今こそ履きたい「ティンバーランド」の"イエローブーツ"! 50年以上も愛され続けてきた理由とは?|コラム

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今こそ履きたい「ティンバーランド」の"イエローブーツ"! 50年以上も愛され続けてきた理由とは?|コラムについて

90年代リバイバルのファッションが定着して久しい今、改めて注目されているのが「ティンバーランド」の"イエローブーツ"。一時期はヒップホップ好きが愛用するイメージが強い一足だったが、最近はファッションの趣味嗜好を問わず幅広い人が手に取っている。

ではなぜ「ティンバーランド」のイエローブーツはストリートで支持されるようになったのだろうか?今回は同ブランドの歴史を振り返りながら、その魅力を探っていく。

目次

森林作業者のためのブーツをブランド化。防水性への飽くなき追求を形に

そもそも、多くの人を熱狂させるブランドという存在はどのようにして生まれるのだろう? その問いの答えのひとつは「ティンバーランド」のルーツの中に隠れている。画期的なプロダクトの開発なくしてブランドは生まれない。同ブランドの歩みを辿ってみると、その普遍的な事実に気付かされる。

同ブランドの看板モデルとして知られる、通称"イエローブーツ"。正式名称は「6インチ プレミアム ウォータープルーフ ブーツ」だが、実はその当初のモデル名が「ティンバーランド」だったことは意外と知られていない。つまりティンバーランドはイエローブーツというプロダクトありきで始まったブランドなのだ。

via:timberland

ボストンのいちシューズメーカーだった頃の面影を残す工場の写真。1977年のカタログから

創業者はマサチューセッツ州のボストンで靴屋を営んでいたネイサン・シュワーツ。1952年に「アビントン シュー カンパニー」という靴会社の株を購入した時にその歴史は幕を開ける。ネイサンが目指していたのは、ニューイングランドと呼ばれるアメリカ北東部の過酷な野外で働く労働者のためのタフなブーツの開発だった。

開発時に最も重視したポイントは防水性。息子であるシドニーとともに日夜その難題に取り組むことになる。試作したブーツは水を貯めたバケツの中に週末の間沈められ、月曜の朝に浸水する箇所をチェックしていたという逸話も残るほどの熱の入れようだった。

via:timberland

アメリカに移住したユダヤ系ロシア人のネイサン・シュワーツ。二人の息子であるシドニー、ハーマンとともに家業の靴作りを大きく発展させていく

1973年、ようやく今のイエローブーツの原型が日の目を浴びる。プラスティック成形で用いられるインジェクション製法を転用し、防水性を大幅に高めることに成功したのだ。それは防水加工を施したレザーアッパーとソールを直接圧着することで、縫い目から水が浸入してしまうという手縫いのブーツの課題を解決した一足だった。

森のぬかるみを歩いても水が染みこまないブーツは森林業者だけでなく、ニューヨークの建設作業者の間でも大ヒット。小麦色のウィートカラーの見た目から"イエローブーツ"という愛称で親しまれるようになる。その時に名付けたモデル名こそが「ティンバーランド(森林地)」。よほどの評判だったらしく、1978年には社名もその名称に変更することになる。ブランドとしての快進撃が始まる前夜だ。

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当初のイエローブーツは6インチではなく、最上部にDリングのフックを配置した8インチ。今親しまれている6インチは1976年に誕生した

最初にファッションとして広まったのはミラノ。90年代にはニューヨークのストリートを席巻

都市部の建設作業者にも人気を博したとはいえ、イエローブーツはあくまでもワークブーツ。そんなイエローブーツの人気がファッションシーンに飛び火したのは、実はアメリカではなくイタリアが最初だった。

1980年代前半、イタリア・ミラノでは"パニナロ"と呼ばれるアメカジスタイルが若者を中心に大流行。彼らの典型的な着こなしはモンクレールのダウンにリーバイスのジーンズを合わせるスタイルだ。足元にはヤレた風合いのイエローブーツを合わせるのがお約束。エレガントな革靴を作るメーカーが数あるイタリアにおいて、あえて粗野なイエローブーツを選ぶことは若者なりの反抗の意味もあったのかもしれない。

その人気は街中で"ティンバーランド刈り"を巻き起こすほど過熱。その盛り上がりを体感した航空会社の客室乗務員たちはアメリカで大量にイエローブーツを買い込み、ミラノの地で高値で転売していたという。客室乗務員たちはミラノ流のアメカジスタイルをアメリカ本国に伝える、メッセンジャーの役割も担うことになる。

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カラフルなモンクレールのダウンやストーンアイランドのニットにリーバイスのデニムを合わせる、イタリア流のアメカジスタイルが"パニナロ"の特徴。裕福な家庭の若者が多く、ブランド志向も強かったという

そんな海外の最新ファッショントレンドをいち早く取り入れたのは、90年代のニューヨークのドラッグディーラーたち。一般的なニューヨーカーよりも懐が暖かい彼らは地元のファッションリーダー的な存在でもあった。屋外で立ちっぱなしで過ごす時間が長い彼らにとって、スニーカーよりタフで暖かいイエローブーツは機能面でも頼りになる一足だったに違いない。

そんなドラッグディーラーのハードな日常をリリックの中で描写するのがラッパーたちだ。愛用していたアーティストの名を挙げると、ノトーリアス・B.I.G.やウータン・クラン、ナズやモブ・ディープ、ブラック・ムーンなどきりがない。"ティンブス(=Timbs)"という呼び名でリリックにも頻出した。タフなギアの代名詞として、ヒップホップのアーティストたちにも深く浸透していたことがうかがえる。

よく引用されるのは"ビギー"の愛称で親しまれたノトーリアス・B.I.G.の着用カット。「Friend Of Mine」の曲中には"I keep them in flavors like Timbos and Girbauds"というリリックも。「マリテ+フランソワ ジルボー」のパンツと合わせる着こなしも流行した

カンフーをモチーフにした独特の切り口による曲の数々でヒップホップの勢力図を一気に塗り替えた、スタテンアイランド出身のウータン・クラン。レイクウォンによる3rdヴァースは"Rough like a timberland wear"のフレーズから始まる。曲だけでなく、PVのビジュアルの強烈さも未だに色褪せない


ブルックリン出身の3人組、ブラック・ムーンが1993年にリリースした「Buck Em Down」。ミリタリーウェアをメインに合わせるハードな着こなしも時代を象徴している。バックショットによる1stヴァースには"I get the loot from the man kick his ass with my timberland"なるリリックも出てくる

1998年、シドニー・シュワーツから会社の経営を受け継いだのが息子のジェフリー・シュワーツ。創業者のネイサンの孫に当たる彼はアウトドア路線からカジュアル路線に大きく舵を切る。その成果のひとつが異なるショップやブランドとのコラボレーションだ。

最初の相手はニューヨーク・ソーホーにあったシューズショップ「David Z.(デビッド ジー)」。同ショップはあの「Kith(キス)」のロニー・ファイグがキャリアをスタートした店でもある。それまでは限られたカラーパレットしかなかったイエローブーツをシックなグレーカラーで別注。1998年8月にリリースされたその一足の噂はすぐに広まり、州外からも客が店に押し寄せたという。

2000年代以降、コラボレーションはさらに加速し、ステューシー、シュプリームといったストリートブランドやルイ・ヴィトンなどのハイブランドとのタッグで脚光を浴びる機会も増えている。イエローブーツの誕生50周年となる2023年には、エディソン・チャンやサミュエル・ロスなどの著名デザイナー6名からなる"Future Makers"のプロジェクトも披露された。

イエローブーツの誕生50周年となる2023年末にリリースされたシュプリームとのコラボモデル。ストリートでよく見かけるチェッカープレートを型押ししたアッパーが同ブランドらしい。パンツの裾をクッションさせてシュータンに引っ掛ける履き方も90年代のNYを彷彿させる

時代を経ても色褪せないウィートカラー。機能面も魅力的なイエローブーツ

発表から50年が経った今でも新鮮に見えるイエローブーツ。ボストンからミラノを経由し、ニューヨークの地で確固たる支持を勝ち得た一足は、今では単なるブームを超えて世界中の人々にとっての足元の選択肢になっている。その根底にはワークブーツとしての性能を愚直に追求してきたティンバーランド社の姿勢が明確にあったからに他ならない。

ここからはイエローブーツというプロダクトそのものの魅力にも迫っていきたい。カラーバリエーションはいくつかあるが、真っ先に手に入れるべきはやはりウィートカラーだろう。単なるベージュともライトブラウンとも違う独特の発色とマットな質感のヌバックレザーは、他のメーカーでは見かけない表情が魅力的な素材だ。

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通称イエローブーツ、または6インチブーツ。「6インチ プレミアム ウォータープルーフ ブーツ」 ¥28,600(税込み)

ちなみに、今でこそ同ブランドの顔となったウィートカラーのヌバックレザーだが、当初はティンバーランド側に色のこだわりはなく、同じスペックで最も確保しやすかったレザーがたまたまウィートカラーだったのだそう。

防水加工を施したアッパーのヌバックレザーは上述のインジェクション製法でミッドソールと圧着しているため、高い防水性は健在だ。細かい部分だが、アイレットにまで防錆加工がされているのもポイントが高い。近年はアッパーとライニングの間にプリマロフトを封入することで、冬場もより快適に穿けるようにアップデートされている。

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アウトソールに使用するナチュラルラバーは衝撃吸収性に優れているだけでなく、その調達先にも配慮。サステナブルに管理されたゴム農園から調達し、労働者や地域社会の保護を促進している。弾性のあるラバーのアウトソールに加えてクッショニング性能が優れたインソールを使用しているため、スニーカーに履き慣れた人でも違和感なく移行しやすい一足だ。

履きこなし方としては、90年代にならってバギーなデニムの裾をためて履くのもいいし、フレア気味のデニムを履き口に被せるように履きこなしても今っぽい雰囲気になるだろう。パンツの裾をシュータンに引っ掛けるか、すべて被せるかは好みでOK。いずれにせよ、今のタイミングであれば、パンツのレングスはある程度長いものを選んだほうがサマになりそうだ。

シュプリームやACWなどコラボも豊富! おすすめイエローブーツ10選

「まだ試したことがない…」という人にはやはり定番のウィートカラーを薦めたいところだが、多彩なコラボモデルの存在も魅力的だ。数多くのブランドと協業してもその魅力を失わないのは、イエローブーツのポテンシャルが高く、自由にカスタマイズする余白を備えているからだろう。最後に編集部が選んだおすすめモデルも紹介しておこう。

Timberland 6in Premium Boots "WHEAT"

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きれいに履いても、ラフに履いても絵になるブーツはなかなかない。他のブーツにはない存在感にあふれた一足だ。サイズ選びは普段のスニーカーサイズの0.5cm〜1cm下を目安にしよう。

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Timberland 6in Premium Boots "BLACK"

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定番のウィートカラーとはまた別の魅力があるブラック。このモデル特有のヒップホップ感が薄れるので、90年代の文脈を抜きにしてシックに履きこなしたい人にもハマるはず。

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Timberland Heritage 6 Lace Up Waterproof Boot "Dark Blue"

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ワークブーツ然としたイエローブーツもネイビーを選べば、ほんのり上品な雰囲気を演出できる。チノパンを合わせてトラッド寄りにコーディネートしたくなる一足だ。

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Supreme × Timberland Diamond Plate 6inch Premium Waterproof Boot "Wheat"

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恒例となったシュプリームとのタッグの中でも、イエローブーツは久々のリリース。スケーター目線が垣間見えるチェッカープレートのエンボス加工がグッド。全3色。

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BEAMS別注 Timberland 6inch Premium Boots Vibram GORE-TEX "Wheat"

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オリジナルに敬意を払いつつ、ビームスらしいクレイジー仕様のウィートカラーが技アリ。ゴアテックスを搭載することで、より天候を気にせず履けるようになったのもポイントだ。

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WHIZLIMITED × mita sneakers × Timberland Premium 6inch Boots Vibram GORE-TEX

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ウィズリミテッド、ミタスニーカーズと手を組んだトリプルコラボ。アッパーのフロント部はエイジングが期待できるスペシャルなスウェード素材に変更。こちらもゴアテックス搭載だ。

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CLOT × Timberland 6in Boot "Olive"

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イエローブーツ誕生50周年を記念した「FUTURE 73」の第1弾はエディソン・チャン率いるクロットとコラボ。オリエンタルなタイガー柄と漢字の刺繍がユニークな一足。

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thisisneverthat × Timberland 6inch Boots "Beef & Broccoli"

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ニューヨーク感満載の"ビーフ&ブロッコリー"、通称ビーブロの配色でアレンジしたのはディスイズネバーザット。ありそうでない仕上がりのイエローブーツを求める人にはピッタリ。

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A-Cold-Wall* × Timberland Future 73 6Inch Boot "Nature"

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サミュエル・ロスの手によって、ミニマルな雰囲気漂う一足に生まれ変わったイエローブーツ。サイドジップなので着脱も簡単。モード寄りのコーディネートとの相性も期待できそうだ。

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NBA × Timberland 6 "Black Gum"

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東西リーグのチームロゴを大胆にプリントしたNBAとのコラボモデル。ブラックで統一しているので悪目立ちする心配もなし。バスケフリークにはたまらない一足だろう。

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おわりに

イエローブーツを愛用する人の話を聞くと「自分のライフスタイルを象徴している」「武装したような感覚になる」とそれぞれに独自の言葉が飛び出してくる。ヒップホップのアーティストを見習ってキレイに履くのもいいし、気兼ねせずに履き込んで味を出してもかっこいいモデルだ。少しでも気になった方はぜひ自身の足を通して、その魅力を体感してみてほしい。

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