自分が楽しくなかったら他人も楽しませられない。
まずは自分ありきで楽しむこと。

ファッションやエンタメ業界で活躍しているトレンドセッターに、ファッションにまつわる自身の歴史や仕事観、また今後の展望などを語ってもらいつつ、旬なセルフスタイルを披露する新連載「What's Your HYPE?」。今回のゲストは俳優やレゲエDeeJayとして活躍しつつ、モデル、ゴルフアパレルブランドや日本酒のプロデュース、執筆や陶芸など多方面で活躍している窪塚洋介さん。1990年代の裏原宿に端を発する日本のストリートファッションカルチャーに深く精通し、多くのファンに愛され続けているファッショニスタ。そんな彼にとってHYPEなものとは?

Photography:Tsukuru Asada(MILD)
Interview & text:Kei Osawa

ファッションに興味を持ったのはいつ頃ですか?

つい最近も同じような質問をされてしこたま考えたんですが、映画『グーニーズ』を観た小学校の低学年ぐらい。ちょうど同世代ぐらいの子どもが出てきて冒険するというストーリーで、劇中にBMXが出てくるんです。それを観て「かっこいいな」って思って、買ってもらった記憶があるんです。それをファッションとするならば、ひとつの節目だったのかもなって感じます。

ちなみに取り立てて語ることでもないかもしれませんが、高校を卒業して東京に出てきた時に、今後の自分自身の壁になるなって思うぐらい、自分が普通であることにもやもやしていたんです。ちょっと穿った言い方をすると中途半端というか。例えば、俺よりも走るのが速いやつや勉強ができるやつ、モテるやつ、おもしろいやつ……。そんなやつはいっぱいいて、なんていうか、自分が一番になれることがないな、みたいな。だから何かその中途半端さみたいなものが将来的なネックになるんじゃないかなって、子どもながらに感じつつ、横須賀から東京に出てきたという記憶がありますね。

そういう感情を抱えて上京して、何か印象に残っているファッションはありますか?

ファッションというか生き方として、自分自身が生きたいように生きる、生きればいいというか。自分らしくあることを、当時の裏原の皆さんに教えてもらったと思います。
遊び方や飲み方、おネエちゃんとの話し方であったりとか。こういうふうに遊んだらかっこいいというものを背中で見せてもらいました。当時すごく真似していたし、いまだにその真似が抜けないですね。

当時の原宿は楽しかったんじゃないですか?

もう楽しくてしょうがなかったですね。家に帰らず、友人宅から仕事場へ行って、『ハーレム(渋谷区円山町にあるクラブ)』に帰ってきて、そこからまた別の友人宅に行ってから仕事場へ行って、という繰り返し。数日家に帰らないことが普通で、それどころじゃないぐらい人生がおもしろすぎちゃって。いい刺激も悪い刺激もいっぱいありましたね。全てを含めて、自分が自分自身になっていくみたいな。中途半端って思っていたけど、その中途半端さを極めて自分になればいいんだって。そういうふうに言葉で教えてくれた人はいなかったけど、みんなのそれぞれの生き方を見ていて、そういうことなんだなっていうのを自分なりに理解していったというような時期でした。

当時、ブランドを手掛ける仲間の服を着用されていましたが、今も変わらずですか?

自分では“もらいもの生活者”と言っているんですけど、それは変わっていません(笑)。19歳ぐらいから〈master-piece/マスターピース〉や〈WTAPS/ダブルタップス〉、〈Supreme/シュプリーム〉など、本当にもらい物で生活していて、10年以上服を買っていなかったと思います。本当にありがたいです。

窪塚さんのなかで、いわゆる「若気の至りファッション」はありましたか?

めちゃくちゃありました。スピリチュアルに興味をもった時があったんです。それはそれで大事な時間でしたし、考え方とかそこで体験したことは今の自分の中にすごく活きているんですけど。その当時はナミビア砂漠とかにいそうな、麻でできたフード付きのコートに石をめっちゃ付けたりしていました。なんだったら杖を持って歩く感じの仕上がりで、今思うとあれが一番振り切っていたと思います。

スピリチュアルに傾倒して、それがファッションに表れるなど、そういう心の事情がファッションに繋がることは多いですか?

そうですね。ストリートの服を好きになったのも、当時ストリートに生きている人たちへの憧れがあったと思います。ちなみに最近は、ストリートとハイブランドを混ぜて着ることが多いんです。というのも、ハイブランドがもつ歴史や生産技術などを知らなかったのですが、ご縁ができて知ってみると、素晴らしいなって感じるようになって。自分のファッションに採り入れているのも、そういう心の表れだと思います。

俳優やモデル、フォトグラファー、プロデュース業、最近は陶芸家としても活躍されていますが、肩書きはなんですか?

「なんでもいいかな。全部が自分の好きなことで、根っこからちゃんと出ていることだから。お芝居もそうだし、お酒も好きだから「福霧」という無農薬の日本酒をプロデュースしたり、ゴルフにもすごいハマっていて〈8G SHOOT/エイジシュート〉というゴルフのアパレルブランドを始めたり。ただ、すべてが自分の人生の中で計画していたことではありません。特に20代の頃は、ひとつの事をストイックにやるのがかっこいいと思っていて、当時は“役者一筋”で、色んなことをやるべきではないと考えていました。でもこれは自分の人生であり、誰かのために生きているわけでもないから、自分がやりたいことをやろうと思ったんです。特にマンションから落っこちて死にかけて、奇跡的に命拾いしてからは余計にそう思うようになりましたね。やりたい事はストレスなくやって、それが形になればいいなと思っていましたが、幸いにも全部仕事に繋がっていって。もちろんめっちゃ忙しいんだけど、誰かに入れられているスケジュールじゃないから全然余裕なんです。

新しいことを始めることは勇気がいることだと思いますが、失敗してしまう可能性や、そこに対する怖さみたいなものはありますか?

失敗とか成功とか正直、結果はどうでもいい。結果にこだわると挑戦しなくなっちゃうから、なによりもそのやっていることが好きということが一番神棚に上がっていれば、あとは全部おまけ。それがうまくいってお金が稼げるようになったら良いだろうし、お金は稼げないけど、仲間がめっちゃ褒めてくれるだけでも嬉しいことだし。でも、やりたかったけどやれなかったなというのが、一番辛いだろうなって。とにかく、まずは自分が楽しいと思うことで、誰かが楽しんでくれるのがベスト。自分が幸せじゃなかったら他人を幸せにはできないと思うし、自分が楽しくなかったら他人も楽しませられないと思うから、まず自分ありき。自分がハッピーだったら、ハッピーのおすそわけができないかなとか、こういう返し方ができないかなという考えに繋がると思うし。そういう好循環が生まれればいいなと思っています。よくお年寄りのインタビューとかでそういうの聞くじゃないですか。先人たちが幸せへの近道とかアドバイスを残してくれているんだから、俺らも実行していいかなって思っています。

いろんなことを続けていく中で、行き詰まることがあると思いますが、そういうときどうやり過ごしているんですか?

壁を越えれないことはないと思うし、やべえなっていうときほどチャンスだから、やっぱりピンチはチャンスだと思っています。それをすごく体感して生きてきたので間違いないです。やばいときほどめっちゃ成長できる。マンションから落っこちたことも、そのときはもうエグくてやばかったけど、でもその結果、今はなくてはならない自分のすごい大事な要素になっていて、それがむしろ強みになっている。持ちネタのギャグみたいに使うときもあるし、人生を語るときのひとつの大きな武器としても機能する。結局、ネガティブなことってすごいポジティブに変換できるから。No Rain, No Rainbow(=“雨が降らなければ、虹は出ない”、転じて“つらいことの後にはきっと良いことがある”の意)じゃないですけど、失敗は成功の母とか、雨降って地固まるとか、その類のことわざって多いじゃないですか。だから昔からそういうものなんだろうと思います。

壁にぶつかったときこそ成長できるということですが、どう成長したいとかって具体的なビジョンはありますか?

ないですね。本当に行き当たりばったりなので、なるようになるというか、なったようにしかならないというか。おそらくそれが自分の性格に合っているんだと思います。1から100まで全部自分でやって、その通りに仕上げられて完成するものより、自分では90とか99ぐらいまでしかできなくて、100にするのは自然に任せるとか、なんなら神のみぞ知るみたいな。そういうことがたぶん好きなんでしょうね。自分の人生がそうだから。裏原のみんなと出会った頃に、こういう道を歩くとは全然思っていなかったですし。

まだまだやってみたいこととか、チャレンジしたいことはありますか?

とりあえず今やっていることを楽しむことで十分。もちろん、また興味が出てくるかもしれませんが、その時はその時にチャレンジすればよいかなと思っています。だって、まさか自分がゴルフにここまでハマると思っていませんでしたから。身内にはゴルフは一生やらないって公言していたくらいなんですけど、「それでもやるんかい(笑)!」っていう。しかもスポーツだけ楽しむだけならまだしも、ゴルフのアパレルブランドまで始めちゃっているわけですから。こんなの、自分も含めて誰も想像していなかったことですからね。わからないもんですよね人生って。何か始めるってなった時は、流れる水のように、どんな時代になっても自分が楽しめるようにしたいなと思っています。

生きていく上で、これだけは譲れないことってどんなことですか?

裏原に絡めて言えば、NIGO®くんとジュン(高橋盾=アンダーカバーデザイナー)くんが90年代初頭に作った『nowhere』というショップがあったじゃないですか。あれって直訳すると「どこにもない」っていう意味なんですけど、でも実は「Now」と「Here」に分けられるんですよ。「いま」と「ここ」に訳せますよね。今ここはどこにもないっていうのが俺の好きな言葉なんです。「今ここ」に生きることが大事ではあるけど、「今ここ」はもう言った瞬間になくなっている場所なんですよね。ちょっと仏教的な話になっちゃうけど、色即是空というか、今は捕まえられないんだけど、それでも今この瞬間に生き続ける、居続けるということがすごく大事だなと思います。無限の可能性がこの瞬間にあるから、ここを生きていられれば、過去にあった自分の過ちや後悔している体験もプラスに変えられるし、未来が不安だったとしても、今がハッピーだったらその延長線上に未来が来るんだと思ったらハッピーだし。

ファッションも含めて、ご自身がかっこいいなと思う理想の男性像を教えてください。

やっぱり自分らしい人。ハゲていようがデブだろうが、ジジイだろうが、自分らしく生きている人はかっこいい。あとそういう人って、気持ちが若いですよね。人生を楽しんで生きてきた人はやっぱりそうだなって。自分もそうありたいですね。

最後にご自身にとってHYPEなものや言葉を教えていただければと思います。

逆に、何だと思いますか(笑)?

それは「自分」。自分という軸をしっかり持って、楽しいと思うことに挑戦し継続することで、周りにも楽しさの良い連鎖が生まれて、空気感を変えていければ……。

そういうことです(笑)!

窪塚洋介

くぼづかようすけ。
1979年生まれ。神奈川県出身。1995年に俳優デビューし、映画を中心に舞台でも活躍。2017年にマーティン・スコセッシ監督作『Silence-沈黙-』でハリウッドデビューを果たし、以降海外にも積極的に進出。国内外の話題作に多数出演するほか、音楽活動、モデル、執筆、陶芸と多彩な才能を発揮。自身のYouTube番組やゴルフアパレルブランドなどのプロデュースにも注力している。5月には芸能生活30周年記念パーティー「大縁会」を開催予定。映画「フロントライン」(関根光才監督)は6月13日より全国公開

Instagram:@yosuke_kubozuka