シミ汚れは「乾いた布で擦らない!」 クリーニング屋さんが教える"落とし方"の正解・不正解について
長く続いた厳しい冬の寒さが過ぎ去り、待ちに待った衣替えのシーズンがようやく到来。しかし、いざクローゼットの奥から春夏物を取り出してみると、気付かぬうちにできてしまったシミがあちこちに!捨ててしまうのはもったいないけど、そのまま着るのはかなり厳しい…。そんな苦い経験をした人を救うべく、今回は洗濯のプロであるBaluko Laundry Place 代々木上原に足を運んで「シミの落とし方」について詳しく話を伺った。

性質ごとに3つに分類される「シミの汚れ」
我々は衣類に付いてしまった落ちにくい汚れ全般を、なんとなく“シミ”と呼ぶことが多い。ではこのシミとはいったいどういったものなのだろうか?
「シミは大きく分けて①『水溶性汚れ』、②『油溶性汚れ』、③『不溶性汚れ』の3つに分類されるんです」
と語るのは、これまでスニダンにてさまざまな衣類・洗濯のお悩み解決記事に登場してくれた、Baluko Laundry Place(バルコ ランドリープレイス) 代々木上原 店長の岡田さん。
お話を伺った人

岡田優梨亜さん
株式会社OKULABが運営する「バルコ ランドリープレイス 代々木上原」の店長。クリーニング師やジーンズソムリエの資格を活かし、幅広い衣類のケア方法を日々発信している
詳しく伺うと、以下のようにまとめられるそうだ。
・①水溶性汚れ…水に溶ける汚れ
例)汗、ジュース、コーヒーなど
・②油溶性汚れ…油に溶けるが、水には溶けない汚れ
例)ファンデーション、口紅、ラー油、クレヨンなど
・③不溶性汚れ…水にも油にも溶けない汚れ
例)泥、墨汁など
「基本的にはこれら3つですが、中には水と油が混ざっている『混合性』という水と油の両方の処理が求められる汚れもありますね」
という。性質ごとに3つに分類されるとは奥が深いシミ・汚れの世界だが、私たちはさまざまなタイミングで衣類を汚してしまう危険に遭遇する。しかし当然ながら、いつでもすぐさまそれを脱いで洗濯機に放り込めるワケではない。そういったとき、どのような“応急処置”が取れるだろうか?

「正直、その場でシミのすべてを完全に落とし切るのは難しいです。ただ、①『水溶性』であろうが②『油溶性』であろうが共通して言えるのは、シミが付いたときはそれが繊維の奥底に浸透しないようにとにかく濡らして落とすことです。③『不溶性』の場合は水には溶けないので濡らすのではなく汚れの原因を払い落とすことが大事ですが、①②の汚れならまずティッシュなどで汚れをつまむようにして取り除いてから、濡らすこと。②は水に濡らしても溶けないので直接的な効果はありませんが、食べこぼしなどなら水分も含まれているので、やはり最初に濡らしてください」
「なにかを衣類にこぼしてシミ汚れができてしまったときは「(汚れを)取り除く」「溶かす」「叩き落とす」「洗い流す」という流れで対応していくんですけど、それを溶かすまでがスピード勝負。というのも過去に、こんな実験をしたことがあるんです」
ミートソースをつけたTシャツを
・A「その瞬間に洗濯する」
・B「一時間後に洗濯する」
・C「半日後に洗濯する」
「A『その瞬間』の場合だと下処理もなにもなしでも、洗濯だけである程度の汚れは落ちるんです。でも、B『一時間後』になるだけでもけっこう残ってしまいますし、C『半日後』まで置いてしまうともはや洗濯だけではぜんぜん落ちない。やっぱりいかにすぐ取り除くか?溶かすか?というスピードが重要です」
乾いた布で擦るのはNG!濡らしたハンカチで"トントン叩く"のが正解
たった一時間のロスが命運を分けるとは、なかなか厳しい現実だ。しかし家でできてしまったシミならすぐさまの対応も可能だが、例えばレストランで食事をしているときなどはどうするのが正しいのだろうか?
「出先でシミができてしまった場合も、汚れを取り除いてから濡らしてほしいです。やり方としては汚れの下に紙ナプキンなどを敷いて、その上から水で濡らしたハンカチやティッシュなどを使ってトントンと叩く。叩いている側で汚れを取り去るというよりも、その下に敷いたナプキンに汚れを“移す”というイメージです。その作業をするだけでも、後の処理が楽になりますから」

「やってしまいがちですが乾いた布で擦るのはNGです。それをしてしまうと、繊維の奥底に汚れを浸透させてしまうことになるので。例えばミートソースを服にこぼしてしまった場合、肉やトマトなどの固体を取り除いた後の残った液体を擦るのは逆効果なので止めたほうがいいですね」
たしかに焦って乾いたティッシュで服を擦り、シミが取れなくなったことを思い出した。ではすぐに水を用意できない場合はどうすればいいのだろうか?
「そういう時は、市販品のシミ取りなんかを使うのがいいと思いますし、私も持ち歩いています。ああいった商品にはシミを落とす効果のある液体が入っているので、その場ですぐに使うとかなり取れると思います」
「応急処置としてできるのはそのぐらいですね。あとはクリーニング屋さんに出していただいたり、自分でシミ落としにチャレンジしてみるのもいいですが、いずれにせよ対応が早ければ早いほどいいと私は思っているんです。繊維の奥底に汚れが浸透してしまわないうちに洗う。それが一番取れるんじゃないかなと思います。よく『一週間前にこのシミできちゃって…』と持ってこられるお客様もいらっしゃるんですけど、それだとなかなか落ちきらないことも多いので」

「だからご自宅で洗濯してみてからでもいいのですが、極端な話だと『汚れがついたその日のうちにクリーニングに出す』とかでもいいのかなと。応急処置+お洗濯まではしていただいてOKですが、漂白剤などを使用した自宅でのシミ抜きは逆効果につながります。というのも、その分の時間が経過してしまっているうえ、ついたシミの種類に合った“正しい処理”をしていなければ余計に汚れを固着させてしまうこともあるので。応急処置以外はなにもせずにお店に持ってきていただくのが、案外、一番汚れがよく落ちたりします」
台所用洗剤&歯ブラシで実践する、シミ落としの4ステップ
ここからは3つの性質ごとに、シミの落とし方について伺っていく。今回、コーヒーをこぼしてしまったパーカーを持参したので、岡田さんに実演をお願いしてみた。

「まずは『水溶性』について。食べ物のシミの多くはこれに含まれるんですけど、ケチャップやソースなんかだと『油溶性との混合タイプ』になります。いずれの場合も、まずは水で濡らしてください。こちらのパーカーもコーヒーのシミなので『水溶性』に分類されますね。詳しい手順は以下の通りです」
1.汚れのついた部分の下に布を敷く

2.濡らした歯ブラシで上からトントンと叩いて、汚れをタオルに移す


3.落ちにくい場合は中性洗剤(台所用洗剤)を薄めた液を歯ブラシに付け、さらに叩く


4.シミが薄くなってきたら、洗濯機にかけてOK


では、残りの2パターンの汚れはどのように対処するのが正解だろうか?
「『油溶性』に関しては、中性洗剤をシミに直接つけます。お化粧を落とす際に使うクレンジングオイルを活用するのもありですが、どちらも『油を溶かす効果』が見込めるので、そういったものを使いましょう。その後は『水溶性』の場合と同じで、歯ブラシを使ってタオルに汚れを移す工程を経てからの洗濯です」
「『不溶性』は『溶けない汚れ』なので物理的に落とすしかないです。水に浸けるまえに、まずはブラシなどで表面に付着している汚れを落としてください。落とさずに水に浸けてしまうと、泥などが水によって広がってしまうので。手順としては泥汚れに強い石鹸などで汚れを落としやすくしてからブラシでとにかく擦る感じですが、生地はどうしても傷んでしまいます…。表面の汚れを落とした後は、よくゆすいでから洗濯機にかけてください」
Balukoのお店でシミを落とすなら、おすすめはどのコース?
ここまでは家庭でできる応急処置とその後の手順について伺った。では一般的にクリーニング店では、どんな方法でシミを落としているのだろうか?
「クリーニングの場合、提携先の工場で専用の道具を使ってシミに合わせた液体(洗剤)を汚れに当てて落としていきます。あとは振動の力を使って汚れを浮かせて落とすといった漂白の方法なども使いますが、いずれにせよお客様がお持ちになった衣類を工場の職人が『このシミだったらこれだな』と判断した適切な手法で対応しますね。また、シミが層になっている場合は『まず油性汚れを落としてから、次の水性汚れを』というように何段階かに分けて落とすことも。当店では、通常のクリーニング料金プラス330円からです」
「また、Balukoの機器を使ってシミを落としたい場合は、汚れを取り除いてから濡らすなどの応急処置を行った後、洗濯乾燥機のご利用がおすすめです。洗濯乾燥機には、大きく分けて『スタンダードコース』『ナチュラルコース』『羽毛ふとんコース』『モンベル撥水コース』の4つのコースがあります」

「なかでも、シミ抜きの応急処置を行なった後は『スタンダードコース』『ナチュラルコース』がおすすめです。『スタンダードコース』は日常の洗濯物を洗うのに特化したコースで、Balukoオリジナル洗剤『peu(ピウ)』を使っています。香料や着色料は一切使用せず、植物由来の合成界面活性剤と天然の純石けん分のはたらきで汗や皮脂汚れをしっかり落とし、衣類にも肌にもやさしいのが特徴です。一方で『ナチュラルコース』は大阪の老舗石鹸メーカー・木村石鹸さんの『SOMALI(ソマリ)』という植物由来の液体石鹸とクエン酸が主成分のリンス剤(柔軟剤のようなモノ)を使うコースですが、お子様やお肌が強くない方の洗濯物などでしたらこちらがオススメ。Tシャツなどに代表されるコットン系のアイテムや黄ばみを予防したい衣類の洗濯にも向いています。お肌にやさしい洗剤って洗浄力が弱いように捉えられがちですが、液体石鹸なので泡立ちも泡切れもよくて汚れをしっかりと落としてくれますよ」
「『羽毛ふとんコース』はその名の通り羽毛ふとんに加えてダウンジャケットなんかも洗っていただけますし、『モンベル撥水コース』は撥水性能の落ちてきたシェルジャケットなどにオススメです」
参考記事『コインランドリーで撥水効果が復活? 都内初の”モンベル撥水コース”の効果を検証!』「日常の衣類を洗濯する時は『スタンダードコース』『ナチュラルコース』のどちらでも大丈夫ですが、『ナチュラルコース』は低温乾燥するコースなので、縮みが気になる衣類でしたらそちらをお選びいただくのがいいんじゃないかなと思います」
服の汚れ・クリーニングの"あるある問題"Q&A
最後に、洗濯や衣類の汚れなどに関して多くの人が"あるある"と感じる問題・疑問について、岡田さんに聞いてみた。

Q.1:洋服についてしまった血はどのように落とすべき?
A:岡田さん「血液は『水溶性』ですが、タンパク質が含まれているため要注意。卵と同じでお湯に浸けると固まってしまうので、洗う時はお水を使いましょう。また、タンパク質を分解してくれる弱アルカリ性の血液専用洗剤がオススメですが、手洗い用石鹸もアルカリ性なので代用できます」
Q.2:汚れた衣類を「自宅で頑張って洗濯する」or「諦めてクリーニング店に持ちこむ」のジャッジに基準はある?
A:岡田さん「『汚れの種類がどういったものか?』ではなく、その衣類が『洗濯できるのか?』のほうが大事な基準になってくると思います。例えばニットやシルクなど、洗濯機で気軽には洗えない素材もあります。なのでそもそも洗濯できないような衣類やお高めのアウターなんかは、クリーニング店にお願いした方がいいかもしれません」
Q.3:部屋に飾っておいたレア物のTシャツやキャップがホコリまみれになってなかなか落ちない…。適切な対処法は?
A:岡田さん「ホコリは『不溶性』で『擦る』『引き剥がす』しか落とす方法がないので、粘着テープなどで物理的に取り去ってください。軽いホコリならブラシで払い落とせますが、長期間飾っていた場合は繊維に絡まっていることも多いので、ブラッシングしようとして逆に繊維の奥に押し込んでしまうことも。やはりオススメは引っ付けて剥がす粘着テープですね」
Q.4:汚れた衣服は個別で洗濯機にかけた方がいい?
A:岡田さん「下処理が終わったあとにいったん水ですすいでもらえれば、洗濯の際に分ける必要はありません。というのも洗剤には『汚れを分解させて繊維から剥がして浮かしたうえで、再汚染を防ぐために包む』という役割があります。だから絵の具で汚れたものや泥汚れなどを除けば、洗剤を適切に使えば洗濯機で汚れたものを洗っても他の衣類には移りません」
まとめ
プロ目線で語られながらも、一般の人が気軽に試せる実用的なアイデアに詰まった岡田さんのお話は大変役に立ちそうだ。長い時間が経ってしまった汚れを"まっさらな状態"に戻すのは難しそうだが、これから服に食べ物をこぼした際などにはすぐさまこれを実践して「シミ知らずの人生」を送っていきたい。

住所:東京都渋谷区上原3-29-2
TEL:03-6407-8415
営業時間:24時間(セルフランドリー)、9:00-20:00(クリーニング・洗濯代行・カフェ)
定休日:なし(年末年始・夏季休業あり)
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