今こそ着たいトラックジャケット。Reebokの隠れた名品"ベクタートラックジャケット"の魅力とは?|コラム

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今こそ着たいトラックジャケット。リーボックの隠れた名品"ベクタートラックジャケット"の魅力とは?|コラムについて

今、トラックジャケットが人気だ。春や秋には首元までジップを閉めたうえでワイドなデニムやカーゴパンツを合わせた着こなしを、冬ならインナーとして使っているサマをよく見かける。ただ単にスポーティーなだけではなく、どこかレトロな雰囲気を演出できるのもトラックジャケットの魅力だろう。とはいえ、新品や古着問わずその選択肢は幅広いため「どんな一着を選ぶべきか?」と迷っている人も多いはずだ。

そんなトラックジャケットをブランドのキーアイテムに据えているのが、イギリス発の「Reebok(リーボック)」。中でも今回、編集部が注目したのは1993年の登場以来そのデザインや仕様をほぼ変えていないという同ブランド定番の"ベクタートラックジャケット"だ。その魅力を探るべく、リーボック本社を訪れて話を聞いた。

TEXT:杉山遼人

今回インタビューした人

      
RBKJ株式会社/商品 責任者

高嶋佑輔さん

目次


元々はウォームアップウェアだったトラックジャケット。各スポーツごとに異なる個性

「首元を覆うスタンドカラーにジップアップのフロント」。漠然としたトラックジャケットの仕様は何となく思い浮かぶが、その由来を聞かれると心許なくなるのは筆者だけではないだろう。

「ひと口に言えば、トラックジャケットは実際の競技ウェアの上に着るアウターです。いわゆるウォームアップのためのウェアですね。そのため、脱ぎ着のしやすさが特に重視されているアイテム。ブランドに関係なく、その定義がトラックジャケットの前提としてあるはずです」

そう答えてくれたのは、リーボックの商品企画を担当する高嶋さん。ご自身も5着のトラックジャケットをオンオフ問わずに着回すことが多いそうだ。

「トラックジャケットは自分のワードローブには欠かせないアイテム」と話す高嶋さん。5着ともすべてリーボックのものなのだとか

「では『なぜ各スポーツブランドがリリースするトラックジャケットのデザインは少しずつ違うのか?』というと、それぞれのブランドにとって主戦場とするスポーツの領域が違うからだと思います。他ブランドの例であればフットボールやバスケットボールというスポーツが、まず背景にあったりするのだと思います。リーボックの場合は陸上競技であったり、各国のオリンピックの入場用ウェアとしてトラックジャケットを供給していた経緯が出発点としてあります」

さらに各ブランドのトラックジャケットの個性の違いは、用いる素材によっても垣間見えると高嶋さんは続ける。

「ひと口に『トラックジャケット』と言っても、そこに用いられる素材は意外とバリエーションに富んでいます。アディダスさんの場合はジャージのイメージが強いですよね。伸縮性のあるニット地のような素材。そしてナイキさんであれば、リップストップのナイロン地のような軽い素材感のイメージでしょうか。一方で僕らは表面がちょっとシワっぽくて、あまり光沢感のないマットな風合いの"ウィックルドウーブン"という生地をずっと使っています」

大ぶりのベクターロゴをあしらったカラーブロックが特徴的な「ベクタートラックジャケット」。「素材の細かい部分はリサイクルポリエステルを採用するなどアップデートしていますが、当時の風合いをキープしています」

素材だけでなく、トラックジャケットのシルエットも各スポーツの用途によって変わる。例えばランニング用であればスリムなシルエットが多く、バスケットなどはやや太いシルエットのほうが好まれるそうだ。

「ちなみにバスケットで言えば、1992年のバルセロナオリンピックの時に『ドリームチーム』と呼ばれたアメリカに星条旗のカラーのトラックジャケットを提供したのもリーボックなんですが、有名な逸話があって。真相は定かではないですが、当時、マイケル・ジョーダンが契約していたのはナイキ。でも表彰台に上がる時はリーボックのトラックジャケットを着なきゃいけない。だから彼はわざと肩に星条旗をかけてリーボックのロゴを隠していたという話もあったようです(笑)」

実はリーボックは4つのアメリカのメジャースポーツ(​​NFL、NBA、NHL、MLB)とのスポンサーシップおよびパートナーシップ関係にあった、唯一のブランド。本社にアーカイブされた過去のシューズの多様さからも、各スポーツとのコネクションの強さがうかがえる

固有名詞になり、ストリートにも波及。いま求められるアーカイブとしてのトラックジャケット

各ブランドが得意とするスポーツのウォームアップ用として誕生したトラックジャケット。現在に至るまでどんな道筋をたどり、どのようにしてその名称「トラックジャケット」がカジュアルウェアの一般名称として認知されるようになったのだろうか。

「リーボックの場合、トラックジャケットとパンツの上下を『トラックスーツ』と呼び始めたのは1993年。今思えば『陸上競技のトラックで着るウェア』だからという程度の、シンプルな理由だったのかなと。当時のカタログを見ると"ウインドフルジップジャケット"などと呼んでいたりもするので、まだまだ『トラックジャケット』は一般的なアイテム名として認知されていなかったと思います」

「流れとしてはナイキさんやアディダスさん、プーマさんなどの各社がいろいろなトラックジャケットをリリースする中で、徐々に固有名詞になっていったんだと思います。例えば"スウェット"というアイテム名も、映画『ロッキー』のキャラが作中で汗をかくためにトレーナーを着ているのが浸透して、そう呼ばれるようになったという説があります。トラックジャケットという名前もそんな感じで固有名詞となり、浸透していったのかもしれませんね」

ファッションにおいては、新しい呼び名が市民権を得て固有名詞になることは多いという

また、トラックジャケットをストリートという文脈に持ち込んだアーティストの存在にも触れないわけにはいかない。

「やはり連想するのは『RUN DMC(ラン・ディーエムシー)』ですよね。アディダスの黒赤のトラックスーツを着て、当時はその着用がタブーとされていたようなフォーマルな場へ現れました。それまでは競技場の外に出たことがなかったウェアでしたが、彼らはホテルにリムジンで乗り付けて着ていったと。しかも例のように胸元にはジャラジャラのジュエリーを付けて(笑)。本当はドレスコードがあるんだけど、ラン・ディーエムシーだから許されたという話を聞いたことがあります。その流れがあって、トラックジャケットは徐々にストリートウェアとしても広まっていったんです」

そんな中、もちろんリーボックのトラックジャケットも存在感を示していた。リーボックのベクタートラックジャケットが広く世に知られるきっかけになったのは、オリンピックのシーンが中心だったとも言われている。そこで各競技の選手が着用していたことで、有名になっていったそうだ。

「各社がトラックジャケットをリリースしていた中で、リーボックとして打ち出していたのがこの『ベクタートラックジャケット』です。実は93年からデザインはほぼ変わっていません。今のストリートシーンで注目されているのは、まさにそのアーカイブ的な部分なんだと思います」

「クラシックス ベクター トラック ジャケット」(¥9,990/税込み)は太すぎず細すぎずのレギュラーフィットシルエットが特徴だ。現在は4色展開だが、最もリーボックを象徴するカラーは「レッド×ネイビー×ホワイト」。プリントではなく、それぞれ大きさが異なる3色の生地を縫い合わせるという手の込んだ工程もリリース当時から変わらない

「仕様をほぼ変えてない理由としては、当時のいいものをそのまま提供しようという考え方からです。特にシルエットは時代によって流行り廃りが大きい。いまはオーバーサイズが主流ですが、もう少し経てばタイトなシルエットがトレンドになる可能性もあると思います。そんな時代の流れに合わせていちいち変えてしまうと、アーカイブとしてのアイテムの魅力は半減してしまう。よくクラシックなシューズを称して"OG"と呼びますが、その感覚に近い一着ですね」

ジップを閉めれば引き立つデザイン。多彩な着こなしが成立するベクタートラックジャケットという選択肢

リリースから30年が経過した今でも、全く古びて見えないベクタートラックジャケット。ただ、これを実際にどう着こなせばいいか?は大いに気になるところだ。基本的にはユーザーが好みに応じて自由に着こなしてほしいと話す高嶋さんだが、商品企画に携わる目線から着こなしの解説もしていただいた。

「個人的な思いからすると、フロントにデザインの要素があるのでジップは閉めて着ていただいたほうがかっこいいかなと。細かいポイントなのですが、襟のカラーがベクターロゴのカラーとリンクしているんですよ。こういうデザインのトラックジャケットはあまり他では見かけないと思います。そこをきれいに見せるためには、ジップを閉めて着るのがおすすめですね」

確かに襟から肩口にかけての生地とロゴ部分のカラーは統一されている。トリコロールカラー以外に、モノトーンで統一したカラーも人気だ

サイズレンジに目を向けてみると、XSから2XOまで計7つのサイズを展開しているのもベクタートラックジャケットの特徴。オーソドックスなレギュラーフィットの形そのものは不変だが、サイズを細かく用意することによってユーザーの好みに対応する意図があるそうだ。

「豊富なサイズレンジはこだわっているポイントのひとつです。ここ数年は古着のトラックジャケットのイメージで、大きめにゆるっと着るスタイルが支持されているので、あえてワンサイズ〜ツーサイズ上を選ぶお客さんは多いですね。ダボッと着るスタイルはずっと人気があります」

リーボック博多店スタッフさんの着こなし。ややサイズアップしたトラックジャケットに合わせたのは、ミリタリーライクなカーゴパンツ。パンツの裾を絞って足元の「ジグ キネティカ 2.5 エッジ」の存在感を強調
同じく博多店の他スタッフさんが合わせていたのはバギーデニム。トラックジャケットはサイズアップして選んでいるが、裾を内側に折り込んでややコンパクトなシルエットにアレンジ。Aラインでまとめた全体のシルエットが今っぽい

もちろん、ジップを閉める以外の着こなしも成立する。フロントを開けて、ロゴ入りのスウェットやフーディーを合わせるスタイリングも参考になりそうだ。

「インナーにロゴもののアイテムを合わせて、フロントを開けて着ても意外とマッチするというのはありますね。『カジュアルなアウターのひとつ』と捉えて、羽織って着るスタイルもありだと思います。フード付きのパーカーを合わせるのもいいですね。そもそもフードがある場合は開けて着ないと苦しいですし(笑)。特に若い方だと下にレイヤードしたいというお客さんは多いですね」

全体の色のトーンを揃えつつ、インナーにロゴ入りのカットソーを合わせていたのは渋谷店のスタッフさん。どことなく古着っぽい雰囲気を醸し出せるのがおもしろい
横浜店のスタッフさんはインナーにフーディーをチョイス。今年よく見かけるブラックメインのスタイリングはすぐに真似できそうだ

おわりに

個人的には「クラブC」や「クラシックレザー」、「ワークアウトプラス」などお気に入りのリーボックのシューズはいくつかあるが、ベクタートラックジャケットに関しては盲点だった。今思えば19AWにアウェイクとコラボした一着がかっこよかった時点で、その魅力に気づくべきだったのかもしれない。トラックジャケットが気になっている方は、今改めて新鮮に映るベクタートラックジャケットをぜひチェックしてみてほしい。

information

Reebok
HP:https://reebok.jp/

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