THE SNKR #08 FR2 石川涼のインタビュー写真1

THE SNKR
#08 石川 涼

トレンドのヒントはSNSの中にしかない

お気に入りのスニーカーをベースにゲストとスニーカーの関係性を紐解く、スニーカーダンクの連載「THE SNKR」。今回は『せーの』の石川涼社長が登場。
世界中で人気を誇るブランド〈#FR2〉を筆頭に、多くのブランドを手掛ける石川さんはスニーカー愛も深く、所有数は約500足。愛用スニーカーについてはもちろん、スニーカーブームの現状と未来について、さらには自身のブランドの展望についても語ってもらった。

Photography: Tsukuru Asada
Interview & text: Kei Osawa

まず、今回お持ちいただいたスニーカーについてお聞かせください。

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#FR2/エフアールツー〉と〈Reebok/リーボック〉のコラボ〈CLUB C/クラブシー〉です。#FR2と〈atmos/アトモス〉さんだけで展開する日本限定600足のモデルで、僕の誕生日である6月12日に発売します。ちなみに今回のスニダンさんの取材が世界初公開です。
一番のポイントは、サイドロゴを「Reebok」ではなく「Rabbit2」に変えているところです。ここは普通いじれませんから。あと個人的には、日本だけでなくグローバル企画で完成できたということが大きいかなと思います。

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〈HOKA ONE ONE TOR ULTRA HI 2 WP/ホカオネオネ トゥ ウルトラ ハイ 2 ウォータープルーフ〉は、普段履きももちろんですが、海外に行くときは絶対に持っていきます。どのブランドよりも、ホカが一番疲れないというか、履き心地が抜群。最強です。これはハイカットですが、ローも何足か所有しています。

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NIKE AIR JORDAN 1/ナイキ エア ジョーダン1〉シリーズも大好きで結構持っています。基本的にはあまりハイテクモデルより、ローテクと言いますか、昔のタイプを中心に買っています。今日履いているのもそうですね。このAIR JORDAN 1のように、シンプルなものが一番好きかも。ちょうど世代なので惹かれちゃいます。
僕が19歳の時に最初のモデルが出たんです。当時は静岡県の富士宮市という田舎に住んでいたのですが、地元のスニーカー屋さんで全く売れず、7,000円で売っていたんです。もう在庫山積み状態(笑)。今となっては「買い占めておけばよかったなあ」って後悔しています。

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二足とも〈NEW BALANCE M1300/ニューバランス 1300〉ですが、通常のM1300と、KITHコラボRC1300です。こうして同じスニーカーのオリジナル版&アップデート版をセットで買うのが好きなんです。クルマでも新旧で同じモデルを買ったりします。

好きなものを何度も買い直すタイプですか?

そうですね。保管はせずに買ったら普通に履いてしまうので、履きつぶしたら新しいモデルを買います。あとはリペアですね。NEW BALANCEだとソールの交換ができるので、気に入ったモデルは直しながら履いています。

最初はアパレルショップで働かれていたそうですが、昔から洋服には興味があったのですか?

それしか興味がなかったんです。僕らの時代ってインターネットもなかったですし、全然選択肢がなかった。父親が若いので、中学生時代から一緒に買い物に行くようになり、それで通っていた洋服屋さんにそのまま就職をした感じですね。’92〜93年は古着ブームだったので、当時は完全にアメカジスタイルでした。

ファッションを決めるときはスニーカーから入るタイプですか?

自分も含めて、昔はみんな服が先でそれにスニーカーを合わせていたと思いますが、逆になっていると感じます。スニーカーに合わせてみんな服を選んでいるというイメージがあって、最近新たに〈THE NETWORK BUSINESS/ザ ネットワークビジネス〉というブランドをスタートしました。
今日着ている服もそうなのですが、これは“Social Sneakers Secret Service® for sneaker heads worldwide(世界中のスニーカーヘッズのためのソーシャルスニーカーシークレットサービス)”をコンセプトに、スウェットのセットアップなど、スニーカーのデザインに合わせたコレクションを展開しています。スニーカーに合わせて服を選ぶ人には最適だと思います。

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現在のスニーカーブームを見て、思うことはありますか?

僕はすごく良いことだなと思います。二次流通が進化して、今は色んなものがあるじゃないですか。
移動販売とかしていて(#FR2の新しい販売業態として移動型販売店舗、「#FR2DOKO?」を展開中)すごく思ったんですが、若い子たちの使えるお金が増えているんですよ。単純に収入が増えているのではなく、リユースを上手に利用しているから。僕らの時は、買ったら買ったままだったじゃないですか。でも今の子たちって売ったり買ったりできるので、お金を使う頻度が上がっていると思うんです。
そういう意味では、スニーカーって1万円くらいの単価なので投資の練習と言いますか、入門編には良いマーケットだなと思います。それが楽しいから、元々のスニーカーに興味のない人たちも参入していて、このマーケットが盛り上がっているのかなと思います。

石川さんは、それまでのアパレル業界にはなかったブランディングや販売を展開をしていますが、こうしたスタンスはどうやって生まれたのですか?

昔からアパレル業界に抱いていた違和感ですね。例えば「来年の流行のカラーはこれです」とか、誰が決めているんだと思っていましたし。当時は雑誌が全てだったので、その真似をしておけば安心感があったという時代じゃないですか。でもインターネットが出てきて、そうじゃないことがわかった。「あれ嘘じゃん!」みたいな(笑)。だから僕の場合は「僕のクリエイティブはこうだ!」というよりは、マーケットを見て、足りないものを作っている感覚です。

マーケットが何を求めるかというのはどこで調べるのですか?

スマホの中にしかないです。
移動販売を始めたのも2回目の緊急事態宣言が出る手前に、みんなが外に出られないならこっちから売りに行こうという感じで始めました。それもお客さんの動向を見て思いついたことです。しかも人を集めてその場で売るって、コロナ禍において最も叩かれる可能性があるわけじゃないですか。でも実際にやったら行列ができるほど大盛況。結局そういうことにみんな飢えているんだなというのがわかり、すごく良い売り方だなと思いました。
みんながこれからはD2C(Direct to Consumerの略。自ら企画、生産した商品を代理店や小売店を挟まず、消費者とダイレクトに取引する販売方法)だと言い始めた瞬間、絶対店を持っている方が価値が上がっていくと思いましたし、みんながそうなったら結局画面が変わるだけで、売っている物ってほぼ同じじゃないですか。D2Cブランドは長くないなと思います。今は流行っているかもしれませんがおそらく根付きません。

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移動販売を会社としてやるのはわかりますが、社長自ら現場に向かうのはなぜですか?

最初から想定の5〜6倍の売り上げがあって、それを体験した時に「これは間違いなくいける」と感じたのと同時に、絶対に他社の後追いも出てくるから、とにかく自分が現場に行って、スピード感をもって改善すべき点はその場で改善していきたいというところからですね。
例えば夜になって照明があった方が良いとか、寒いからストーブがあった方が良いとかって現場が思っていても、上長の許可を待っていたりすると改善に時間がかかるじゃないですか。僕が行けばその場でAmazonで買って明日届くわけです。そうするとシステムとしてどんどん良くなっていくので、効率がいいんです。出店場所の交渉も、僕がいたら全部その場で改善して、次の日の会議で過不足を補えて次に活かせますから。

ずっと仕事ばかりで嫌じゃないですか?

仕事以外で楽しいことありますか?逆に(笑)。
日本は祝日も多いんでみんな何やっているんだろう?本当に聞きたい。休みは要らないですね(笑)。

何をしている時が楽しいですか?

やっぱりお客さんの反応ですよね。自分たちがやったことに対する反応が見られた時は、一番テンション上がります。「やっぱり当たったじゃん!」みたいな(笑)。

仕事絡みで気になっていることは?

コロナ禍が明けた時にインバウンドが日本に戻って、100%バブルが来ることを確信しているので、それを待ち構えています。空き店舗をバンバン抑えているので、インバウンドが戻って来たらもっと盛り上がります。今は退店ばかりで誰もできないじゃないですか。でもそれができるということは、企業として地に足をつけてちゃんと利益を取ってきたからこそ今ちゃんとベットできるわけで。

最終的にどうなりたいですか?

僕は1人でも多くの世界の人に「アジアから面白いやつが出て来たぞ」と、言わせるのが目標ですね。誰もそっちに挑戦していませんから。例えばフィリピンで一番の日本のブランドがあるとか。
アジアでトップを目指すことに対して、日本のファッション業界の人たちはかっこ悪いと思っているじゃないですか。でも僕は、その考えこそがダサいと思うんです。僕らがアジアで一番のブランドになれたら、絶対世界一になれると思っています。インドネシアの人口はもう世界4位ですし、そういう挑戦をしたいですよね。

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人がやらないことをやるって勇気あることだと思うのですが怖くないですか?

全然怖くないです。もともと何も持っていませんし、全部なくなってもまた最初からやればいい。自分が凡人だという自覚があるので、みんなと同じことをやっていたら勝てないわけです。みんなと同じなら価値がないと思うので。みんながやらない方で自分たちの価値を作って行くのが大事だと思います。

日本及び、世界のスニーカー市場は今後どうなっていくと思いますか?

供給量さえ誤らなければまだまだ続くと思います。熱狂をキープするには、供給過多にしないというのが大事ですから。
あと結局、スマホで全世界が繋がっていて、スニーカーも完全に世界共通言語で、誰もが同じものを欲しいわけじゃないですか。新作が「明日出るよ」っていったら、これを世界中の人たちが買うわけです。スニーカーやアパレルのマーケットは、日本だからとか世界だからとかっていうことは、あんまり関係ないと思います。

石川 涼 / 株式会社せーの 代表

1975年生まれ。神奈川出身、静岡育ち。20歳のときに上京。アパレル業界に入り4年間経験積んだ後に独立。24歳でアパレルブランドを立ち上げ起業。ファッションブランド〈VANQUISH〉を創設。2014年に〈#FR2〉がスタート。Instagramを中心にマーケティングを展開し、今では世界中にファンを持つ人気ブランドに。最近は新ブランド〈THE NETWORK BUSINESS/ザ ネットワークビジネス〉を手がけつつ、移動型販売店舗『#FR2DOKO?』を展開中。

instagram:@vanquishceo
Twitter:@VANQUISHceo