平日のオフィス街から週末のストリートまで、今や"始祖鳥ロゴ"を見ない日はない。あのロゴの正体こそ、カナダ発のアウトドアブランド「アークテリクス(ARC'TERYX)」だ。かつては本格的なアルピニストのための装備だったが、今や都市生活者のユニフォームとしても完全に定着した。朝晩の寒暖差が激しく、天候も崩れやすい春先は、そのスペックを分かりやすく享受できる季節のひとつだ。今回は、春アウターの最適解として、単なるトレンドを超えてアークテリクスが選ばれるようになった3つの理由に迫る。
理由その1. 始祖鳥ロゴはブランド理念の象徴。命を守るギアとしての信頼性
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一風変わったブランド名と象徴的な始祖鳥のロゴは、地球上で初めて空を舞ったとされる始祖鳥(アーケオプテリクス)に由来している。生物が進化していくようにプロダクトを常にアップデートしていくという理念の下、1989年にカナダ・バンクーバーで創業した同ブランドは、過酷なコースト山脈でのフィールドテストを繰り返し、アルピニストのための機能性を追求してきた。
ブランドの原点である熱成形ハーネス"VAPOR(ヴェイパー)"に始まり、画期的な背負い心地を実現したバックパック"BORA(ボラ)"、そして1998年に誕生した究極のハードシェル"Alpha SV Jacket(アルファSVジャケット)"に至るまで、常にエポックメイキングな進化を遂げてきた同ブランド。現在もカナダ国内に構える自社工場「Arc'One(アークワン)」で行われる厳格な品質管理こそが、極限環境で命を守るギアとしての確固たる信頼性を担保している。
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理由その2. スーツや街着とも好相性。着用シーンを横断するソリッドな造形美
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アークテリクスがあらゆる着用者に愛されるもう一つの理由は、"テック・ミニマリズム"とも呼ぶべき圧倒的に洗練されたデザインにある。過酷な山岳地帯での動きやすさを追求した独自のパターンは、結果として身体に沿う美しいシルエットを生み出した。過剰な装飾を削ぎ落としたソリッドな佇まいと、ハイスペック素材特有のマットな質感が巷のアウトドアギアにありがちな野暮ったさを完全に払拭。その完成された造形美は平日のカッチリとしたスーツスタイルから、休日のストリートファッションまでをシームレスに繋いでくれる。あらゆる着用シーンを横断するプロダクトが都市生活者のワードローブにも馴染むのは必然だ。
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理由その3. ストリートからモードまで。ハイファッションも虜にしたカルチャーの文脈
アークテリクスが山のみに留まらず、ファッションの領域も制圧していく軌跡は極めてドラマチックだ。その萌芽は90年代のニューヨークに遡る。シュプリームの初期ライダーとしても知られる伝説的なスケーター、ハロルド・ハンター(※画像左)が雑誌『FADER』の紙面で着用したことによって、高機能なアウトドアウェアをストリートに落とし込む価値観が定義された。ちなみにそのシューティング時、彼にアルファSVジャケットを着用させたのは、自身もアークテリクスを愛用しており、当時ステューシーのクリエイティブ・ディレクターを務めていたポール・ミッテルマン(※画像右)。当時ストリートシーンの中心にいた人物たちは、その頃から始祖鳥ロゴに熱い視線を送っていたようだ。
90年代のストリートで蒔かれたその種は、2010年代後半にかけて世界を席巻した"ゴープコア(Gorpcore)"のムーブメントと合流。ハイファッションをも巻き込む巨大な潮流へと結実していく。フランク・オーシャンや、今は亡きヴァージル・アブローといったカルチャーの絶対的アイコンたちが、公の場でこぞってアークテリクスを着用。2021年秋冬にはシュプリーム出身のルーク・メイヤーが手がけていた「ジルサンダー」とのコラボも発表され、話題を呼んだ。過酷な状況で命を守るためのギアは、その対極とも言えるラグジュアリーファッションの領域とも融合し、その求心力をますます強めていく。
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さらに、ここ日本においても同ブランドが都市の日常着として浸透する流れを決定づけたのは、セレクトショップ・ビームスの功績に他ならない。両者のコラボは、ビームス創立25周年にあたる2001年にスタート。20年以上にわたり、数々の別注コレクションを展開してきた。特に名作"Beta Jacket(ベータジャケット)"のクレイジーパターンや、"Mantis(マンティス)"の限定モデルは、毎回即完売となるほどその人気は過熱している。この長きにわたる別注の歴史は海外のファッションシーンからも熱い注目を集め、その存在感は今なお増すばかりだ。
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春の最適解アウター23選:モデル名から紐解く、今手にしたい一着
ここからはアークテリクスのモデル名の秘密を紐解きながら、春先を快適に過ごすための推奨モデルを紹介していきたい。同ブランドのプロダクトには用途とスペックを組み合わせたモデル名が付けられるのが通例だ。高所登山向けで着丈が短いAlpha(アルファ)や、汎用性の高いBeta(ベータ)といったモデル名のあとに、過酷な環境用のSV(Severe)や、あらゆる状況に対応するAR(All Round)に代表されるサブネームが続く。春先の都市生活においては、軽快な機能美を誇るLT(Lightweight)や、圧倒的な携行性を持つSL(Superlight)の存在も見逃せない。上記を踏まえつつ、自分のワードローブに加えたい一着を探してみてほしい。
Alpha SV Jacket
高山向けかつ、過酷な環境用を意味する、ブランドの頂点に君臨するアイコン。最高峰のゴアテックス プロを採用し、極限の防水透湿性と耐久性を誇る。都市部ではオーバースペックかもしれないが、身につけることで得られる安心感と構築的なシルエットは唯一無二だ。
Beta Jacket / Beta LT Jacket
街着からハイキングまで対応する高い汎用性を備えた、デイリーユースの完成形。独自の立体裁断により、腕を大きく上げても裾がめくれ上がらず、ストレスフリーな着用感を実現。春の長雨にもスタイリッシュに対応できる万能アウターだ。
Atom Series (Hoody / SL Hoody)
同ブランドが誇る中間着の定番。独自開発の中綿「コアロフト」は、ダウンと違い水に濡れても保温性を失わないのが特徴だ。春の朝晩の冷え込みには単体のアウターとして、冬はインナーとして機能するユーティリティな一着。
Squamish Hoody
アークテリクスの自社工場からほど近く、ロッククライミングの聖地とも呼ばれるスコーミッシュの名を冠した軽量ウィンドシェル。防風性と撥水性に優れた高密度ナイロンを採用しつつ、その重量はわずか140g。一般的なメンズの半袖Tシャツよりも軽く、胸ポケットに本体を収納できるパッカブル仕様。バッグに忍ばせておけば急な天候変化や冷房対策にも対応可能だ。
おわりに
天候が不安定な春先において、アークテリクスが持つ高い機能とデザイン性は、日々のストレスを確実に軽減してくれる。今、同ブランドのアウターを選ぶことは、単なるトレンドの消費ではなく、変わりゆく気候に適応し続けるための"機能美への投資"となるはずだ。確かな技術力に裏打ちされた一着を手に入れて、この春のストリートをスマートに攻略してほしい。