ナイキ ダンクへのvacancyさんの投稿

2024/05/07

夜の連続スニーカー小説　長編最終回

《To L◯VEる》

ラブコメでありがちな展開だった。
なぜか異性にモテて、ラッキース◯ベに遭遇しやすい不幸で幸運な主人公。
そして破廉恥なんて言いながらも、満更でもなさそうなヒロイン。

しかし、現実は甘くない。
今の状況は、まさしく逮捕案件であった。

どうしてこんなことになってしまったのだろうか。
私はただ、試着で靴紐を結んでいただけなのに。
気付いたら生物学上同性ではない若いおケ◯が、私　の　頭　に　刺　さ　っ　て　い　る　の　で　あ　る。

お◯ツが刺さったことにより思考停止となった私は、一生懸命靴紐を結んでいるフリをしながら、走馬灯を見ていた。

浮かぶ家族の顔。

家では散々変態と呼ばれて、ついには現実となってしまった。
次にアクリル板越しに会う時は、どんな顔をしているのだろうか…。

ようやく何かに触れていることに気付いたゲスト一行は、何事もなかったかのように1歩前へと進み、そのまま◯ぁくんと一緒に2階へと消えていった。

あぁ、ようやく解放された…。
自分の人生も1歩踏み出したかのような瞬間だった。

死ぬほど気疲れした私は、もはや戦場で戦える体力どころか帰還すら危うい状況にあった。

しかも、いつの間にか横にいたオニイチャンが消えている。

「あれ、オニイ…」

薄れゆく意識の中、戦死寸前の私が最後に見た景色は、レジ前で大きなショッパーバッグを受け取り、ガッツポーズしながら真顔でこちらに向かってきているオニイチャンの姿だった。

そしてこの後の彼の発言は聞かないフリをすればよかったのだろうか。
しかし、モノがある時点でそれは事実であり、きっと免れないことだったのだろう。
カッコよくてカッコ悪いオニイチャン、そんな彼を私は好きなのである。

「お金なくなっちゃったから、奢ろうと思ってた今日の飲み代は割り勘ね！」

戦場の花
〜完〜