エルメスの歴史を一挙ご紹介!唯一無二のブランド 185年の歩み【コラム】について
1837年にフランスのパリで創業したHermes(エルメス)は、魅力的な商品を次々と発表し、世界中で愛されるブランドへと成長しました。ケリー、バーキン、ピコタンをはじめ、多くのアイテムで品薄の状態が続いており、人気の高まりはとどまることを知りません。今回はそんなエルメスの歴史を一挙に紹介します。エルメスは確固たる信念をもって、新しいことに挑戦し続けているブランドです。ブランドとして歩んできた長い歴史を知ることで、ぜひエルメスの世界観を感じてみてくださいね。
Hermes(エルメス)の歴史

1837年 | :パリのマドレーヌ地区で高級馬具工房としてスタート |
1880年 | :現在の本店所在地であるフォーブル・サントノーレ通り24番地に移転 |
1892年 | :オータクロアを発表 |
1935年 | :ケリーを発表(当時の正式名称は「サック・ア・クロア」) |
1937年 | :シルクスカーフ「カレ」を製作 |
1984年 | :バーキンを発表 |
2008年 | :エルメス財団を設立 |
1代目「ティエリー・エルメス」が高級馬具工房として立ち上げ
エルメスの歴史は、1837年に「ティエリー・エルメス」がパリのマドレーヌ地区で高級馬具工房を立ち上げたところから始まりました。「ティエリー・エルメス」は顧客の要望を理解し、予想を上回る商品を提供し続けます。上質な革を精巧に加工するエルメスの高級馬具はたちまち評判となり、パリ万博においても高く評価されました。馬・デュック(馬車)・タイガー(従者)が描かれているエルメスのロゴからは、馬具工房として歩んできた歴史を垣間見ることができます。
19世紀、馬車は単なる移動手段ではなく、上流階級のステータスシンボルでもありました。馬具にも高い技術力や品質が求められており、安全性、耐久性、デザイン性などが重視されました。馬具工房としてのエルメスは、上流階級とのつながりを深め、ナポレオン3世やロシア皇帝も顧客として名を連ねることになります。
2代目 本店を現在の場所へ移転〜バーキンの前身「オータクロア」の誕生
「ティエリー・エルメス」の息子である「シャルル=エミール・エルメス」が、2代目として経営を引き継ぎました。「シャルル=エミール・エルメス」は本店を現在のエリゼ地域、フォーブル・サントノーレ通り24番地に移転し、徐々に事業を拡大していきました。事業拡大のひとつが、オーダーメイド販売です。顧客の要望を聞き、馬具をカスタマイズすることで、ファンを確実に増やしていきました。エルメスの馬具はフランスだけでなく、ヨーロッパ全土へと知られることになります。
オーダーメイド販売は馬具にとどまらず、「オータクロア」を生み出しました。オータクロアはケリーやバーキンの前身となったバッグで、鞍と乗馬用ブーツを収納して運ぶためにデザインされました。2代目以降、馬具だけでなく上質な革を使ったさまざまなアイテムが誕生していくことになります。
3代目 時代の変化に上手く適応して業績を伸ばす
3代目は「シャルル=エミール」の息子である「エミール・モーリス・エルメス」が経営者となり、時代の変化に上手く順応して業績を伸ばしていきました。「エミール・モーリス・エルメス」の時代は、2つの世界大戦の間で、人々の生活が大きく変わった時期でもあります。エルメスにとっては、馬具だけに捕らわれない経営が求められることになりました。「エミール・モーリス・エルメス」は馬具工房として培ってきた技術を、さまざまな皮革製品へと展開していきます。
そのとき役立ったのが、彼の好奇心と膨大なコレクションです。ヨーロッパにない技術を積極的に取り入れたり、古今東西の美術作品を収集したりすることで、エルメスは独自の道を歩んでいくことになります。
4代目 ケリーの生みの親による華麗な事業拡大
4代目の「ロベール・デュマ」は、3代目経営者である「エミール・モーリス・エルメス」の義理の息子(娘婿)です。エルメスの家族経営は続きますが、血族ではない人物がトップになったことにより、エルメスは華麗な事業拡大を実現することになります。「ロベール・デュマ」のもっとも大きな功績のひとつが、世界中の女性を虜にしてやまない「ケリー」を生み出したことです。女優グレース・ケリーの名前を冠したバッグは、エルメスのファッションブランドとしての地位を大きく向上させました。ほかにも、「ロベール・デュマ」の時代には芸術性の高いシルクスカーフ「カレ」が誕生しました。
エルメスの事業拡大の裏には、唯一無二の技術がありました。デザイン性を闇雲に追及するのではなく、職人としてのプライドを持って、ひとつひとつのアイテムを作り上げたからこそ、事業を着実に広げていけたのです。
5代目 バーキンをはじめ人気モデルが次々誕生
5代目の「ジャン・ルイ・デュマ」は、1978年の就任から2006年の退任まで30年近く経営者としてブランドを導いてきました。30年の間に、エヴリンやバーキンといった、エルメスバッグの人気モデルが次々と誕生しています。「ジャン・ルイ・デュマ」の時代の特徴は、ブランドのグローバル展開です。日本で初めてのエルメス直営店がオープンしたのも、1979年のことでした。「ジャン・ルイ・デュマ」はグローバル展開と並行して、会社の買収も積極的に行いました。エルメスにおける買収は、会社を大きくするためではなく職人の技術継承を目的でした。思想を同じくする会社とパートナーシップを結ぶことで、貴重な職人技を守ることに注力するエルメスの企業方針に、人々は感銘を受け、さらに魅了されていくことになります。
6代目 初のエルメス一族以外のCEO就任
6代目の「パトリック・トマ」は、はじめてエルメス一族以外でCEOに就任した人物です。2003年以降は共同CEOとして活躍しました。「パトリック・トマ」は2003年から2013年という短い任期のなかで、製品のみならずエルメスの世界観を表現する活動にも取り組んできました。一方で、「パトリック・トマ」のCEO就任は、新しい体制への移行期間と言われており、エルメス一族の影響力はこれまでと変わらず大きなものでした。
7代目 エルメス一族のCEO復帰
7代目はエルメス一族の「アクセル・デュマ」がCEOに就任しました。「アクセル・デュマ」は5代目「ジャン・ルイ・デュマ」の甥にあたり、2013年よりCEOの職に就いています。「アクセル・デュマ」は新時代の起業家としての顔を持ち、世界中に店舗を開店させ、グループをさらなる高みへと導いてきました。現在、エルメスは45か国で306の店舗を有しており、現地の文化と融合したラグジュアリーな空間を生み出しています。経済的な成功を追うだけでなく、「アクセル・デュマ」は「責任ある持続可能な発展」を掲げ、人と自然を尊重したうえでの発展を目指しています。時代のニーズを掴み、柔軟に変化してきたからこそ長い歴史を刻めたのでしょう。
LVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)による買収騒動
LVMHはファッション業界でもっとも大きいグループ企業です。ルイ・ヴィトンとモエ・ヘネシーの合併により1987年に設立されて以降、GIVENCHY(ジバンシィ)、LOEWE(ロエベ)、CELINE(セリーヌ)、Fendi(フェンディ)、Dior(ディオール)などの、名だたるブランドを傘下に加えてきました。最近ではTiffany & Co.ティファニー)の買収が話題となったので、聞き覚えのある人も多いのではないでしょうか。かつてエルメスにも、LVMHによる買収騒動がありました。2010年にLVMHがエルメスの株式を大量に買い進めていることが発覚し、「買収されるのではないか」という危機感が広がっていきます。エルメスは買収防止策を講じ、2014年に買収を阻止したうえで和解が成立しました。LVMHはトップ企業ならではの強みや魅力がありますが、エルメスは確固たる信念と団結力をもって、独立を貫きました。
「Hermes(エルメス)といえば」定番の名作
長い歴史を歩んできたエルメスには、数多くの魅力的なアイテムがあります。そのなかでも、定番の名作と言われるアイテムの知られざるストーリーを紹介します。カレ
フランス語で正方形を意味する「カレ」は1937年、4代目「ロベール・デュマ」の時代に初めて製作されました。シルクスカーフ・カレの記念すべき第一号のデザインは、当時流行したボードゲームを題材とした『オムニバスと白い貴婦人のゲーム』です。発売から現在に至るまで、シルク素材のしなやかな触り心地とデザイン性の高さは、世界中の女性から愛されています。エルメスのカレは、45㎝×45㎝、70㎝×70㎝、90㎝×90㎝、140㎝×140㎝などのサイズがあり、スカーフに最適な90㎝×90㎝のアイテムがもっとも充実しています。華やかなデザインのカレは、巻き方によってさまざまな表情を楽しむことができます。エルメスバッグに巻きつけたりするのもおすすめです。
Hermes Grand Theatre Nouveau Scarf 90 "Bleu Royal/Mordore/Blanc"
エルメス カレ 90《グラン・テアトル・ヌーヴォー》"ブルーロワイヤル/モルドレ/ブロン"

バーキン
バーキンはエルメスの代名詞ともいえるバッグです。現在では100万円以上の高級バッグとしてのイメージが強いバーキンですが、もともとは「荷物が多くなりがちな母親のために、しなやかで収納力のあるバッグを作りたい」というところからスタートしたことをご存知でしょうか。バーキンは5代目の「ジャン・ルイ・デュマ」と、イギリスの女優ジェーン・バーキンが飛行機のなかで偶然隣り合わせたことをきっかけに誕生しました。母親になったばかりのジェーン・バーキンが、バッグに悩みをかかえていることに気が付いた「ジャン・ルイ・デュマ」は、エレガントでボリュームのあるバッグを自らデザインすることを提案しました。馬具を入れるためのバッグである「オータクロア」をベースに製作してできあがったのが、バーキンです。バーキンの人気は年々高まり、現在ではブティックに並んでいる姿をほとんど見ないほど、入手困難な状態です。
Hermes Birkin Togo hand Bag "Etoupe"
エルメス バーキン トゴ ハンド バッグ "エトゥープ"

ケリー
1935年に発表されたケリーは、当初「サック・ア・クロア」という名前が付けられていました。このサック・ア・クロアを愛用していたのが、アメリカの女優として活躍したのち、モナコ公妃となったグレース・ケリーです。妊娠中のグレース・ケリーの写真が報道されると、彼女が手にしていたサック・ア・クロアにも大きな注目が集まることになります。サック・ア・クロアは「あのグレース・ケリーが持っていたバッグ」として瞬く間に世界中で知られるようになり、発表から20年の時を経て、1956年「ケリー」へと改名しました。上品で繊細なケリーは、フォーマルなシーンを華やかに彩ってくれるバッグです。
Hermes Kelly Swift leather bag "Black"
エルメス ケリー スイフト ハンド "ブラック"

シェーヌ・ダンクルブレスレット
フランス語で錨の鎖を意味する「シェーヌ・ダンクル」は、1938年に発売された歴史あるアイテムです。4代目「ロベール・デュマ」が港で見た、錨の鎖(アンカーチェーン)に着想を得たことで誕生しました。シェーヌ・ダンクルのデザインは、ブレスレット、リング、ネックレス、ピアスなど、さまざまなアイテムに取り入れられています。Hermes Chaine D'ancre GM Bracelet "Silver"
エルメス シェーヌダンクル GM ブレスレット "シルバー"

実は、エルメスの名作時計として知る人ぞ知る「ケープコッド」も、シェーヌ・ダンクルからインスピレーションを得て生まれたアイテムです。ケープコッドの特徴は、長方形の中に正方形がデザインされた、鎖のようなケースです。ストラップ部分はエルメスの上質なレザーを採用しているので、ブレスレットのように身に着けられる時計に仕上がっています。
Hermes Cape cod Watch 23x23mm
エルメス 腕時計 《ケープコッド》 23×23 mm

Hウォッチ
レディースウォッチといえば、Cartier(カルティエ)やBVLGARI(ブルガリ)。メンズウォッチといえば、OMEGA(オメガ)、ROLEX(ロレックス)、Grand Seiko(グランドセイコー)などが有名ですが、実はエルメスにも名品として知られる「Hウォッチ」があります。エルメスの「H」を大胆にあしらったデザインが特徴で、時計としての機能性の高さはもちろん、エルメスらしいアクセサリーとしても人気です。ストラップ部分は簡単に取り外しができるようになっており、気分に合わせてベルトのカラーをカスタマイズできます。
Hermes H Watch PM Etoupe "Brown"
エルメス Hウォッチ PM エトゥープ "ブラウン”

【まとめ】
エルメスは普遍的な価値を提供し続けている唯一無二のブランドです。ひとつひとつのアイテムには物語があり、それらを知ることで、よりいっそうエルメスに魅了されたのではないでしょうか。トレンドに合わせてスタイルを変化させるのも素敵ですが、大人の女性だからこそ似合うエルメスの名品を手にしてみるのもおすすめです。