洗濯のプロに聞く"デニムの正しい洗い方" シュプリームの定番ジーンズで実践!|コラムについて
誰もがクローゼットに1〜2本は常備しているであろう「デニム」。数あるパンツの中でも最も馴染み深いアイテムである反面、意外とハッキリしないのが、その「洗い方」だ。そもそもデニムは洗うべき? 洗う頻度は? 洗濯機はOK?などの疑問を抱えながら、日々、なんとなく洗濯している方は多いはず。
今回、そんな疑問を解決すべく編集部が訪れたのは、東京・目黒にある「フレディ レック・ウォッシュサロン トーキョー」。数々のメディアにも出演する同店の鈴木さんに、デニムの正しい洗い方を実演していただいた。サンプルにしたのは編集部私物のシュプリームの一本。お気に入りのデニムを色落ちさせず、きれいに穿きたい方は必見だ。
「白Tシャツの"黄ばみ"落とし」についての記事はこちらお話を伺った人
鈴木 新さん
フレディ レックの商品企画を担当。同店オリジナルの洗濯グッズの開発に携わる傍ら、洗濯のプロとしての知識を活かし、洗濯に関するハウツーも精力的に発信中
\ 今回洗ったのはこの一本! /
"デニムは洗濯NG"は間違い。「どう考えても洗ったほうがいい」
「デニムというアイテムに関しては、どこかで不安を抱えながら洗濯されている方が多い気がします。今回の企画を通して『あ、この洗い方がいいんだな』と納得して洗濯していただく方が増えてほしいですね」
取材冒頭に鈴木さんがそう話すとおり、デニムの洗濯は難しい。そう感じる理由のひとつには、デニムの洗濯に関する情報が錯綜していることが挙げられる。いわゆるデニム好きの間では「理想的な色落ちのデニムに育てるためには、できるだけ洗わないほうがいい」とする意見がある。
特にリジッドやワンウォッシュなど色が濃い状態から穿き始める場合、いわゆる"ヒゲ"と呼ばれる穿き皺がくっきり付くまで穿き続けてから洗うほうが、メリハリある表情のデニムになるのは確かだ。その一方で「とはいえ定期的に洗濯すべき」という意見も最近はよく耳にする。洗濯のプロである鈴木さんの見解はどうなのだろうか。
「デニムの色落ちを嫌がる気持ちは僕にも分かります。とはいえ、デニムを長く穿きたいならどう考えても定期的に洗ったほうがいいのは間違いありません。というのも、僕らは洋服の洗い方を考える時に『肌に直接触れる服』『直接は触れない服』の2種類に分けるんです。ジーンズのように肌に直接触れるパンツは汗を吸うし、皮脂汚れも付着します。そういう服はしっかり洗って定期的に汚れを落とす必要があります」
同じデニム素材でも「Gジャン」と呼ばれるジャケット類であれば、パンツより地肌に触れる面積が少ないので、そこまで頻繁に洗う必要はないそうだ。そして、デニムのジーンズを洗わないことによって起こるデメリットも聞いてみた。
「汗や皮脂の汚れを放置すると、衣類の繊維や染料のダメージに繋がります。さらに汚れは黄ばみとなって現れてくるので、インディゴの色味がくすんでくるんです。また、汗や皮脂汚れを放置すると菌の繁殖につながって臭いの原因にもなります」
確かに言われてみれば、湿気が多い時期に何回か着用して放置したデニムは独特の臭いを発することがある。理想的な洗濯の頻度はどのくらいがいいのだろうか。
「穿く季節や時間によっても変わりますが、夏場であれば1〜2回。できるだけ色落ちを防ぎたいという事情を考慮に入れたとしても、数回穿いたら一度は洗いたいですね。それ以上の放置はやめたほうがいい。汚れが付いた状態で一週間、もしくは二週間以上放置するのはおすすめしません」
「汗や皮脂汚れがきちんと落ちていないと、それらを餌にするモラクセラ菌と呼ばれる菌が育ちやすくなり、洗ったとしても嫌な"生乾き臭"を放つ原因になる。生乾き臭が一度付いてしまうと、落とすのはすごく大変です。70度や80度の熱を加えないと菌は死滅しないので、煮沸洗濯や高温のガス乾燥機に頼らざるを得ない。そうなると色落ちを防ぐどころの話では済まなくなってしまいます」
一般的に生乾き臭は乾燥までに5時間以上かかると一気に増殖すると言われている。臭いや黄ばみを防ぐために、デニムも頻繁に洗濯したほうが良さそうだ。とはいえ、どうしても洗濯による色落ちを避けたいという人向けの裏技はないのだろうか?
「もろもろの臭いを避けつつ、洗濯する機会も極力減らしたいという方は、一度穿いたら風通しのいい場所に干しておくといいと思います。その際は裏返して汗や皮脂が付いた内側を表にして乾かしてください。抗菌効果や消臭効果があるファブリックミストを吹きかけておくのも効果的です」
洗濯のプロ直伝の洗い方は? おすすめは"デニム専用洗剤での手洗い"
インディゴの色味の変化や臭いの発生というリスクを考えると、デニムも頻繁に洗濯すべきということが分かった。では、できるだけ色落ちを避けながら汚れを落とすためには、どのように洗えばいいのだろうか。鈴木さんによると、必ずしも洗濯機を避ける必要はないが、やはり手洗いのほうが望ましいという。
「結論としては、洗濯機もNGではありません。ただ洗濯機に入れると、デニムが洗濯槽に当たることで摩擦によって色落ちしてしまうんです。なので手洗いのほうが色落ちを防げるのは間違いありません。どうしても面倒くさいという方は、生地を裏返して洗濯ネットに入れて洗濯機で洗っていただければと思います。その際、デニムは色移りしやすいので、単品かデニム同士でまとめて洗濯してください」
ちなみに最近はドラム式洗濯機が主流になってきたが、ドラム式のほうが縦型洗濯機より衣類の色移りはしやすいそう。その理由は縦型より使う水の量が少なく、洗濯する水の濃度が高まるためだ。
「今回の手洗いで使う、デニム専用洗剤の『デニムソークウォッシュ』は洗濯機でも使えます。ただ、仮に洗濯機の30リットルのコースで洗うとしたら、デニムソークウォッシュもその分投入しなければいけません。一本を手洗いするほうがデニムの色落ちをケアできるし、洗剤や水も最低限で済む。手洗いのほうがコスト的にもいいと思います」
「できればデニムソークウォッシュが望ましいのですが、他社さんのデニム専用洗剤でも構いません。ご用意がなければ、一般的なおしゃれ着用の中性洗剤でも代用できます。アルカリ性の洗剤は洗浄力が高く、色落ちしやすいので避けてください」
いざ手洗いを始める前に確認しておきたいのが、付属する取扱い表示タグ。言うまでもなく、洗濯やクリーニングの取扱いをメーカー側が定めているので、事前にチェックしておきたいポイントだ。今回のシュプリームのデニムに付属する取扱い表示は、洗濯のプロにはどう映るのだろうか。
「しごく真っ当な表記だと思いますよ。デニムに漂白剤を使えば当然色落ちしてしまいますし、アイロンによる熱を避けたいのも納得です。洗濯の水温を30度までとしているのも妥当ですね。僕らも40度以上のお湯はおすすめしていません。一般的に温度を上げるほど汚れ落ちは良くなりますが、色落ちもしやすくなるのでデニムは冷水で洗いたいですね」
実は手洗いは簡単! "浸け置き洗い"なら30分待つだけでOK
裏返して洗濯ネットに入れるなら洗濯機でも洗えるようだが、今回はより色落ちを防ぐために手洗いでの洗い方を実践していただく。手洗いとはいえ、最初に押し洗いを数回した後は30分間置いておくだけなので、意外と簡単にできそうだ。
「用意したのは『ウォッシュタブ(洗濯桶)』『デニムソークウォッシュ』『洗濯ネット』の3点です。洗濯ネットは浸け置き洗いが終わった後、洗濯機の脱水機能を利用する際に使います。擦れを防ぐためですね。できるだけ乾くまでにかかる時間を短くしたいので、手で絞るのではなく脱水は洗濯機にまかせます」
色落ちを防ぎ、汚れだけを落とせる理由。干し方を工夫して乾かす時間も短縮
浸け置き洗いをした後は、すすぎと脱水をして陰干しすれば完了だ。しかし改めて考えてみると、なぜデニムの色落ちを防ぎつつ、汚れだけを落とすことができるのだろうか。
「確かにデニムソークウォッシュや市販のおしゃれ着用の中性洗剤は、色落ちさせないことを重視して開発しているので、洗浄力そのものは決して高くありません。その分、今回のように時間をかけて浸け置くことで汚れを落としているんです」
結果として、もっと強い成分の洗剤で洗った時のような洗浄効果を確保できるのが今回の浸け置き洗いのメリットだ。加えて色落ちを防ぐ効果も水単体でデニムを洗う時より高いのだという。
「デニムソークウォッシュはインディゴ染料をコーティングする成分を配合しているので、水だけで洗った時よりも色落ちが少ないんです。少なくとも浸け置き洗いをしている段階ではほぼ色落ちしません。すすぎの段階でほんの少しだけインディゴの染料が流れ出てくる程度ですね」
まとめ
取材後、今回のデニムは店舗のバックヤードで特別に陰干ししていただいた。数日後、受け取った際に印象的だったのは、パリッとした風合いと鮮やかなインディゴの色味が蘇っていたこと。ほのかなユーカリの香りも気持ちよく、正しくデニムを洗うメリットを身をもって体感できた。デニムの洗濯に悩む方は、ぜひデニムソークウォッシュを使った浸け置き洗いを試してみてはいかがだろうか。
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