Default Image

ファッションは格闘家・平本蓮モードにスイッチを入れてくれる大事なもの

ファッションやエンタメ業界で活躍しているトレンドセッターに、ファッションにまつわる自身の歴史や仕事観、また今後の展望などを語ってもらいつつ、旬なセルフスタイルを披露する新連載「What's Your HYPE?」。今回のゲストは平本蓮さん。7月28日にさいたまスーパーアリーナで行われた『超RIZIN.3』にて、朝倉未来選手から勝利をおさめたことは記憶に新しい。好戦的な発言が多くやんちゃなイメージが強い平本さんだが、実際は好青年。インタビュー中は質問に対し、誰かの受け売りや付け焼き刃ではない”自分の言葉”で真摯に受け答えする真面目な姿がとても印象的だった。格闘家としてトップに君臨しながらも、しっかりと地に足がついている若きカリスマにとって、HYPEなものとは?

Photography & Movie: Tsukuru Asada(MILD)
Interview & text: Kei Osawa

今日は〈THUG CLUB/サグクラブ〉のファッションシュートのために、早朝から長時間にわたって撮影をされていたそうですね。お疲れのところご対応いただき、ありがとうございます。そろそろ日付けが変わりそうな時間帯ですが、まずは撮影を終えての率直な感想からお聞かせください。

こちらこそ、遅くまでお待ちいただきありがとうございます。撮影はすごく楽しかったです。というのも普段は、衣装を着てカメラの前に立つようなことはほとんど経験したことがないので、すごく新鮮でした。

〈THUG CLUB/サグクラブ〉のボクサーパンツを普段から穿いているそうですが、どういった経緯で愛用しているのですか?

インスタを見ていて、たまたま見つけたんです。ウエストバンドにデザインされた「Suck My Dick」のロゴがイケてるなって思って。どこのパンツが調べたら〈THUG CLUB/サグクラブ〉のものだったという感じですね。

今日は撮影でたくさんの衣装を着ていただきましたが、〈THUG CLUB/サグクラブ〉の服にはどんな印象をお持ちですか?

国内外のイケてる人たちが着ていて、最近すごい勢いがありますよね。個人的には、ちょっとルーズめなシルエットや加工の入ったデザインがすごく好きです。

普段ショッピングはどうされているのですか?

お店はネットでも実店舗でも、どちらでもよく買います。実店舗へ行く時は青山や表参道近辺のショップで買い物をすることが多いです。国内外のビッグメゾンの旗艦店がたくさんありますし、原宿のほうへ行けばストリート系のブランドやスニーカーのショップもあるので。あのあたりはよく行きます。ネットでは、基本的にはずっとインスタを見ています。チェックしていて、気になったアイテムがあったらググって調べて、気に入ったらその場で買うという流れですね。特に好きなブランドはなく、本当にばらばらで、気に入ったものがあればブランドバリューに関係なく買っています。

洋服を選ぶ際に意識することはどんなことですか?

サイジングと色味ですね。サイズ感は適度にルーズ感のあるものが好きです。
ハイブランドが出しているトレンドを見る限り、ジャストサイズから3〜4インチアップしたくらいのものが多いように感じますが、個人的には、トップスに関してはわりとジャストめで、ボトムスはワイドな極太シルエットのものを使ってAラインを意識した感じが好きです。カラーはなるべくワントーンで統一したいという気持ちはつねにあります。セットアップは大好きですね。ユニフォームみたいな感じが好きで。だから服はトップスとボトムは同系色でまとめて、スニーカーで外すということが多いです。

ファッションに興味を持ったのはいつ頃からですか?

中学生ぐらいです。父の影響から、THE BLUE HEARTSを好きになったことが大きいです。特に甲本ヒロトさんが好きになって、そこからロックなファッションだったり、カルチャーに沿ったファッションを意識するようになりました。ロックやパンクが好きだったので、レザーのライダースジャケットを着たり、音楽からだいぶ影響を受けました。そこからヒップホップなど色んな曲を聴くようになりました。そうそう、当時はお年玉やお小遣いを貯めて、古着屋さんでショットのライダースジャケットを買ったのを覚えています。2万円もしないくらいの安いものだったのですが、コンディションが悪くてボロボロで。でもそこがかっこよかったので、そこからさらにガンガン着込みました。足元はドクターマーチンの編み上げブーツ、アクセサリーはシドチェーン(70年代に人気を博したイギリスのパンクロックバンド、SEX PISTOLSのベーシストであるシド・ヴィシャスが付けていたことからこの名が)をつけたりしていましたね。ちなみにそのライダースジャケットはいまだに着ています。

甲本ヒロトさん以外で影響を受けた人はいますか?

ダントツでイケてるなと思ったのはトラヴィス・スコットですね。ファッションはもちろんですが、ラッパーとしてもめちゃくちゃかっこいいですし、全てにおいてイケてるなって。色味を統一したスタイリングとかいいですよね。あと彼のファッションだけでなくライフスタイルもすごく憧れます。もちろん、ファンなのでスニーカーもしっかりおさえています(笑)。

スニーカーをいつからお好きですか?

ファッションと同じく中学生くらいです。父親が白のエアフォース1(Nike Air Force1)を昔からずっと愛用していたこともあって、スニーカーへの憧れも幼い頃からありました。父親の影響ですね。いまだにエアフォース1(Nike Air Force1)は履いています。

若い頃は勢いで服を着がちですが、いま見返すと若気の至りといいますか、あれはヤバかったなと思うファッションってありますか?

意外とないかもしれないですね。逆に中学校時代の服装とかを見たら「イケてるなあ」って思ったりするくらいなので。僕自身はそのときできる全力のオシャレをしていたわけなので、後悔とかそういうネガティブな感情はないですね。自分のそういう感性みたいなものは信じているといいますか、大事にしたいと思っています。あとファッションのトレンドって10年前とかになると一周しちゃったのか「逆にあり!」みたいな感じになったりするので、そういう感覚のせいもあるのかもしれません。

ご自身のブランド〈AMNJX/アマノジャク〉を立ち上げたきっかけは何だったのですか?

ファッションが好きだったことももちろんありますが、どちらかというと、シンプルに儲かるかなっていう……。ぶっちゃけ、ビジネスです(笑)。でもそんな簡単にうまくいくはずもなく、最初はすごく苦戦しました。知り合いと一緒に立ち上げてスタートをしたわけですが、2年くらいはサンプルを作ってばかりで、アイテムを全くリリースできませんでした。ただ、そうやって試行錯誤を繰り返すうちに、少しずつ服作りに必要なことや、全体的な流れみたいなものを覚えていきました。いまはデザインから全て自分で手掛けています。

デザインなどのアイデアはどんなときに思いつくのですか?

街中をぶらぶら歩いているときなど、日常の中で気づくことが多いです。例えばショップからたまたま目に飛び込んできた服や、道端でかっこいい人やオシャレな人と遭遇したら写真を撮らせてもらったりします。あとはやっぱりインスタグラムからヒントをもらうことが多いですね。有名人とか一般人とかを問わず、とにかく国内外のオシャレな人やかっこいい人のスタイリングを片っ端からチェックして、着ているものがタグ付けされていたらそっちに飛んで詳細を調べるなどして、そのアイテムを自分のアイデアの中に落とし込んでデザインをしたりすることが多いです。

全てにこだわりをもって服作りをされていると思いますが、その中でも特にこだわっている点はどんなところですか?

やっぱりサイジングですかね。あとは素材かな。僕も、僕と一緒に手掛けているパートナーも、その2つに関しては特に強いこだわりを持っています。素材から縫製に至るまで、工程は全てメイドインジャパンで行っています。作っていて恥ずかしくないものを作っているつもりなので、クオリティはかなり高いですが、価格もだいぶ抑えているので、正直採算はそれほどとれていません(笑)。僕のファンの方は中高生を中心とした若い方たちが多いので、あまり高い服を作っても買ってもらえませんし、着てもらえなければ作る意味もないので。何より、自分がファッションが大好きで、オシャレをしたいという気持ちもすごく理解できるので、価格が高くて買えないからオシャレを諦める、ということをしてほしくありません。

ブランドを手掛けるようになってから、ご自身のファッション観に変化はありましたか?

最初に自分で服を作ろうと思ったときは、自分の意思に関係なく、売れそうなものを商品化することを意識していましたが、やっていくうちに結局は自分が着たいと思う服が一番売れる、ということに気づきました。だから、そういう気持ちの部分も、デザインに反映されるのかなって。自分が着たいと思える服を作るようにしてからは、売上的にも安定してきましたし、何よりアイデアを考えたり作ったりすることが、とても楽しくなりました。あとはトレーニングや試合の前後でも、デザインのことをなんとなく考えるようになったことで、息抜きではないですが、格闘技とは全く別のジャンルなので、リフレッシュできるのがいいですね。自分にとって服作りについて考えることは仕事であり、ちょっと趣味に近いかもしれません。

ご自身にとっては、タトゥーもファッションの一部だと思いますが、どんなこだわりがありますか?

とりあえず、思いついたものを入れるという感じです。今入っているものは、20歳ぐらいから思いつくままに一気に入れたものです。後悔はまったくしていませんが、今思えばもっと柄や入れる位置など、ゆっくり考えながら入れればよかったなと思います。作品としてはまだまだ制作途中なので、自分の中ではファッションの一部だなんてまだ程遠いです。最終的には全身に入れたいと思っています。いまは時間の合間をぬって、少しずつ入れています。

タトゥーを入れようと思ったきっかけを教えてください。

K-1を辞めるタイミングですね、RIZINに行く前。当時はまだK-1の本部の人にK-1を辞めるということを告白する前でした。いまは解禁されていますが、その当時はまだK-1の選手は、刺青を入れることが禁止されていたんです。だから当時の僕は「K-1にはもう戻らない」という決意表明みたいな感じで入れました。入れたときはすごく気持ちよかったです。

あとファッションが格闘技に与える影響って?

僕にとってファッションはムードや気分をあげてくれるもの。それは格闘家の時もプライベートの時も同じです。一番大事じゃないすか、ムードって。例えばジムへ行くときのバックやトレーニングウェア一つをとっても、それがお気に入りのかっこいい服なら、格闘家・平本蓮のモードに入るんです。どんなシチュエーションであれ、自分で納得のいくファッションじゃないと駄目ですね。服やファッションの一番いいところって気分(が上がること)だと思うので。これをまとっている自分のかっこよさというか、自分自身にどれだけ好きなポイントをつけられるか考えると、やっぱりファッションは自分の好きなポイントに入ってくるわけじゃないですか。好きな人とデートへ行くのだって、普段着で出かけるよりも、バチバチにオシャレをして行った方が気分もあがりますし。オシャレをするからにはとことん。全然イキがっていいと思うんです。「俺はこういう人間だ!」みたいな感じで。ファッションは自分というものを作り上げるというか、スイッチを入れてくれる大事なものです。

ファッション性など、全てをひっくるめて人としてかっこいいなって思う、憧れの存在っていますか?

やっぱり圧倒的にイェ(カニエ・ウエスト)ですね。やっぱりあんなに面白くてピュアな人はいないと思います。いつか自分もああいうふうになりたい。常にピュアで、どんな状況でも自分の信じたものを受け入れて、突き進んでいく感じがすごくかっこいいと思います。音楽以外にもいろいろと発信していますが、僕は全ての行動から影響を受けていると思います。自分が絶好調な時はもちろん、あまり調子が良くない時も全てをさらけ出していて。彼の全ての行動が、彼自身が追い求めている真実のために動いているような感じがめっちゃ伝わってきて、生き方としてすごくかっこいいなと思います。

最後の質問です。ご自身にとってHYPEなものとは?

〈Audemars Piguet/オーデマ・ピゲ〉ロイヤルオーク オフショアです。朝倉未来戦のファイトマネーで購入したのですが、試合前から勝って絶対に買うと決めていました。つけていると、自分の中でステージが一つ上がった気分になります。さっきの話ではないですが、やっぱり気分があがりますね(笑)

平本 蓮

ひらもとれん 1998年生まれ。東京都出身。2014年、高校1年生でK-1甲子園2014優勝を果たし、翌年キックボクシングでプロデビュー。22歳で総合格闘技に転向。7月28日、さいたまスーパーアリーナで行われたRIZIN LMS(Last Man Standing)王座決定戦で朝倉未来選手と対戦し、左ストレートでダウンを奪いパウンドで1RTKO勝ち。LMSベルトを獲得した。

Instagram:@ren___k1