なぜStussyは飽きないのか? コレクター・アベヒロユキ氏が語る、"Old Stussy"と今狙い目の「裏コラボ」「チャプト限定」について
「いまだに見たことのないモノが出てくる」。そう語るのは、20年以上もStussyに魅了され続ける、"Old Stussy"コレクターのアベヒロユキ氏だ。なぜ彼は、そして世界中のファンはStussyに惹かれ続けるのか? "Old Stussy"にハマったきっかけや、80〜90年代のショーン・ステューシー時代の革新的なものづくり、今狙い目だという00年代以降のアイテムについての話を伺った。
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20年以上経っても「飽きない」のが"Old Stussy"の魅力

ーアベヒロユキさん(以下、アベさん)が初めてStussyと出会ったのはいつ頃ですか?
2000年前後ですね。ただ、当時はあまりにも多くの人が着ていたので、正直あまり好きではなかったんですよ(笑)。たまたま、知り合いがやってる古着と新品を半分ずつ置いているような店に行ったときに、初期のStüssyを見つけて。そこで現行品とは違う面白さを感じたんです。2000年代はコラボレーションアイテムが多かった時代なので、逆に、昔Shawn Stussy(ショーン・ステューシー)が手掛けていたシンプルなアートワークが、自分の目には新鮮に映ったのかなと。
ー当時、特に惹かれたアイテムはありますか?
これですね。このTシャツに出会っていなければ、Old Stussyをここまで集めることはなかったと思います。これは完全にショーンのアートワークで、当時こんな総柄のTシャツなんて他になかったので度肝を抜かれました。「こんなものも作っているんですね」と店員さんに話したら、「もっと色々ありますよ」と言われて、その“もっと”を探し求めることが現在まで続いている感じですね。

ショーン・ステューシーが描き下ろした波や花、クロスなどを並べた、Old Stussyの中でも人気の高いTシャツ。
ー80〜90年代のOld Stussyは、その頃にはもう注目されていたんですか?
Stussyは流行ってたけど、"Old Stussy"は全く流行ってなかったですね。だから、"Old Stussy"を探して古着屋をまわっても、どこにも売ってない。店側も売れないので置いていない、という感じでした。ただ、当時30代くらいの店員さんにはStussyのブームを通っている人が多かったので「探している」と伝えると、私物や倉庫に残っている在庫を出してくれたりして。そういった形で少しずつ集めていきましたね。

ーアベさんが"Old Stussy"と出会ってから20年以上が経ちますが、その情熱が冷めない理由は何だと思いますか?
本当に飽きないんですよ。なぜなら、今でも見たことないアイテムが出てくるから。"Old Stussy"を色々と集めて分かったんですが、Stussyはあの時代に少数生産で驚くほど多くのバリエーションを作っていたんですよね。同じデザインでもボディの色は一緒なのにプリントの色が違ったり、Tシャツのリブだけ色違いだったり。例えば、このTシャツにしても、生地に別注をかけてTシャツメーカーに依頼している。普通ならプリントするだけで十分なので、そこまでする意味はないんですよね。実際に大半のブランドはそうしてますし。

(左) Stussy (右) Comme des Garçons
当時Stussyからコムデギャルソンのデザインをサンプリングしたシャツが複数リリースされていた。
でも、80年代からそういった作り方をしている時点で、ものづくりへのこだわりが半端ない。ギャルソン(Comme des Garçons)をサンプリングしたアイテムとかもですが、あんなものやる意味ないんですよ(笑)。一般的にアパレルメーカーは既存のパターンを使って生産しますが、Stussyは80年代からパタンナーを雇って、一から型を起こしてオーダーしている。80年代にそれを実行していたというのがすごいですよね。
ーそれをサーフカルチャー発祥のブランドがやっていたというのが興味深いですね。
実は、ショーン本人にはそこまでサーフブランドという強い意識はなかったと思うんですよね。彼がサーフボードのシェイパーだったという経歴なので、そのイメージが先行するのは仕方ないんですが、おそらく服のデザインはそれとは全くの別物として考えていたのかなと。確かにサーフやレゲエのモチーフは多いんですけど、それはあくまで自身のルーツや好きなものを表現する手段の一つというか。

フォトTシャツも"Old Stussy"の中では人気の高いアイテムのひとつ。「写真のチョイスがそもそもいいですし、字がやっぱり上手い。Stussyって字がかっこいいブランドなんです(アベさん)」
Supremeの方がショーン・ステューシーの意思を継いでいる?

ー2000年代以降はストリートブランドとして、Supremeと比較する方も多いですよね。
今になって思うと、むしろSupremeの方がショーン・ステューシーの意思を継いでいたのかなと。ショーン・ステューシーは96年頃にStussyを離れるんですけど、その直後Stussyは過去最低の売上を記録したらしいんですよ。そこからブランドを立て直そうと頑張り、日本での人気が爆発し、全国で多店舗展開して...。その結果、「誰もが着ているブランド」「中高生が着るブランド」というイメージがついてしまった。
ショーン・ステューシーは「誰もが着るブランドになったら、そのブランドは終わりだ」と言っていたらしいんですよ。街のグループでお洒落な人が一人だけ着ているとか、クラブDJが着ているくらいで留まっているくらいがいいと。家に帰って、お父さん、お母さんが部屋着で着てるようなブランドになったら終わりだ、と(笑)。
ーたしかに、それくらいの規模感が一番かっこいいですよね。
一方で、Supremeの創業者であるジェームス・ジュビアはブランドの規模をコントロールすることを徹底してきた。ショーン・ステューシーはハイブランドやギャルソンのパロディをしたけど、Supremeは元ネタとなったブランドとオフィシャルにコラボしてるじゃないですか?あれは本来、突き詰めていけば、Stussyができたことでもあると思うんですよね。だって、2000年代の雑誌ではブランド紹介はStussyの方がSupremeより上に書かれることが多かったですし。Stussy、APE、balとかを挟んでSupremeみたいな感じだったけど、Supremeはあのスタンスを貫いて今の地位を確立している。もちろん、元々センスが良い、上手いっていうのは言うまでもないですけどね。

Supremeの創業者であるジェームス・ジュビアは90年代にStussy NYCの立ち上げを行っている。ブランド立ち上げ時に同じ生産背景を使っていたのか、初期のSupremeにはショーンフォントのタグが使用されているアイテムが存在している。
ーそう言われると、00年〜10年代はSupremeの方がショーン時代のStussyに近かったのかもしれないですね。ただ、最近はStussyもリブランディングが功を奏し、再び勢いが増しています。
2015年頃に社長がショーンの共同創業者の息子に代わってから、当時の方向性に戻していますね。最初の公式インタビューの一つで「Stussyをこれ以上大きくするつもりはない」と言っていたんですよね。だから、今は店舗の数をかなり絞っていて、国内店舗は10数店舗くらいしかないんじゃないかな。
裏コラボ、チャプト限定...2000年代のStussyは掘れば掘るほど面白い

(左から)NEIGHBORHOOD、HONDA、KAWS、福岡チャプト(ホークス)とのコラボTシャツ
ー"Old Stussy"に造詣が深いアベさんですが、ショーンが離れて以降のStussyはどういった印象ですか?
当時は買っていなかったんですが、今見ると面白い時代だったなと思います。2000年代はすごく精力的にコラボや限定アイテムをリリースしていた時期で、世間的には知られていない面白いコラボが多いんですよね。
例えば、2006年頃にはPalaceの創業者がデザインしていると言われているものがあるし、このピンクのTシャツは公には言われていないけどKAWSがデザインしている。KAWSとは2006年に正式なコラボも出てるんですが、これはそれよりも前のもので「裏コラボ」とか言われたりしてます。

ーこの年代には、この年代ならではの魅力があると。
コラボがすごく多かった時代なんですよね。今見ると本当に面白いデザインが多い。例えば、このFUKUOKAチャプト限定のTシャツもホークスとのコラボで面白いですよね。
当時は本当に「またコラボかよ」と思うほど頻繁にリリースされていたんですけど、実はコラボの数自体は多くても、個々のアイテムの生産数は少ないんです。チャプト限定のTシャツは比較的数がありますが、アウターになると10着くらいしか作られていないものもあったり。だから、今がマジで探し時なんですよ。価値が分かってるところは値段つけてきてますけど、まだまだ探せるし、価格帯も手に入れやすいものが多いです。

アベさんが手に取っているのがNEIGHBORHOODとの裏コラボTシャツ
ーまだ買えるとはいえ、どのようなアイテムが存在するのかを把握するのは難しそうですよね...。
ネットが発達してない時代なので、情報があまり残っていないんですよね。なので、今回のポップアップでは、この時代のアイテムに強いお店にお声がけしました。Stussyのゴリゴリのヴィンテージのアーカイブも展示しつつ、こういった2000年代のアイテムも楽しんでいただければな、と。
ーこの時代のアイテムといえば、やはりチャプト限定が有名ですね。
当時、日本の各チャプト(店舗)は大半がフランチャイズ経営だったので、運営会社ごとに特色が出てたんですよね。福岡チャプトはFUTURA2000の版権を持っていた会社が運営していたのでFUTURAとのコラボレーションが多いとか、Carharttの代理店が運営するチャプトではカーハートとのコラボが多い、原宿チャプトはこのアーティストと親交が深かったから関連アイテムが多い、といった具合です。

取材当日にアベさんが着ていたのは"Old Stussy"ではなく現行のStussy。「Stussyは現行で昔のデザインを復刻させるんですが、そのチョイスが面白い。今は90年後半のデザインの復刻が多いですね(アベさん)」
ーチャプトが国内に最大50店舗ほどあったわけですから、それだけ特色も豊かで、アイテムも多彩だったということですね。
ちなみに、今はチャプト限定アイテムは基本的には作られてないんですよ。昔は年に1回程度リリースされてたけど、リブランディングの際に禁止されて、オープンとか特別なときにしか出せなくなった。だから、2000年から2015年頃までのチャプト限定アイテムは本当に今のうちに探しておいた方がいいです。自分はOld Stussyでピックアップされがちですが、今だにこの辺りも、現行も買い続けてますから(笑)
STUSSYのルーツを辿るポップアップイベント
『STUSSY ARCHIVE COLLECTION』がアプリとFLAGSHIP STOREにて開催

アイコニックなデザインや、時代を彩った名作など、Stussyのアーカイブはストリートファッションの歴史を語る上で欠かせない存在だ。この貴重なアーカイブにスポットを当てたポップアップイベント『STUSSY ARCHIVE COLLECTION POP UP』をスニダンアプリ、SNKRDUNK FLAGSHIP STOREにて開催。アプリでは入手困難なアーカイブアイテムの抽選販売、FLAGSHIP STOREでは今回のイベントのために準備したアベヒロユキ氏の希少性の高い"Old Stussy"の展示や、Stussyに特化したショップを招き、記事でピックアップした2000年代のアイテムの販売などを行う。時代を超えたStussyの魅力を、そのストーリーとともに楽しもう。
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開催日程:2025年5月9日(金)〜11日(日)
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〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4-32-13 JPR神宮前432ビル B1F
営業時間:11:00〜21:00
