なぜアディダスは世界を魅了するのか?三本線の歴史とストリートを制した名作たちについて
アスリートのパフォーマンスを極限まで引き出し、同時にストリートカルチャーの創造に深く寄与してきた「adidas(アディダス)」。創業者の情熱から生まれた一足のスパイクは、やがてスポーツの歴史を塗り替え、音楽、ファッション、アートシーンを巻き込む世界的なアイコンへと進化を遂げた。
なぜ、アディダスの「スリーストライプス(三本線)」は、競技場からランウェイまで、あらゆる場所で輝きを放ち続けるのか?本記事では、ブランド誕生の歴史から、スポーツ史を変えた革新的なテクノロジー、人気アイテムまでを解説する。
アディダスの原点と勝利への哲学

via: adidas
アディダスの物語は、1924年にドイツの小さな町でアドルフ・ダスラーが、弟のルドルフと共に靴工房「ダスラー兄弟商会」を設立したことから幕を開ける。「アスリートに最高のパフォーマンスを発揮させるための道具を作る」というアディの揺るぎない信念は、彼自身が優れた陸上選手であった経験に裏打ちされたものだった。生涯で700以上もの特許を取得した稀代の発明家でもあった彼は、選手の悩みや要望に耳を傾け、次々と革新的なシューズを開発。1936年のベルリン五輪では、彼が開発したスパイクを履いたアメリカの陸上選手ジェシー・オーエンズが4つの金メダルを獲得し、ダスラー兄弟の名は一躍世界に知れ渡った。
順風満帆に見えた兄弟の関係は、第二次世界大戦を経て決裂。戦後の経営方針を巡る対立が決定打となり、1949年、アディは自らの愛称と姓を組み合わせた「アディダス」を設立する(兄ルドルフはのちに川を挟んだ対岸に「プーマ」を設立)。アディダスを象徴する「スリーストライプス(三本線)」が誕生したのもこの時だ。元々は、アスリートの激しい動きで革製のシューズが横に伸びてしまうのを防ぐための補強パーツだった。機能性を徹底的に追求した結果生まれたこのデザインが、後に世界で最も有名なロゴの一つとなるのである。
スポーツ界を席巻した革新のテクノロジー

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アディダスの歴史は、アスリートを勝利に導くためのテクノロジー革新の歴史そのものだ。スポーツの常識を覆し、数々の伝説を支えてきた発明は、今やブランドのDNAとして息づいている。
- スタッド付きサッカースパイク:1954年のサッカーW杯決勝、後に「ベルンの奇跡」と呼ばれる試合で、アディダス製のスタッド(鋲)交換式スパイクを履いた西ドイツ代表が、ぬかるんだピッチで驚異的なグリップ力を発揮。格上のハンガリー代表を破り、その革新的な性能を世界に証明した。これは、天候に応じて最適なスタッドを選べるという、現代スパイクの礎となる発明だった。
- シェルトゥ:バスケットボール選手のつま先を保護するために開発された、貝殻のようなラバーパーツ。1969年に登場した「スーパースター」に搭載され、選手の怪我のリスクを劇的に低減させただけでなく、その圧倒的な存在感でデザインの核となり、不朽のアイコンとなった。
- プライムニット (Primeknit):2012年に発表された、一本の糸でデジタル的に編み上げる革新的なアッパー製造技術。ソックスのようなフィット感と優れた通気性、そして従来製法に比べて廃棄物を大幅に削減できるというサステナブルな側面も持ち合わせ、現代のアディダスシューズの多くに採用されている。
- ブースト (Boost) フォーム:世界有数の化学会社BASF社と共同開発し、2013年に発表されたミッドソールテクノロジー。発泡熱可塑性ポリウレタン(E-TPU)粒子を発泡させて作られたフォームは、優れた衝撃吸収性と、着地のエネルギーを次の一歩への力に変える驚異的な反発性を両立。「一度履いたらやめられない」と称される革命的な履き心地は、後の「NMD」や「YEEZY」シリーズの成功の礎ともなった。
現代における三本線の躍進

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アディダスは、その巨大なブランド力を二つの柱で展開している。最新技術を追求するアスリート向けの「スポーツパフォーマンス」ラインと、ブランドの豊かな歴史を背景に持つストリートウェアの「アディダス オリジナルス」。特にオリジナルスが掲げるトレフォイル(三つ葉)ロゴは、1972年に登場し、古代オリンピックの勝者に授けられた月桂樹の冠をモチーフとした、ブランドの伝統と栄光の象徴だ。
その躍進はスポーツやストリートの領域に留まらない。デザイナーのYohji Yamamoto(ヨウジヤマモト)との協業ライン「Y-3」や、Stella McCartney(ステラ・マッカートニー)との長年にわたるパートナーシップは、スポーツウェアにモードの概念を持ち込み、新たな市場を開拓した。近年ではGucci(グッチ)、Balenciaga(バレンシアガ)といったラグジュアリーブランドや、Wales Bonner(ウェールズ・ボナー)などの新鋭ブランドとの大胆なコラボレーションを敢行。スポーツウェアの概念を拡張し、ハイファッションの世界でもその存在感を確固たるものにしている。
さらに、未来への投資としてサステナビリティへの取り組みも加速させている。海洋プラスチック廃棄物をアップサイクルして高性能な糸や製品を生み出す「Parley for the Oceans」とのパートナーシップは、その象徴だ。リサイクル素材の積極利用や、製品のライフサイクル全体で環境負荷を低減する試みを続け、持続可能な未来への責任を果たそうとしている。
ストリートのユニフォームとなった不朽のアパレル
スニーカーだけでなく、アディダスのアパレルもまた、スポーツの境界を越えてカルチャーの象徴となった。ここでは、スニダンでも高い人気を誇る、ブランドを代表するアパレルアイテムを紹介する。より幅広いラインナップは、スニダンで「アディダス」のアイテムをチェックしてほしい。
すべてのジャージの原点「ベッケンバウアー トラックスーツ」

1967年、サッカー界の“皇帝”フランツ・ベッケンバウアーの名を冠して登場した、世界初のトラックスーツ(ジャージ)。それまで競技中にしか着られなかったスポーツウェアを、日常的に着用するファッションアイテムへと昇華させた革命的な一着だ。体にフィットする洗練されたシルエットと、肩から袖にかけて走るスリーストライプスは、その後のあらゆるジャージの原型となり、スポーツファッションの歴史を創り上げた。
ブランドの顔をまとう喜び「トレフォイルロゴ Tシャツ/パーカー」

ブランドの豊かな歴史と伝統を象徴する「トレフォイルロゴ」。このロゴを胸元や背中にシンプルに配したTシャツやパーカーは、まさにブランドの顔と言える存在だ。時代やトレンドに左右されない普遍的なデザインは、究極のスタンダードとして世界中の人々に愛されている。これ一着でコーディネートの核となり、アディダスの世界観を最も手軽に、そしてストレートに表現できるアイテムだ。
90'sカルチャーの復活「アディブレイク トラックパンツ」

90年代のバスケットボールのウォームアップパンツから着想を得た、両サイドのスナップボタンが強烈な個性を放つトラックパンツ。本来はシューズを履いたままでも着脱しやすいという機能的なデザインだったが、ボタンの開け閉めでシルエットを自在に操れることから、ファッションアイテムとして独自の進化を遂げた。近年のY2Kファッションリバイバルの波に乗り、ストリートの主役として完全復活を果たした。
スポーツとモードの完璧な融合「Y-3(ワイスリー)」

日本の巨匠デザイナー、山本耀司(Yohji Yamamoto)とアディダスがタッグを組む「Y-3」。アディダスが持つ最先端のスポーツ技術と、ヨウジヤマモトの独創的なカッティングや黒を基調とした美学が完璧に融合し、「ラグジュアリースポーツウェア」という新たなジャンルを確立した。既存のスポーツウェアとは一線を画す、モードで洗練されたアパレル群は、ファッション感度の高い層から絶大な支持を得ている。
ファッション界を揺るがす衝撃のタッグ「ラグジュアリーブランド コラボ」

近年、アディダスがファッション界に投じた最大の衝撃が、グッチやバレンシアガといったトップメゾンとのコラボレーションだ。互いのブランドを象徴するロゴやデザインコードが大胆に融合したアパレルアイテムは、発売と同時に世界中で争奪戦が繰り広げられる社会現象となった。これは、アディダスが単なるスポーツブランドではなく、現代のカルチャーそのものを動かす最高峰のクリエイティブ集団であることを証明している。
まとめ
創業者アディ・ダスラーの「アスリートを勝たせる」という純粋な情熱。その一点から始まったアディダスの物語は、スポーツの歴史を動かし、やがてストリートカルチャーを豊かに育む、巨大な潮流となった。パフォーマンスとスタイル、伝統と革新。その両輪を力強く回し続けるアディダスは、アスリート、クリエイター、そして世界中のファンと共に進化し続けるプラットフォームのような存在だ。これからも時代の最前線を走り続けるだろう。あなたの足元にも、勝利と創造の歴史が宿る一足を加えてみてはいかがだろうか。
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