もはや古着の枠を超え、資産としての価値すら帯び始めた「Old Stussy」。その相場高騰は留まることを知らず、ヴィンテージ市場では数百万円クラスの取引も決して珍しくない状況となっている。
STUSSY-RE:COLLECTED(POP UP、抽選販売)の開催にあたり、今回もStussyコレクターの第一人者アベヒロユキ氏を迎えて取材を実施。前回のインタビューでも触れたCarharttコラボなどの現物を持参いただき、Old Stussyを語る上で欠かすことのできないスペシャルピースのディテールや魅力について語ってもらった。さらに、アベ氏が「今こそ買っておくべき」と注目するミリタリーアウターについても解説してもらう。
「初売り」でStussyを売る店が増えた?最新のOld Stussy事情
── 前回のインタビューから1ヶ月ほど経ちました。古着シーンでは「初売り」が一つの目玉イベントになっていますが、Old Stussyでも目立った動きはありましたか?
アベヒロユキ(以下、アベ): 年末年始にかけて多くの古着イベントがありましたが、ヴィンテージから近年ものまで、Stussyを出品している古着屋が増えましたね。特に、初売りの目玉商品としてStussyを用意しているお店も多かったです。
── Old Stussyなどトップピース以外の、よりライトなアイテムの取り扱いも増えているということでしょうか?
アベ: そうですね。もちろん古い年代のものは高額ですが、より新しい年代で手の出しやすい価格帯のStussyも古着市場に多く出回るようになりました。 以前なら普通の入荷で出していたようなレギュラーアイテムでも、あえて初売りのスペシャルとしてストックしておく古着屋が増えたなと。それだけStussyというブランド自体が注目されていて、集客の武器になると認識されている証拠だと思います。
── 購入していく客層に変化はありましたか?
アベ: 世代もスタイルも、すごく幅広くなっています。 特に印象的だったのは、海外の方を中心に、全身をハイブランドで固めた人たちがコーディネートのハズしとしてStussyを買っていくケース。これまではSupremeがそのポジションだったけど、最近はあえてOld Stussyを選ぶという人が増えているというか。Diorとショーン・ステューシーのコラボがあった影響も大きいと思いますが、帽子やTシャツ、ジャケットとアイテムのバリエーションも豊富なので、ワンポイントでストリート感を足すのに丁度いいんですよ。
── 前回のインタビューで「2030年のブランド創設50周年に向けてさらに相場が上がる」というお話をされていましたが、直近で相場の変動はありましたか?
アベ: 実は、前回の記事が出てから25周年記念MA-1などのアイテムを取り扱うショップが増えました(笑)。古着業界だとブランドの周年なんてさほど気にしないけど、前回のインタビューを読んでその価値に気付く古着屋が結構多かったみたいです。投資目的で古着を買う人が増えている今、Stussyもその対象になってきていることを実感しますね。
世界中のコレクターが渇望する、伝説のスペシャルピース3選
年末年始の取引状況を見ても、Old Stussyの注目度が高まっていることは一目瞭然。そんな中、前回のインタビューでもトップピースとして名前の上がった1993年のCarharttコラボなど、Old Stussyを代表するスペシャルな3点を持参いただいた。いずれも取引相場は数百万円クラスで、市場に出回ること自体が稀な博物館級のアイテムばかり。狙い目アイテムを教えてもらう前に、まずはOld Stussy人気の担い手とも言えるこれらのトップピースがなぜほかのアーカイブと一線を画すのかを押さえておこう。
①Carhartt × Stussy Chore Coat "Navy"
アベ: 今年の初売りでも、目玉アイテムとして出品している古着屋が多かったのがCarharttコラボ。いくつかの型がありますが、このチョアコートは僕が知っている直近の取引価格で、最高額は200万円です。少し前までは海外でも100万円程度と言われていましたが、さらに跳ね上がっていますね。
ただ、Carharttコラボで気を付けたいのが偽物の存在。今、Carhartt自体がブームになっていることもあって、普通のヴィンテージCarharttのボディに、後からStussyの刺繍を入れただけの偽物がとんでもない量出回っているんですよ。 だからこそ、このレベルのアイテムは誰から買うか、どのルートから出品されるかということが大切になってきます。
この個体の最大の魅力は、ボディがネイビーであること。 Carharttといえばブラウンやブラックが定番で、ネイビーのボディは現存数が極端に少ないんです。刺繍が入っていないただのCarharttだとしても、ネイビーというだけで20万円近くで取引されることもある。創業者のショーン・ステューシー本人が、とにかくネイビーという色にこだわりがあったみたいで。Stussy初期でもほかのコラボにはさまざまなカラバリがありますが、Carharttに関しては頑なにネイビーを使っている。彼の中で「Stussy × Carharttといえばネイビー」という美学があったんだと思います。
②"International Stussy Tribe" Varsity Jacket
アベ: ショーンが「International Stussy Tribe (I.S.T.)」と呼ばれるクリエイティブな仲間のために配布したのが、I.S.T.バーシティジャケトの始まりです。で、この個体は1990年〜1991年ごろに一般販売されたモデルだと思います。
ちなみに、最初I.S.T.のメンバーだけに配られたジャケットは、胸に個人名が刺繍されていたり、背中の文字が"TRIBE"ではなく"POSSE"だったりする。ブランド初期には"POSSE"表記のTシャツもあったんですが、言葉の響きとしてTRIBEの方が良いということで変わっていったようですね。
スタジャンはカラーによって相場が変動して、前回スニダンの抽選販売企画に出品したブラウンは約80万円くらい。このグレーは現在一番人気のカラーなので、220万円で取引された事例もあります。スタイリングに取り入れやすいカラーだし、90年代に藤原ヒロシさんが同色のものを着用していたのも要因かと。また、一文字ずつワッペンを使って作るため、手間もコストもかかるうえ、カラーバリエーションが豊富な分、各カラーの生産数が限られている。そのような事情もあり、来年にはボディカラーを問わずさらに相場が上がるかもしれません。
③"Joker" Varsity Jacket
アベ: 自分はこのジャケットをずっと前から所有していたんですけど、最初は「面白いブートレグだな」と思って買ったんです。 というのも、ボディのディテールや襟タグの質感が、I.S.T.などほかのバーシティジャケットと異なっているので。この色のタグ(光沢感の強い襟タグ)は偽物というのが、当時の通説でしたから。
潮目が変わったのは2005〜2010年くらい。Stussyが公式サイトで突然「歴代バーシティジャケットコレクション」を公開したんです。そこに、なんとこれが載っていた。 「え、これ本物だったの!?」と世界中がざわつきました。そこから研究が進んで、ごく一部の年代のバーシティジャケットには、この特殊なタグが使われていることが判明したんです。
僕が把握している限り、現存しているのは世界で5〜7枚程度。その内の数枚が循環している感じで、昨年末に国内では330万円で取引されました。これは自分が知る限りOld Stussyの過去最高取引額で、その金額でも争奪戦レベルだったみたいです。このジャケットに関しては「300万円というお金を用意する難易度」よりも、「売ってくれる人を見つける難易度」の方が遥かに高い。 Stussyのコレクターは、本当にお金じゃ動かない人が多いんですよ。ただ、「そんなに高いんだったら売ります」という人が、まだなんとか出るタイミングではあると思うので、見つけたら買っておくことをおすすめします。
今の狙い目は「Stussyのミリタリー」?アベ氏が推す、90'sミリタリーの魅力とは
Old Stussyの相場が高騰し、先述のスペシャルピースのような100万円を超えるアイテムも決して珍しくはない昨今。その中で、今は比較的手の出しやすい価格かつ、今後相場上昇が見込まれるとアベ氏が睨むのはミリタリーアウターだ。Old Stussyはこれだけブームになっているなか、「ミリタリー系アイテムの値動きがそれほど急速ではないことが不思議」だと言う。
── ここまでは、もはや天井知らずの高騰を見せるトップピースを見てきました。しかし一方で、アベさんは「ミリタリー系の動きだけは、今のブームの中で少し異質だ」と感じるそうですね。現在のStussyミリタリーアウターの相場に対して、不思議だと感じる点はどこでしょうか?
アベ: そもそもOld Stussyのトレンドは、ある程度古着市場の人気と連動している部分があって。 例えばCarharttコラボが高騰したのは、Carharttの古着そのものが爆発的に流行った影響が大きい。対してミリタリーは、市場全体では人気があるけど、Stussyのミリタリーはまだ完全にそことリンクしていないんです。
── Stussyのミリタリーだけが見過ごされている理由はどこにあるんでしょうか?
アベ: 最も大きな理由は、古着に限らず短丈で身幅の広いシルエットがトレンドになったこと。特に1990年代後半に見られた丈が長いタイプのミリタリーアウターは、そのトレンドの影響もあってここ数年さほど相場は上昇していない。とはいえ、古着業界に身を置いていれば分かりますが、このような丈の長いヘビーアウターが再評価されるサイクルは必ず来ます。
── ではその中で、どんなミリタリーアウターが狙い目ですか?
アベ: まず狙うべきは、「Spiewak(スピワック)」[※]のボディを使っている個体。 1990年代後半から2000年代初頭にかけてのStussyは、ミリタリージャケットのボディに、アメリカの老舗ユニフォームメーカーSpiewakを採用していることが多いんです。SupremeやX-LARGEの初期アイテムでも使われていた、知る人ぞ知る名門ボディですね。
アベ: 2000年代以降は、世界展開に合わせてAlpha Industriesとコラボをしたり、自社ボディの割合が増えていくんです。ミリタリーアイテムの流行と同時に、Spiewakのアイテム自体が徐々に値上がりしているので、今のうちに押さえておいた方が良いと思います。
── 前回Tシャツを買うなら「XL」と言われていましたが、ミリタリーアウターの場合も同じですか?
アベ: サイズ選びに関しては、「XLじゃなきゃダメ」とか言ってる場合じゃないんですよ。 "運が良ければ年に一度出会えるかも"というくらい、アウターは球数が少なくて。そもそもMでもUSサイズなので十分大きいから、とにかく出会ったら買うのが鉄則。Stussyのミリタリーアウターを探している方は「とりあえずMサイズでも売ってたら買っておいて、その後出会えたらジャストサイズのSも買う」という買い方をされる方が多いですね。
- 注釈 ^ Spiewak
- 1904年創業の米国老舗ユニフォームメーカー。軍や警察への納入実績を持つ堅牢な作りが特徴で、1990〜2000年代にはStussyやSupremeなどストリートブランドがボディとして採用していた。アベ氏持参のL-2Bでは省略されているが、タグなどに見られる「金色の羊(ゴールデンフリース)」のロゴが目印。
OLD STUSSYの中でも特にアベ氏が推す、注目のミリタリーアウター
Stussy Sports N-3B
1990年代に展開されていた「Stussy Sports」ラインからリリースされた本作。 発売当時、裏原宿カルチャーを牽引するファッションアイコンたちが雑誌などでこぞって着用したことにより爆発的な人気を博し、ストリートキッズたちの憧れの象徴となった。Stussyと分かるのは左腕のシガレットポケット上に刺繍されたロゴのみという簡潔なデザインが、なんとも玄人好み。 近年は短丈アウターの流行により見過ごされがちだったが、水面下で探しているコアなマニアは多い。
Ready Made × Stussy L-2B
オールブラックのL-2Bは、1997年にオープンした藤原ヒロシ氏プロデュースのセレクトショップ「Ready Made」の開店記念として発売されたもの。フロントジップ横のオキシジェンタブに、StussyとReady Madeのロゴ、そして藤原氏のイニシャル「HF」が刺繍されている。Stussyと裏原カルチャーの緊密な関係性が垣間見える貴重なアーカイブだ。なお、襟元のタグにSpiewakのロゴはないが、記載の登録識別番号からSpiewakのボディであることが確認できる。
── スニダンでは、貴重なOld Stussyが並ぶ『STUSSY-RE:COLLECTED』を2/6より開催します。今回はアプリだけでなく、スニダンフラッグシップストアでのポップアップも行い、アベさんも店頭に立つとのことですが、この機会にOld Stussyを購入したいと考えている読者へ最後にメッセージをお願いできますか。
アベ: Stussyの魅力はもちろん「デザインのかっこよさ」が一番ですが、それ以上に服の細部に隠されたギミックや、その背景にある歴史的なストーリーが面白い部分だと思います。そういった情報を踏まえて実物を手に取ると、全く違ったものに感じられるはず。
今回のイベント最大の魅力は、オンライン抽選だけでなく、スニダンフラッグシップストアにアイテムが並ぶこと。期間中は僕も基本的に店頭に立っている予定なので、少しでもOld Stussyに興味があったらぜひ足を運んで、直接質問してほしいですね!
『STUSSY-RE:COLLECTED』が2/6から開催!
50周年に向けて、さらに熱を帯びるStussy。記事内で紹介した博物館級のスペシャルピースや、狙い目のミリタリーアウターを通して、Stussyというブランドの底知れない深みをあらためて感じていただけただろうか。
この熱量をそのままに、アベ氏や彼が懇意にする古着屋が厳選したOld Stussyを展示、販売するイベント「STUSSY-RE:COLLECTED」を開催! 今回は、スニダンアプリ上での抽選販売と、スニダンフラッグシップストアでのポップアップという2本立てで展開する。スペシャルピースに負けず劣らずの貴重なアイテムにも出会えるチャンスなので、ぜひチェックしてみてほしい。