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秋の短編スニーカー小説 フィクション編

《世界の全て》

私は世界を放
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秋の短編スニーカー小説 フィクション編

《世界の全て》

私は世界を放浪している名もなき旅人。

今回は、全人口10万人程度の小さな国に訪れ、その中でもあまり人が集まらない町に滞在することになった。

ある日、この町で珍しい品物が販売されるという知らせが来る。
聞けばこの珍しい品物、よくはわかっていないがとにかく珍しく、よその町でもすぐに完売してしまうという噂で、この国の人々はこぞって買いに行くのだと言う。

そんなにすごい物なのかと、発売日当日に様子を見に行くと、確かにこの町ではあり得ないような人たがりが出来ていた。

結局、前情報の通り品物はすぐに売り切れた。

しかし、ある者は言った。

「私の村は人口100人程度だが、そのうち5人ほどが買えた。前回は1人も買えなかった。どうやら今回は数が多いようだ」

別の者が言った。

「私には運がないから、私が買えるなんて相当数が多かったのだろう」

さらに別の者が言った。

「私は買えなかったが、私の周りでは買えている人がたくさんいたので、多分数は多かった」

誰しもが、今回販売された数は多かったと口々に言っていた。

私はこのことに対して甚だ疑問であったので、翌日もっと人のいる主要都市に訪れ、例の品物について聞いてみることにした。

すると、ある者は言った。

「数が多い?結局人気だから今回も買えなかったよ」

別の者が言った。

「買えた人が目立つだけで、ほとんどは買えてないんじゃない?見ろよ、みんな持ってないだろ?」

さらに別の者が言った。

「結局のところ、品物の数は何個くらいだったの?」



そして数年後。
再びこの地に足を踏み入れた私は、あの珍しい品物について思い出していた。
その後どうなったのかが気になったので、町の人に尋ねてみる。

すると、驚くことに大半がこぞって欲しいと言っていた品物を欲しがる人は、ほとんどいなくなっているという。

町の人曰く、珍しいというだけで特に価値を見出せてなかった人々は、徐々に興味を失ったようだった。

それでもまだ全員が買えるわけではなく、買えない人もいるくらいの人気はあるとのこと。

ある者は言った。

「今までずっと買えなかったのに、今回ようやく買えたよ。数が多かったんだね」

別の者は言った。

「ここのところ毎回買えてるよ。きっと数を増やしたんだ」

さらに別の者は言った。

「数が多いって聞いたのに、また買えなかった。客を選んでるんじゃないのか?」

それぞれの感想を抱きながら、今日も町は盛んであった。

次の目的地へ向かう途中、偶然にもあの珍しい品物を販売している商人に出会った。

「何だい、兄さん。あなたの欲しがっている物は品切れだよ」

「いえ、商人。私はその品物にはてんで興味はありません。ただふと疑問なんですがね。この人気の品物、時々によって販売する数は変わるのですか?」

最初は戸惑っていた商人だったが、私がこの国の人間でないことを知るとニヤリとしながら答えてくれた。

「多少の変動はあれど、販売数は最初から今日に至るまでほとんど変えてないよ。まあ実際の販売数よりわざと少ない数を公表して希少性を高めたり、逆に多い数を公表して買いやすさをアピールしたりはしたけど、本当のことをわかる奴など俺以外にいやしない」

「あとは何回も買いに来る変な奴もいたが、我々商人は売れれば何でもいいのさ。隣の国なんか、疑い深くて全く売れないんだぜ」

金貨を1枚渡され、世界は広いよな、と笑顔で商人は去っていった。


〜終〜

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2024/09/28

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