【SNKRDUNK × BERBERJIN】こんなバットマンTシャツ見たことない!? 映画『The Dark Knight』のコラボTシャツ誕生秘話

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【SNKRDUNK × BERBERJIN】こんなバットマンTシャツ見たことない!? 映画『The Dark Knight』のコラボTシャツ誕生秘話について

今、映画をモチーフにしたTシャツの人気が加熱している。誰もが知るメジャーなタイトルから、ひと握りのファンが楽しむマニアックなタイトルまで、その選択肢はさまざまだ。とはいえ、自分が好きな映画をテーマにした一着を見かけたときに「なんか違うな…」と感じてしまった経験がある方は少なからずいるだろう。その映画を愛するファンはもちろん、ヴィンテージTシャツ好きにも手に取ってもらえるような一着を作るためには、どの場面を選ぶかの選球眼や、デザインの配置、プリントする技法などクリアするべき条件は多い。

今回、スニダンでは歴代のバットマンシリーズの中でも特にファンが多い『The Dark Knight(ダークナイト)』をテーマにしたコレクションを展開する。前回に続き、タッグを組んだのは原宿のヴィンテージショップ「BerBerJin(ベルベルジン)」。さらに、仙台にファクトリーを構えるプリントのスペシャリスト集団「AZOTH(アゾット)」にも協力を仰ぎ、スペシャルなTシャツ2型とフーディー1型を製作した。その製作に携わった関係者が「今まで見たことないバットマンのTシャツができた」と話すアイテムの出来栄えは? ベルベルジンの岡部さん、アゾットの伝野さん、平野さんの3名に話を聞いた。


今回インタビューした人

岡部 義彦さん

BerBerJin YUHODO 副店長

"べぇ"の愛称で親しまれる「ベルベルジン遊歩道店」の名物スタッフ。古着はもちろん、映画や音楽にも精通する。大のケンドリック・ラマー好き。取材当日はジョン・コルトレーンのヴィンテージTを着用

今回インタビューした人

伝野 亘毅さん

AZOTH 生産部 広報主任

アパレルブランドの販売員やEC販売管理を経て、2015年入社。現場や営業職を経て、現在は広報の傍らOEMや音楽/アニメのイベントグッズを手がける

今回インタビューした人

平野 友也さん

AZOTH デザイン部 部長

デザイン学校を卒業後、別のTシャツ会社を経て、2006年入社。裏方として様々なヤバTEE企画に携わる。趣味はTシャツの収集と研究

目次


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interview01_BerBerJin
公開時にスクリーンで観た『ダークナイト』。あえてバットマンを主役にした理由

ーまずは今回のスニダンからのオファーを受けていただいた理由を聞かせてください。

ベルベルジンとしては、弊社の藤原がいろいろなブランドさんのディレクションやコラボをやっているのですが、僕ら若い世代ももっと存在感を示していくべきだなとはずっと考えていました。スニダンさんからのお誘いはすごくいい機会だったので、前回のスターウォーズやマーベル含めて、今回も僕らの世代だけでやらせていただきました。

僕は今年31歳になるので、『ダークナイト』はリアルタイムで観ていたんです。その意味では、昔のタイトルをただ懐かしむのではなく、何か新しいものが作れるかなと。ヴィンテージで見かけないもの、さらには僕ら自身がリアルに愛着が持てるものを作りたいという想いは、前回の時から変わっていません。

ー今回の『ダークナイト』というタイトルについての印象はいかがですか?

何度も観返しているくらい、ものすごく大好きな作品です。あの冒頭の銀行強盗のシーンからグッと掴まれますよね。公開当時、父親と一緒に映画館で観た記憶があります。クリストファー・ノーラン監督による2008年の映画なんですけど、ヒース・レジャーがほぼ主役なんですよね。ヒーロー映画のはずなのに、ジョーカー役のヒース・レジャーがやっぱり印象に残るじゃないですか。

そのせいか、古着に関しても、バットマンというよりはジョーカーにフォーカスを当てたアイテムのほうが多いんです。その中にはすでに良いものがたくさんあるので、どうせ作るなら違うものがいいなと。だから、今回は逆にバットマンの方にフォーカスを当てました。古着のバットマンモチーフのTシャツって、個人的には良いと思えるデザインのものがあまりないんですよね。

デフォルメし過ぎてなんか可愛くなってしまったり、アメコミのタッチそのままだったりとか。今回の企画の出発点としては、とにかく”バットマンでかっこいいTシャツがあったら自分が着たい”という個人的なアイデアから始まっています。僕は『ダークナイト』にはすごくいろいろな面があると思うんです。バットマンとして苦悩する中に滲むクリスチャン・ベールの人間味も好きなので、あのちょっとダークな感じのバットマンをイメージして作りたいなと。

「Tシャツの中にストーリーを込めたかった」。ダークな世界観をシルクスクリーンで表現

ー今回はTシャツ、ロンTの2型をシルクスクリーンで、フーディーをインクジェットで製作したとのことですが、それぞれのアイテムの出来栄えを振り返っていかがですか?

まず、Tシャツはうちの青木というバイヤーが希望したデザインで作りました。このデザインであれば、普通はおそらくインクジェットを使ってプリントすると思うんですよ。あえてシルクスクリーンで刷りつつ、この夜景のキメの細かさが出せるのがもうやばいなと。このクオリティをシルクスクリーンで表現できるということにすごく感動しましたね。アゾットさんに頼んで本当によかったです。

しかも、キメ細かさだけじゃなく、街の表情みたいなものがしっかり映っているように感じるんです。”窓から見えるゴッサム・シティの夜景”と”バットマンの後ろ姿”が溶け合って浮いてるように見えるし、実際に映画のカメラが捉えたレンズ越しの情景のように見えるんですよね。Tシャツの中にちゃんとストーリーがあるという感じが上手く出せたかなと思います。

ゴッサムの街並みを望むバットマンのシルエットを9版の”特色分解”と呼ばれるシルクスクリーンのプリント技法によって表現。プリントサイズを大きめに配置して没入感を演出しているのもポイントだ

黒いTシャツのボディにプリントするために採用されることが多い”特色分解”では、ボディの黒地を塗りつぶさずに黒を表現する。そのため、プリント部分とボディが馴染み、”溶け合って”いるように見えるのも魅力

ー幻想的な印象のTシャツに比べて、次のロンTはもっとストレートにバットマンを捉えた印象のデザインです。

バットマンって石像の上に立って、街を見下ろしているみたいなイメージあるじゃないですか。ロンTのメインのデザインにするバットマンは、そんなイメージの素材を選ばせてもらいました。パッと見は全部ダークトーンに見えるかもしれませんが、よく見ると影のグラデーションがすごく繊細ですよね。

あとは、フロントの背景と袖にプリントしたコウモリがちょっとした裏テーマかもしれません。元々、この背景のコウモリとバットマンは別々の素材だったのですが、プリント工場のアゾットさんがそれぞれを組み合わせてデザインしてくれました。実は僕が最初に提案したデザインはボツになっているんです…。洞窟から渦を巻いて出てくるコウモリの素材を背景にプリントするアイデアをアゾットさんに送ったら『いや、もっとシンプルにしたほうがかっこいいですよ』と(笑)

コウモリを引き連れて正面を見据えるバットマンの姿を大判サイズでプリントしたロンT。袖にはモノトーンカラーのコウモリを配置している。「めちゃくちゃクオリティが高い」と岡部さんが絶賛する、ヴィンテージのハーレーダビッドソンのロンTにプリントされたフレームパターンから着想したそう

「なんか油絵で描いたようなマットなニュアンスもあってかっこいいですよね」と振り返る岡部さん。ダークトーン主体ながら、グレーやブルーの色味も入り混じる絶妙なカラーでプリントされている

ー最後のフーディーはどういう風に出来上がったのでしょう?

TシャツとロンTは一着ずつ作ったし、『どうせならフーディーも作りませんか?』という提案がスニダンさん側からありました。そういえばジョーカーのフーディーってあまり見かけないよね、という話になって製作した一着です。代表的なジョーカーのポートレートを使いつつ、レイアウトで変化を付けたいなと。ヴィンテージのドアーズのTシャツで見たことがある2×2の配置でいろんな表情のジョーカーを並べてみたら、彼の多面性が上手く表現できて、見たことないデザインになったと思います。





バックプリントには、ジョーカーが「これが俺の名刺だ」とギャングの前に置いて帰るときのカードと一緒に、彼の最も有名なセリフをプリントしています。「口が裂けるほど笑わせてやる」という訳になるんですかね。話していたら、またちょっと観返したくなってきました(笑)。

グラフィックは劇場の告知用のポスターに使われたビジュアルの手の部分だけを切り取って組み合わせています。ポスターをそのまま素材として使うのは他にもあると思いますが、あえてその手の部分だけを使わせてもらいました。ジョーカーをテーマにして新しくデザインするのはハードルが高かったんですけど、いい感じにひねれたかなと思っています。ぜひTシャツと一緒に手に取ってほしい。自分で着て洗って経年変化を楽しんでもらって、いずれまたそれが古着になっていくと最高ですね。

interview02_AZOTH
シルクスクリーンはひとつの手段。プリントTシャツの価値を上げていきたい

ー今回の企画ではベルベルジンの岡部さんから、シルクスクリーンでやるならアゾットさんに頼みたいというリクエストがあったようです。やはりシルクスクリーンという手法に自信はあるのでしょうか?

実は、僕らプリントする側としてはシルクスクリーンだからいい、インクジェットだから駄目といった方法論についてのジャッジをするつもりは全くないんです。プリントの技術そのものが上がっているので、どちらの方法でも同じ仕上がりを目指すことは可能なんです。



その前提を踏まえた上で、「それでもシルクスクリーンでやりたい」という今回のような企画にはすごく共感します。例えば、アジア製よりアメリカ製がいいとか、復刻よりオリジナルのスニーカーがいいとか、そういう見た目だけじゃ分かりにくい部分へのこだわりも、ファッションの大事な側面じゃないですか。プリントの技術で言えば、シルクスクリーンもそれに当たるんだと思います。

僕ら的にはやっぱりプリントTシャツの価値というものをできるだけ上げていきたい。「安く早くやるのが工場でしょ?」と思っている企業さんも少なくない中で、うちのプリントにちゃんと価値を感じてくれる人たちと、適正な価格で適正なものをお客さんに提供していく機会をできる限り増やしていきたいですね。うちの平野がそういう試みを他社さんといろいろやってきてくれた流れもあって、僕もそれに乗っかって楽しんでいる感じです(笑)





ー今回、プリントの技術面だけでなく、デザインやコストを含めた上でのクオリティ全体の方向性をアゾットさんに舵取りしていただいたと聞きました。今回のような企画でアゾットさんが重視するポイントはあるのでしょうか?

技術的なことよりも大事なことは、やっぱりお互いのやりたいこと、できることのすり合わせだと思うんです。ベルベルジンさんとスニダンさんの意図や予算感を踏まえた上で、僕らが何を提供できるのかということですよね。それが可能なのは、僕らがデザインとプリントの両方に慣れているからというのは前提としてあるのかな。

その両方を知っていればデザインのこともわかるし、それをプリントに落としたときにどう再現できるかもわかる。だからお客さんによってはデザイン会社に依頼して、そこから発注してくる方もいるんですけど、うちはその必要がないんです。もうこの建物の中で完結できるのも、うちの強みかなと思います。

「版数が多ければいい訳じゃない」。“フェードした感じがかっこいい”をお互い共有できるかどうか

今回のようなブラックのボディに特化した特色分解のプリントをやり始めて5年ぐらい経つんですけど、最初ははっきり色がうまく出なくて苦労した時期もありました。例えば、5版のプリントTシャツを作るからと言って、プリントする回数が5回とは限らないんです。今回のような黒地のTシャツとかは1回プリントするだけだとまだ下地が透けるので、2回重ねたりすることも多いですね。

ーつまり、スペック上の数字よりも手間がかかっているということですよね。

そうですね。あと、特色分解の難しさとしては、1色だけ色味を変えてほしいっていう修正が入ったときに、5版ぐらいを併せて作り直さなきゃいけないんです。その1色のためだけに影響されてそうせざるを得ない。そういう面倒くさいリスクのあるやり方というか。本当に何回も版を作り直さないと、量産できる体制までたどり着けないこともあります。





ーベルベルジンの岡部さんは特にTシャツの夜景の刷り上がりのクオリティに感激していました。

僕らは最大15版を使うフルカラーにも対応していますが、プリントTは版数が多ければいいという話でもないんです。上代はどれだけ高くなってもいいというオーダーがあるなら、全部吸収してやりますけど、買ってくれる人のことを考えたら必ずしも正解ではないですよね。

それこそ、古着がちょっと好きな人なら、今回のように「ちょっとフェードしてプリントとボディが馴染んでいる感じのほうがいいに決まってるでしょ」っていう感覚をお互いに共有できるかどうかのほうが大事じゃないですか。みんなプリントの枠は四角が当たり前だと思ってるんですけど、その枠が消えてフェードして背景に馴染んでいるほうが今っぽいし、単純にかっこいいよねと。僕ら自身もヴィンテージTが好きで結構集めているので、そういう部分を追求できるように意識はしていますね。





ーベルベルジンさんとスニダン側が描いていた理想のプリントのイメージを先回りして具現化していただいたようです。最後にその他のポイントもあれば教えてください。

Tシャツに関してはUS規格のボディーを選びつつ、ちょっと色を落としてこなれた風合いになるように、製品洗いの加工を提案させてもらいました。そこもちょっと工夫した感じですね。そのTシャツの"新品感"みたいなのが強調されてしまうと、プリントのネタがいくら良くても「なんかちょっと違うな」って感じに受け取られると思うんです。僕らが企画に関わらせてもらうのであれば、手に取るお客さんには「新品だけどなんか当時っぽい雰囲気だよね」と感じ取ってもらいたいんですよね。




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BerBerJin YUHODO
1998年の創業以来、アメリカでの買い付けにこだわり続ける東京・原宿にある老舗ヴィンテージショップの新店として、2021年9月にオープン。映画や音楽、アニメや漫画、アート系のグラフィックTシャツの品揃えは特に充実している。他にもニューヨーク・ヤンキースの関連アイテムや、サンフランシスコを象徴するダービージャケットなど、アメリカの各都市のリアルな空気感を感じさせるアイテムを豊富にセレクト。
@berberjin_yuhodo

AZOTH
シルクスクリーンを中心にしたTシャツ制作を総合的に手がけるデザインファクトリー。人気タイトルとのコラボTのプリントを数多く手掛けている。企画、デザインからプリントまで一気通貫で手がける設備を持つ自社工場は、仙台・卸町にある築50年の物件をリノベーション。自社で運営するアートギャラリー「GALLERY A8T(ギャラリーエイト)」も施設内に併設。
@azoth_designfactory

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