない方が正しいはず。戦争中、仕方なく省略していたディテールが、逆に「シンプルでかっこいい」みたいなファッション的な解釈にもなるんですよね。

藤原さんがはじめて買った1stは、なんとたったの3万円

─ ご自身も1stは何着かお持ちだと思うんですけど、思い入れとかってありますか?

藤原: 僕は高校生くらいからヴィンテージが好きなんですけど、その時はサッカーやっててアルバイトもできなかったから、とても買えるような金額ではなくて。出身である高知県の古着屋のオーナーさんがめちゃくちゃかっこいいのを着てるのを見てたりしてましたが、当時はまだ色の濃い状態のモノで20〜30万円レベルでした。僕はBerBerJinに21歳で入ったんですけど、その頃から1stはずっと憧れのアイテムでしたね。

藤原: でも95〜98年くらいにかなり盛り上がっていたヴィンテージブームが、2000年に入ったあたりに少し落ち着いて、30万円していたモデルが15万円になったりしたんです。その時期、みんなは38とか40なんかのサイズを求めてたんですけど、僕はそこから切り替えて「大きいサイズでダボっと着たいな」と。当時は誰もそんなファッションしてなかったし。

22〜23歳の頃にバイヤーとして買い付けに行かせてもらうタイミングがあったんですけど、古着歴が相当長くて、僕もいろいろ教えていただいた恰幅のいい常連のお客様から「僕が着られる大きいサイズの1stを探して欲しいんだよね。背中に縦のラインが入ったやつをこれまで一度だけ見たことがあるんだけど、あれはたぶん大きいサイズだけのディテールだと思う」っていうことを、そのとき初めて聞いたんです。

藤原: でもそんなの見たことなかったし「本当にあるのかな?」って思ってて。でも、ロスで「HTC」ってブランドをやってる、僕も仲の良いジップ・スティーブンソンさん。ジップさんってたぶん190cm/120〜130kgくらいの体格だし、その時から"デニムドクター"のニックネームで呼ばれるくらいヴィンテージコレクションもすごかったから、アメリカに買い付けに行かせてもらった時に「私物で1st持ってない?」って聞いたら「サイズ50でデッドストックとユーズド持ってるよ」って言うんですよ。

それを見せてもらったら、背中がセパレートされてたんで「これだ!」と思って。交渉しまくったんですけど売ってはくれなくて。そこからいろんなディーラーさんとかに「大きいサイズの1stないですか?」って言い続けてたら、色の濃いのが一着出てきたんです。そこから自分でも欲しくなって手当たり次第に探した結果、次は色の薄めのが出てきて。値段は5万8,000円。安かったから「これ、欲しいんですけど」って言ったら、「こんなデカいの誰も買わないから、藤原くんだったら半額でいいよ」って言ってくれて。だから僕、はじめて買った1stは3万円なんです(笑)

─ えぇ!1stがその値段で!?

藤原: ずっと憧れて憧れて、普通は15万円とかしてたモノが5万8,000円だったからそれでも「安い!」って思ってたんですけど。まだ22〜23歳の頃ってお金を貯めて服を買うような感じだったし、3万円って言われてもう即金で買わせてもらいましたね。

店で着てたら「なにそれ?」って聞かれたりしたんで、その時は「大きいサイズは背中が分かれてるみたいで」って説明したり「セパレート」みたいに呼んだりしてたんですけど。27〜28歳の頃に先輩のライターさんと「背中がTに見えますよね。"Tバック"とか言っちゃうと、ちょっとエロいですけど(笑)」みたいな話をしてたら、その方が雑誌に書いちゃったんです。そこからですね。通称"Tバック"みたいになったのは。

そのあとはいろいろと売ったり買ったりしながら、最終的にはワンウォッシュが入荷してきたのを買って、いま17年間着てますね。その合間にも、ブランケット付きだったりすごくブリーチされたモノだったりとかも手に入れたりして、それらもこちらの書籍に掲載しています。

藤原: これが17年着てるやつなんですけど、1941〜42年の非常に珍しい戦争直前モデルで。いまだとだいたい1,000万円くらいですかね?長期間着てその値段なので、着ないでおいておいたら3,000万円くらいだったんじゃないかな(笑)

「Levi’s® Vintage Clothing」の1stをスニダンでチェック!

リーバイスビンテージクロージング 1936 タイプI ジャケット "リジッド"の定価/発売日

ブランド リーバイス ビンテージ クロージング(LEVI'S Vintage Clothing)
カテゴリ ジャケット
発売日 2025年2月25日
定価 ¥49,500(税込)

「はじめて買ったLevi's®の1stは3万円だった」 BerBerJin藤原さんに聞く、歴史的名品の魅力 Vol.1の抽選/販売店舗

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