スニダン原宿店長・タフケンが選ぶ2024年のベストスニーカー5選 について
スニダンのストアスタッフの中でも、並々ならぬエアジョーダンシリーズへの知識と愛情を持つスニダン原宿店の店長タフケン。そんな彼は2024年にリリースされたスニーカーの中から、どんなモデルをベストに挙げるのだろうか? 2025年がスタートしてまだ間もない今、彼が選んだベスト5を振り返ってみよう。
ウイングロゴ誕生前夜のディテールが胸熱。過去作を持っていても欲しくなるAJ1
ー今回は2024年にリリースされた中から、タフさんがベストだと思う5足を伺っていきます。早速ですが、一足目はどんなモデルになりますか?
まず挙げたいのは、11月にリリースされたツマ黒のAJ1のリイマジンドですね。ご存知のとおり、僕は「ナイキ」の中でもジョーダンシリーズが特に大好きなんですが、外せないのはやはり当時のオリジナルカラー。AJ1で言えば、ブレッドやシカゴが有名かと思いますが、このツマ黒と呼ばれるカラーも見逃せません。僕自身、2016年モデルはすでに持っていたのですが、手に入れないわけにはいきませんでした。
2016年にリリースされたツマ黒(左)と、2024年にリリースされたツマ黒(右)では微妙に仕様が異なるという
ー同カラーのツマ黒を持っていても欲しくなる一足だったんですね。
そうなんです。これが8年ぶりに復刻をしますと。その情報が出た時点で、僕はもうテンションが上がっていました(笑)。リイマジンド仕様なので毎回ディテールが変わる中、今回はどういう仕様になるのかとワクワクしていたらプロトタイプ仕様でしたね。いわゆるプロモーションサンプル。当時のナイキのプロモーションで使用されていたデザインというのが、最も胸熱なポイントです。
ープロトタイプならではのディテールはどういう点になるのでしょうか?
一番分かりやすい違いとしては、通常のAJ1だとウイングロゴを型押ししている部分が今回はテキストなんです。これは市販化される前のサンプル品のディテールですね。ジョーダンのウイングロゴが開発されて商品化される前は実はこのデザインだったと。また、当時市販されたものはシュータンが白なんですけど、今回はシュータンがブラックに変更されているのもポイントです。
ーウイングロゴに比べると見慣れないディテールですが、このテキストの仕様にもAJ1ならではの背景があるんですね。
過去にもこのテキスト仕様で復刻されたモデルは存在するのですが、ウイングロゴじゃないという時点でそこまでの人気はなかったようです。でも僕にとっては、ナイキ関係者、あるいはジョーダン本人しか持っていないプロモーションサンプルが再び世に出たという事実にグッとくるんです。そんなモデルが手に取れるのはジョーダンファンにとっては最高じゃないですか。野球で言えば、大谷翔平選手が使っているプロ仕様のグローブやバットが手にできるみたいなイメージですかね(笑)。
画像では判別しにくいが、内側の履き口付近に同色でプリントされているのは"My Very Best, Michael Jordan"のフレーズ。ジョーダン本人が友人などに贈る際に書いていたサインを再現したディテールだ
ーウイングロゴでリリースしてほしかったという声もありましたが、その捉え方をすれば今回のモデルも魅力的に見えてきます。
発売日、僕は仕事があったので昼の休憩時間を利用して並びに行きましたが、1時間をオーバーしそうだったので泣く泣く諦めたんです。そうしたら、午後に来店したお客さんから「タフさん、まだ在庫あるみたいだよ」と教えてもらって、夕方過ぎぐらいに無事買えました。プロモーションサンプルという背景にも惹かれるし、店のお客さんに教えてもらえたおかげで買えたという部分も手伝って、 個人的には2024年のナンバーワンの一足ですね。
Nike Air Jordan 1 Retro High OG "Black Toe Reimagined"の詳細をチェックする
"アママニエール"コラボは大人っぽいコーデと相性抜群。OGカラー好きも惚れるAJ3
ー続いて、2足目に挙げるのはどんなモデルになりますか?
そうですね。先ほど「オリジナルカラーが好き」と言っておきながら少し矛盾してしまうのですが、僕は「アママニエール」コラボにも目がないので、8月にリリースされたAJ3を挙げたいです。アママに関しては、AJ2と12を持っているのですが、このAJ3が1番のお気に入りですね。発売日に朝一で並んで買ってから出勤しました。
ーオリジナルカラーの配色を愛するタフさんが魅力的に感じるポイントはどの辺にあるのでしょう?
ポイントはもう語りきれないんですけど、まずこんな配色はオリジナルカラーには絶対ないじゃないですか。薄いパープルのようなバーガンディーの色使いが絶妙ですね。あとは定番のエレファント柄ではなくて、ちょっと毛足の長いスウェードのような素材に変更されているのも大人っぽいし、ミッドソールのカラーもヴィンテージ感があってかっこいい。
ー個人的に「オリジナルのAJシリーズが好きな人はアママのようなコラボものをどう捉えているんだろう?」という興味がずっとありました。
そこはやはり、ファッションやスタイリングの使い分けなのかなと思います。 僕自身、普段いろんなコーディネートをするのですが、AJのオリジナルカラーに合わせようとすると、どうしても服装の色味もパキッとして派手になりがちなんです。たまには、もうちょっと大人っぽいスタイリングをしたいなと思うときもあるじゃないですか。
ーああ、なるほど。タフさん的にちょっと大人っぽさを表現したいときに履きたくなるモデルなんですね。
そうですね。ちゃんとしたレストランにも行けそうな格好というか(笑)。とはいえ、急に革靴に手が伸びるタイプではないので、こういう素材や配色のジョーダンにも目が行くようになりました。今日のように、ちょっと落ち着いた色味の服装と合わせてもかっこいいですよね。実は気に入り過ぎて、今日も履いているくらいです(笑)。僕のようなOGモデル好きの方にもぜひ試してほしいですね。
ブラックレザーの質感を強調するために、タフさんは栄養を補給するためのクリームを塗ってカスタムしているそうだ
A Ma Maniere × Nike Women's Air Jordan 3 Retro OG SP "Black and Flat Pewter/WYWS"の詳細をチェックする"リイマジンド"との出合いは一期一会? 履き心地にも魅了されたレザー仕様のAJ4
ーありがとうございます。続いて、タフさん的なベストスニーカーの3足目も教えてください。
1位に挙げたAJ1と同じく、リイマジンドの仕様でリリースされたAJ4ですね。AJ4というモデルは日本国内だとAJ1に次ぐ人気モデルだと思うんですけど、オリジナルカラーはあまりリリースされません。ナイキは5年や10年などの周年のタイミングでOGカラーを出してくる傾向がある中、前回の2019年から5年が経つ2024年にリリースされるんじゃないかなと前々から思っていました。
ー今回のリイマジンドのAJ4は、どんなディテールが特徴なのでしょうか?
前回の2019年モデルがヌバック素材なのに対して、今回はフルレザーに切り替えられています。AJ4はいろいろなカラーがありますけど、大体ヌバックが多いんです。白ベースのカラーだとレザーが採用されるときもありますが、黒ベースの配色で表革のレザーを使うパターンはあまりなかったはず。個人的な予想としては、2023年にリリースされたAJ3の"ホワイトセメント リイマジンド"のようにエイジング加工をしてくるのかなと思っていたのですが、「わ、レザーを変えてくるんだ!?」みたいな。その意外性も面白いなと思いましたね。
ー素材を変えるというナイキ側のアレンジに対して、タフさんをはじめとするジョーダン好きたちの反応はどうだったのでしょうか?
そこは賛否両論あるようですね。先ほどのツマ黒もそうですが、オリジナルの素材や色味をアレンジすることに対する否定的な声は確かにあります。その気持ちは分かるのですが、僕はそれよりも「この仕様の一足を手に取れるのは最初で最後かも」と思うんです。例えば、もし5年後にAJ4がまた出るとなれば、おそらく素材はヌバックに戻る可能性が高い。つまり、今回のアレンジはこれで最後ということになります。リイマジンドというシリーズの魅力はそこに尽きるんじゃないかなと思います。
ータフさんは前回のヌバックと今回のレザーのAJ4をいずれもお持ちとのことですが、実際に比べてみていかがですか?
実は僕自身、足を通してみるまでは「2019年のヌバックのほうが良かったんじゃないか…」と思っていました(笑)。でも現物を見たときに、ヌバックの素材には出せない重厚感や高級感があるのに惹かれました。履き心地に関しても、今回のレザーのほうが若干アッパーが柔らかい感じがして、足の指を動かしたときの感触がすごく気持ちいいんです。AJ4はヒップホップ界隈の人たちからの支持が厚いという背景もあり、後から値段が少しずつ上がっていく傾向があるので、気になる方はぜひ今のうちに手に入れておいてほしいですね。
Nike Air Jordan 4 Retro "Bred Reimagined"の詳細をチェックする
ジョーダンのレガシーを継承する"トロフィールーム"。OGカラーをベースにした正統派コラボ
ーここまではタフさんらしく、AJシリーズが続いていますね。では4足目もお願いします。
次は「トロフィールーム」とコラボしたAJ1のローカットを選びたいと思います。トロフィールームといえば、シカゴカラーのハイカットが有名かと思うんですけど、もはやなかなか手が出ない金額になっているじゃないですか。どうしても日本で発売する足数が少ないという要因もあり、3月リリース時の初動は10万円を超えたりもしていたんですが、今はかなり落ち着いてきたので「皆さん、そろそろ狙ってみてもいいのでは?」と思っています。
ートロフィールームのAJ1ローのポイントについても教えてください。
やはりトロフィールームといえば、あくまでオリジナルのカラーをベースにしてくる点が他のコラボとは少し違うポイントだと思います。「オフホワイト」はやや例外になりますが、アママもトラヴィスもコラボする際はオリジナル以外のカラーで仕上げてくるのが普通じゃないですか。トロフィールームはその逆なんですよね。そこはやはり、マイケル・ジョーダンの息子さんが手がけるショップ発という背景が大きくあるのかなと。
ージョーダン氏との関係性が深いトロフィールームだからこそ、説得力のあるオリジナルカラーのアレンジができると。
そうですね。例えば、横に用意したAJ7のハイカットはヒールの五輪カラーのストライプと金メダルを思わせるゴールドパーツが特徴なんですけど、全体の配色自体は1992年のバルセロナ五輪でジョーダンが履いた一足をアレンジしています。きちんとそういう歴史を踏まえているので、ジョーダン好きな人が見た時に「あ、あのモデルのあの色が元ネタだ」と感じられるところがトロフィールームの魅力なんですよね。
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Trophy Room × Nike Air Jordan 1 Low OG "Sail and Varsity Red"の詳細をチェックする"神話"レベルの一足が現実に? ヒップホップ好きにはたまらない幻のダンク
ー最後はAJシリーズ以外の一足を選んでいただいたようです。このモデルを選んだ理由を聞かせてください。
今回の企画を聞いた時は全部エアジョーダンにしようと思っていたんですけど、これは入れざるを得なかったですね(笑)。ウータンクランとコラボしたダンクを選びました。これはもう、個人的には復刻されるなんてあり得ないと思っていた一足です。そもそも、スニーカー好きからしたら、死ぬまでに1回現物を拝めたらラッキーぐらいのモデルですね。
ーオリジナルがレアなのは知っているつもりでしたが、それほど希少なモデルだったんですね。
世界36足限定と言われていますからね。販売されたというより、おそらく関係者に配られたのみだと思います。アーティストものでいえば、エミネムのAJだったり、カニエのエアイージーなどもめちゃくちゃレアですけど、現物をディスプレイしているお店はあるので、探せば見ることはできるんです。でもウータンのダンクはそれすら聞いたことがないので、もう神話レベルなんですよ。もはや本当に存在したのかどうかも分からないモデルでした(笑)。
アイコニックなロゴの存在感はもちろん、上質なレザーの質感も印象的な一足だ
ーそんな神話レベルの一足に足を通せるのであれば、ウータンクランのファンにはたまりませんね。
そうですよね。ただ個人的にはコアなウータンファン以外が履くのも全然ありだと思っています。よくある論争として、めっちゃ詳しい人が「当然、ウータンの曲知ってるよね?」みたいなのあるじゃないですか。でも今回のダンクに関しては、神話レベルだった一足が復刻したという事実さえ知って履いてくれるなら、ひとまずそれでいいと思うんです。もう少し興味が湧くようなら、この靴をおろした日だけはウータンの曲を聞きながら過ごしてくれれば最高ですけどね。
ーウータンを知らない方にとっては、聴く音楽の幅が広がるきっかけになるかもしれませんね。90sのヒップホップが好きなタフさんにとっても特別なダンクなんじゃないですか?
そうですね。ただ実は僕、ダンク1足も持ってないんですよ…。昔は10足ぐらい集めた時期もあったんですけど、やはりジョーダンのみを追求したいというこだわりを優先して、すべて手放してしまったんです。まあ、95のイエローグラデを買えたときにエアマックスは解禁しているので、そんなこだわりはすでに捨てているとも言えるんですけど。もしダンクも解禁するとしたら、最初に買うのはこのウータンコラボになりそうです(笑)。
おわりに
結果としては、生粋のジョーダンフリークらしいタフケンらしいラインナップとなった2024年のベスト5。OGカラーだけでなく、リイマジンドに代表されるAJのアレンジモデルのリリースも積極的に楽しんでいる姿勢が印象的だった。AJ1の40周年でもある今年は昨年以上にナイキの動向が注目される中、上記の5足にも改めて目を向けてみてはいかがだろうか。