なぜ今、裏原なのか?研究家・AKIRAが語る90年代の熱狂とアーカイブの価値について
日本のストリートファッション史に燦然と輝く「裏原カルチャー」。その熱狂を未来へ繋ぐべく活動するコミュニティ「URAHARA CULTURE CLUB(UCC)」の第4弾イベントがスニダンフラッグシップストアにて2025年8月9日(土)から11日(月・祝)まで開催される。
主宰するのは、YouTubeやSNSを通じてその魅力を発信する"裏原カルチャー研究家"のAKIRA氏と、CONCEPT SHOP WTSのディレクターである湯原氏だ。なぜ彼らは、UCCを主宰し、裏原の価値を伝えようとするのか。AKIRA氏の情熱の原体験から、二人の出会い、UCCに込めた想い、長年の夢だったという裏原のアーカイブブック『LAST BOOK』の出版についてまでを語ってもらった。
👕UCC vol.4のイベント詳細はこちらプロフィール

AKIRA / 90s裏原カルチャー研究家
Instagram:@akirasgoodchild、@NBR LTD.、@90s STREET SNAP !!
90s裏原カルチャー研究家、NEUTRAL Buzz Reaction Director、世界的に見ても唯一の裏原系YouTuber!2025年7月現在、登録者数12,700人・累計視聴回数265万回、裏原カルチャーの伝道師、NBRディレクターとして、発信活動とクリエイションに人生を捧げている。
プロフィール

湯原正太 / Concept Shop WTS ストアマネージャー
Instagram:@conceptshop_wts
1987年生まれ、茨城県出身。約2年半前にファッション&カルチャーマガジン「WTS」を母体にしたショップ「CONCEPT SHOP WTS」をオープンし、ストアマネージャーを務める。
「答え合わせ」が全ての始まりだった。一人の熱狂がコミュニティを生むまで

ー本日はよろしくお願いします。まず、AKIRAさんが裏原宿カルチャーの発信を始められた経緯からお伺いできますか?
AKIRA:もともと文化服装学院でパターンを学び、アパレルのOEMメーカーを経営してきた根っからの服オタクなんです。44歳だったコロナ禍、ふと「このままでは何も新しいことを始めずに終わってしまう」という危機感を覚えて。アナログな世界にいた僕が、対極にあるSNSに挑戦しようと。最初はInstagramのフォロワーがたった9人でした(笑)。
ーそこからYouTubeで裏原宿をテーマにされたのは、何かきっかけがあったんですか?
AKIRA:昔から集めていた雑誌の切り抜きファイルを紹介する動画の反響が、ひときわ大きかったんです。「裏原には、まだこんなに需要があるんだ」と。僕自身の原体験が全てですね。中学・高校時代、NBAブームに始まり、古着、音楽と、当時のストリートカルチャーの洗礼を全身で浴びていました。

AKIRA氏が所有する90'sの雑誌たち。当日は多くの雑誌や切り抜き(スクラップブック)を持ってきてくれた。
ー湯原さんはAKIRAさんのそういった発信をどう見ていましたか?
湯原:僕自身、アーカイブショップを運営している手前、裏原の歴史やアイテムなどを勉強していました。ただ、僕の世代は裏原リアルタイムではなかった為、深く知りたいとYouTubeで検索していたら、AKIRAさんの動画に出会って。「この人一体何者なんだろう」と(笑)。すごい熱量とテンションと圧倒的な情報量。しかも屋外で当時のお店があった場所を巡るロケ動画まであって、見入ってしまいました。
AKIRA:嬉しいですね(笑)。でも当時は、自分の「好き」が正しいのか分からなかった。中3の頃、アメ村でコンバースの「83カモ」を見て「むちゃくちゃかっこいい」と思っても、周りに理解者がいない。高校生になり、藤井フミヤさんのファッションにのめり込んで、JONIOさんやNIGOさん、藤原ヒロシさんの存在を知っても、情報がなさすぎて。「俺って変わってるのかな」と、少し寂しかったんです。

ーそのときの孤独が、今の熱量に繋がっているんですね。
AKIRA:決定的な瞬間が、高3の時でした。1994年に亡くなったNIRVANAのカート・コバーンを追悼したくて、メタル雑誌『BURRN!』の通販で追悼Tシャツを買ったんです。もちろん、カートのようにロンTと重ね着して。その頃、愛読していた雑誌『asayan』の連載「Last Orgy Ⅲ」の1995年4月号を開いたら、憧れのJONIOさんとNIGOさんが、僕が買ったのと全く同じTシャツを見開きで着ていた。
湯原:それは運命的ですね...!
AKIRA:まさに「俺は間違ってなかったんだ」と。世界が広がった瞬間でした。誰にも分かってもらえなかった自分の「好き」を、一番かっこいいと思う人たちが肯定してくれた。この「答え合わせ」の瞬間から、僕の人生は完全に裏原に染まっていったんです。

AKIRA氏が所有する、m&mのMasa氏のために作られたという「Last Orgy 2」のスタジャン。当時のポジティブな心意気が詰まった、まさに"神の領域"の一点物だ。
二人の出会いが生んだ裏原コミュニティ"UCC"

―その熱狂的な個人活動が、湯原さんとの出会いでU.C.C.というコミュニティになっていくのですね。
湯原:そうですね。AKIRAさんの動画に衝撃を受けて、まずは話を聞いてみたいとInstagramでDMを送ったのが始まりです。すぐに返信をいただいて、話しているうちに「どうせなら一緒にイベントやりましょうか」と一気に意気投合しました。
AKIRA:UCCは、僕らが雑誌で感じた興奮を追体験できる場所にしたい、という想いでスタートしました。でも当時は、欲しいものが簡単には買えなかった。初めて原宿のNOWHEREに行ったクリスマスの日、先にNEIGHBORHOODでフリースを買ったら、最後に行ったNOWHEREで一番欲しかったAPEの緑のスウェットを買うお金が足りなくなってしまって…。

湯原:みなさんのそういう経験はよく耳にしますね(笑)。「お金が足りなくて買えなかった」「店に行ったけど何もなかった」というのは、当時の“あるある”だったと聞きます。
AKIRA:そうなんです。だからUCCに来てくれる同世代のお客さんは「これ欲しかったんだよ」「当時お金がなくて買えなかった」って本当に目を輝かせてくれる。その気持ちが痛いほどわかるんです。
湯原:今では数百点のアーカイブ品が並ぶ販売会も兼ねるようになりました。僕たちの持ち込みアイテムもあれば、AKIRAさんの呼びかけで集まったコレクターの方々の貴重なアイテムもあります。今回のVol.4は、合計300点くらいは用意できているんじゃないでしょうか。過去最大級のラインナップだと思います。


UNDERCOVERやA BATHING APEなど、AKIRA氏の所有する貴重な90's裏原のアイテムたち。
90's裏原カルチャーの集大成『LAST BOOK』

日本トップクラスの裏原コレクター総勢30名の私物を集めて作成された「裏原大図鑑」ともいえる写真集『LAST BOOK』。それぞれ違った先行予約特典が付いた3タイプが8月31日まで予約受付中だ。
―AKIRAさんは今の活動の集大成として、アーカイブ本『LAST BOOK』を出版されますね。
AKIRA: はい。僕の活動は「90's裏原カルチャー研究家」なので、発信の説得力のためにも、アーカイブ品の実物を集めて研究を重ねてきました。僕はコレクターと違って「所有欲」がないんです。パタンナーなので、一度プロダクトとして縫製や仕様をインプットすれば満足してしまう。だからこそ、この本を作れたんだと思います。
湯原:その研究の成果が詰まったのが『LAST BOOK』ですね。
AKIRA:タイトルは、僕が最も影響を受けた雑誌連載「Last Orgy」と、UNDERCOVERの伝説的なコレクションへのリスペクトを込めて『LAST BOOK』と名付けました。

1990〜1999年の10年間にフォーカスし、28を超える裏原ブランドの名作から珍品まで1,500のアイテムが掲載されている。
―この本は、U.C.C.の活動にとっても重要な意味を持ちそうですね。
湯原:まさに。この本は「図鑑」なんです。1990年から99年までのアイテム約1500点が、正確な「年代」や「掲載雑誌」の情報と共に網羅されている。これは、僕のようにリアルタイムを知らない世代にとって、最高の教科書になります。お客様に商品の背景を説明する上でも、これ以上ない資料です。
AKIRA:メインターゲットは、まさに湯原さんのような若い世代。この本が、彼らにとっての「新しい発見のきっかけ」になってほしいんです。裏原は、今のストリートファッションの“当たり前”を数多く発明した、日本が世界に誇るカルチャー。僕らが当時、頭ではなくハートで感じた熱狂を、この『LAST BOOK』が次の世代のクリエイターたちのブースター(追い風)になれば、それ以上に嬉しいことはありませんね。

―最後に、イベントに来場される方や記事の読者へメッセージをお願いします。
湯原:UCC Vol.4では、300点以上の貴重なアーカイブ販売はもちろんですが、展示も見どころです。もしかしたら、コレクターの方が所有する、通常では絶対に見られないGOODENOUGHのスタッフMA-1なんかも展示できるかもしれません。ぜひ、その熱気を直接感じに来てほしいです。
AKIRA:僕の宝物である「Last Orgy 2」のスタジャンも展示しますし、『LAST BOOK』の現物見本も用意します。僕がそうだったように、誰かの一つの「好き」が、世界を広げるきっかけになるかもしれません。このイベントと本が、あなたにとっての「答え合わせ」になることを願っています。
【イベント情報】URAHARA CULTURE CLUB "UCC" vol.4

裏原カルチャーイベント「"UCC" Vol.4」を、SNKRDUNK FLAGSHIP STOREにて8月9日〜11日までの3日間に開催する。裏原カルチャー伝道師であり、裏原系YouTuberとしても絶大な支持を得るAKIRA氏をキュレーターに迎え、WTSとの共同主催による展示・販売イベントを行う。これまでも大好評を博してきた、数々の裏原のマスターピースが一堂に会する貴重な機会だ。

また、今回はリアルイベントだけでなく、スニダンアプリ限定でAKIRA氏とWTSセレクトの裏原アーカイブスの名作アイテムを抽選販売。先日予約受付がスタートし話題を集める「LAST BOOK 90s URAHARA ARCHIVES」の先行予約販売も実施するので、ぜひチェックしてほしい。
▶詳しいイベント・抽選情報はこちらをチェック!SNKRDUNK FLAGSHIP STORE
場所:SNKRDUNK FLAGSHIP STORE B1F
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4-32-13 JPR神宮前432ビル1F・B1F
会期:2025年8月9日(土)〜11日(月・祝)
営業時間:11:00〜21:00