90年代のストリートカルチャーを牽引し、今なおシーンの頂点に君臨するStussy。近年、ヴィンテージ市場での価格高騰が止まらない「Old Stussy」だが、そのブームは一過性のものなのか、それともまだ序章に過ぎないのか?
今回は、Stussyコレクターの第一人者であるアベヒロユキ氏(以下、アベ)を迎え、現在の市場相場の裏側から、具体的な狙い目アイテムの選び方、そしてブランド創設50周年に向けた大胆な未来予測まで、一歩踏み込んだディープな話を伺った。
ローズボールでの「大量発掘」が大きなきっかけに
── 前回のインタビューでは、アベさんがStussyにハマったきっかけや、2000年代以降のアイテムなどについてお聞きしましたが、今回はより「相場」にフォーカスして伺えればと思います。
近年の古着ブーム以降、Stussyの立ち位置も変わってきたと感じますが、アベさんの中で「人気が出始めた」と感じたのはいつ頃ですか?
アベ:
2010年頃までは、ストリートやサーフスケートに特化したマニアックな古着屋くらいにしか置いてなくて、相場もずっと低かったんですよ。
お店の人と話しても「全然Stussyは売れない」って嘆いてたくらいで。いわゆる「黒タグ」と呼ばれているものでも、当時は5,000円〜8,000円くらいで売られていましたね。
値上がりし始めたのは10年前くらいからです。でも、8,000円から1万円、1.5万円、1.8万円……と、本当に徐々に上がっていった感じ。元々が売れていなかったから、毎年みんな「今年こそ、ここがピークかな」って言ってました(笑)。
── 相場が大きく上昇したきっかけは何だったんでしょうか?
アベ: 第1次Old Stussyブームは9年くらい前ですね。
実はそのちょっと前に、アメリカのローズボール[※]で、Old Stussyのデッドストックが大量に出たんですよ。ただ、デッドとはいえ当時の相場からすると高かったので、正直そこで勝負する古着屋は少なかったんです。
とはいえ、なんやかんやでいろんなお店が買い付けて、日本中の古着屋で一時期すごい数のデッドストックが並んだんです。「黒タグが2万で売れた」っていう話が出たのも、確かその時でしたね。
── きっかけがローズボールにあったとは初耳です。そこから一気に全国へ波及していったんですね。
アベ:
それでようやく売れるようになり、若い人も「黒タグ」という存在を知るようになって、相場も徐々に上がり始めました。
そこから「コンッ」と急激に跳ねたのが多分2年前くらい。そして、結構強烈な値段がつき始めたのがここ1年です。
ストリートブランド初の「ゴールドアニバーサリー」へ
── 最近は数年前までは考えられない価格になっていますよね。例えば、93年のCarharttコラボのジャケットも今では100万超えだとか。
アベ: Carharttコラボは、今100万とかになっていますね。「20万〜40万になった、すごいよね」って話をしてたのに、気づいたら50万、今では100万超え……みたいな(笑)。そもそもCarhartt自体がすごく流行ったというのもあるんですけど、Stussy全体の相場も大きく底上げされています。
自分の知る限り、95年〜97年頃の「Old Stussyブーム」と言われていた時代の相場よりも、今は全然高い。歴史上、今が1番高いと思いますね。
── なぜ今、ここまでStussyがヴィンテージ市場で評価されているのでしょうか?
アベ: これまでに出した服の種類が膨大にあるという点もそうですが、そもそも古着だけじゃなく「現行品」も売れているのが大きいです。
前回も話しましたが、2010年から2015年頃は量販店的な売り方をしていて「どこでも買えるし、誰でも着ている」感じになってしまっていた。そこから2015年以降、徐々にリブランディングを行い、店舗数や生産数を絞ってイメージを刷新したのが効いてきています。
定価も上がって、5〜6年前はTシャツで6,000円くらいだったのが今は1万円くらい。それなら「中古の1万円超えもそんなに高くないよね」となる。一時期、まだ安い古着と高くなった新品の価格に乖離があったんですけど、「これ2万円で出してるけど、現行なら4万円じゃない?」って気づき始めて、そこで一気に相場が引き上げられましたね。
── 正直、今はかなり高騰している状態だと思うのですが、この相場は今後落ち着いていくと思いますか?
アベ: 意外と「今がピークだ」と思ってる人は多いけど、恐らくStussyは5年後まで大丈夫です。古着ブームに関係なく、2030年に間違いなく跳ねるので。
その理由は、2030年にブランドとして「50周年」を迎えるからです。海外ではシルバーアニバーサリー(25周年)、ゴールドアニバーサリー(50周年)といって、節目をすごく大事にする傾向があるんですが、そのゴールドアニバーサリーを迎えるストリートブランドって、実はStussyが初なんですよ。
── 2025年で45周年ですから、本当にあと少しで50周年という大きな節目ですね。
アベ: 25周年の時は、本当にいろんなブランドとコラボしたり、めちゃくちゃ豪華なアイテムが出たりしました。海外のメディアで、いろんな有名人がインタビューを受けたりして。それを今の時代にやれば、もっと規模が大きくなるはずです。
あと、実は45周年は何もやらなかったんですよね。ということは、多分50周年に相当大きいことを仕込んでるんじゃないかと。そのタイミングで、古着とか現行とか関係なくStussy全体がめちゃくちゃ盛り上がると思うので、全ての価値が上がる可能性は高いですね。
そうなった時には、もしかしたら本当に「資産価値」ってレベルのものも出てくるかもしれない。だから、今って実はまだ割と「買い」なんじゃないかと思います。
賢く買うための「狙い目」3つのポイント
ここからは、具体的にどのようなアイテムを狙うべきかについて掘り下げていく。「マニアックな話を始めるとキリがない」と笑うアベ氏に、今回はあえて3つのポイントに絞り、資産価値という視点から「どこを気にした方がいいか」を解説してもらった。
①Tシャツの買うべきサイズは「XL」一択
アベ: まずサイズの話です。今はMやLサイズも売れますが、長い目で見ると、おそらく「XL」で持っておいた方がいいです。Stussy全体に言えることなんですが、でかいサイズの方が生産数が少ないから絶対高いんですよ。
ちなみに、Stussyは92年以降からTシャツの「2XL」を作っているようなのですが、2XLに関しては本当に出てこないので今でもマジで高いです。資産価値という意味で考えるなら、Tシャツは2XLで持っておくのがベストですね。
逆にパンツに関しては、大体Mサイズくらいが良いです。Stussyはシルエットも太いですし丈も長いので、32〜34インチ、大きくても36インチくらいまでのサイズを持っておくのがおすすめです。
②「珍しい=価値が高い」は間違い
アベ:
2つ目は、「珍しいこと」と「値段が高いこと」はイコールではないということ。
Stussyってマジで難しくて、元々の生産数が少なくて全然市場に出ないアイテムが山ほどあるんです。ただ、なんやかんだで値段が上がるのは「みんなが見ていて、欲しがるもの」なんです。
マニアックで地味なものだと、市場の知識がついてこない限り値段が伴わない。特に最近はみんな中間をすっ飛ばして、Carharttコラボのようなトップピースを買いたがる傾向があるので、資産価値を考えるなら、マニアックで珍しいものを変に突くのはやめた方がいいですね。
③ショーン・ステューシーの「手書き」を狙え
アベ: 3つ目は、ショーン・ステューシー本人の手書きアートワークのアイテムを狙うこと。特に「総柄」のアイテムです。元々ショーンが手書きでやってたアイテムって、復刻でも結構プレミアがつきやすいんですよ。
プリントTシャツって、ありもののボディにプリントするのが一番ベーシックな作り方ですが、ショーンは総柄など一部のTシャツは80年代から生地自体を発注して作ってるんです。これってとんでもなくコストがかかるし、無駄な裁断もいっぱい出るから、めちゃめちゃ手間がかかってる。それがしっかり伝わってくるのが総柄系なんです。
今後、ショーン・ステューシーのアート性についての話はもっとメディアでも出てくるし、かなり評価されるようになると思っています。狙い目としては、総柄の中でも明らかにステューシーのアートワークだと分かるもの。例えば、独特の字体でいっぱい書いてあるとか、知らない人が見ても「これStussyだ」と分かるものを狙うのがおすすめです。
「STUSSY NOW & ARCHIVE FES」注目アイテム3選
今回開催される「STUSSY NOW & ARCHIVE FES」では、アベ氏と懇意にしているショップが集結し、珠玉のOLD STUSSYアイテムが100点以上出品される。その膨大なラインナップの中から、アベ氏が特に注目する「おすすめアイテム」をピックアップしてもらった。
25周年記念 MA-1ジャケット
まず注目すべきは、25周年時の目玉としてリリースされたアルファ製のMA-1だ。
一見するとワッペンのみのシンプルなデザインだが、特筆すべきはその協賛ブランドの豪華さにある。Supreme、Fragment、Undefeatedなど、現在では考えられないようなビッグネームが名を連ねており、アベ氏も「協賛しているメンツが本当にエグい。世間ではまだそこまで騒がれてないけど、本当にすごいコラボ」と舌を巻く。
デザイン性の高さに加え、ブランドの歴史が凝縮された一着。「50周年になった時に、最初に取り上げられる伝説のアイテムになる」とアベ氏が太鼓判を押す通り、将来的な高騰も予見されるマスターピースだ。
I.S.T バーシティジャケット(スタジャン)
Stussyを語る上で絶対に外せないアイテム、それがスタジャンだ。 そのルーツは、創設者ショーン・ステューシーが価値観を共有できる世界中のクリエイティブな仲間のために作成した「International Stussy Tribe (I.S.T.)」にある。当時のコミュニティを象徴する特別なジャケットであり、ブランドの魂とも言える存在だ。
今回販売されるのは、90〜91年頃のオリジナルモデル。アベ氏が「Stussyの歴史において非常に特別な意味を持つ」と語る通り、単なるヴィンテージウェアの枠を超え、ストリートカルチャーの原点を体現した極めて貴重な一着である。
サーフマンロゴの大会協賛Tシャツ
最後は、マニアの間で密かに注目を集める大会協賛Tシャツ。ポイントは、サーフマンロゴの周囲がギザギザにデザインされた通称「ギザ」と呼ばれる特殊なグラフィックだ。
レギュラーアイテムでは過去に2パターンほどしか確認されていないこのロゴが、「何故か協賛Tシャツで使われている」のが非常に興味深い点だとアベ氏は語る。「ロゴがめちゃくちゃマニアック」と評される本作は、恐らく市販品ではなく関係者のみに配布されたもの。一般市場には滅多に出回らない、玄人好みの珍品と言えるだろう。
── 最後に、STUSSY NOW & ARCHIVE FESは今後も継続的に開催されるとお聞きしました。
アベ: 前回スニダンさんでイベントを開催させていただいたときは夏だったので、ほぼTシャツでした。今回は冬物を出すのが初めてなので、各ショップさんにとりわけ良いものをチョイスしてもらっています。
ゆくゆくは、本当にめちゃくちゃマニアックなところを絞ったような、特定のモデルだけのイベントとかもやりたいですね。「Stussyってこんなアイテムもあるんだよ」っていうのを皆さんに知ってもらえるようなイベントを、長く続けていけると良いなと思っています。
STUSSY NOW & ARCHIVE FESが12/12から開催!
45年の歴史を誇るストリートブランド「STUSSY」。未だに新作は行列ができるほど入手困難でありながら、一方でOLDやARCHIVEアイテムの相場も上がり続けている稀有な存在だ。
STUSSY NOW & ARCHIVE FESではそんなSTUSSYの魅力的なアイテムを、2025年12月12日から21日までの期間中、抽選販売やアプリ内での通常販売にてお届けする。お得なクーポンも用意しているため、ぜひ存分に楽しんでほしい。