「ザ・ノース・フェイス」のマウンテンダウンジャケットの魅力とは? ブランドの歴史を交えて解説|コラム

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「ザ・ノース・フェイス」のマウンテンダウンジャケットの魅力とは? ブランドの歴史を交えて解説|コラムについて

「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」の数あるダウンジャケット類の中でも、ヌプシジャケットやバルトロライトジャケットと並んで高い人気を誇る「マウンテンダウンジャケット」。初めてリリースされたのは2016年と比較的新しいモデルだが、古き良きアウトドアウェアの雰囲気を感じるデザインに魅せられるファンは多い。

そんなマウンテンダウンジャケットのベースになっているのがノースの代名詞とも呼べる"あのシェルジャケット"だ。そこで今回はザ・ノース・フェイスの偉大な足跡を振り返りながら、「マウンテンダウンジャケット」の魅力を紐解いていく。

目次


ルーツは登山用品店。ヒッピーカルチャーと共鳴した"自然回帰"の精神

1966年にカリフォルニア州サンフランシスコでダグラス・トンプキンスとスージー・トンプキンス夫妻が創業した「ザ・ノース・フェイス」。当初はブランドではなく、登山用品を扱うローカルショップのひとつに過ぎなかった。"北壁"を意味するその名前は、すべての山における最難関のルートに由来する。自然の中での冒険を心から愛していた夫妻の志の高さが伝わってくるネーミングだ。

ちなみにダグラスとの親交も深かったイヴォン・シュイナード率いる「パタゴニア」が前身ブランドである「シュイナード・イクイップメント」を創業したのは1970年。日本が世界に誇る「モンベル」の創業は1975年。いずれも老舗のアウトドアブランドだが、実は彼らより「ザ・ノース・フェイス」の歴史のほうが古いというのは興味深い。

via:thenorthface

ザ・ノース・フェイスを創業したダグラス・トンプキンス(1943年〜2015年)。キャリア後半はチリやアルゼンチンの自然を保全するための活動に尽力。2015年、チリ南部のパタゴニア地方の湖にて乗っていたカヤックが転覆し、低体温症によりこの世を去った

当時のアメリカの時代背景をおさらいしておくと、60年代後半から70年代前半にかけてはベトナム戦争が泥沼化していた時期でもある。既存の社会のシステムに疑問を抱くヒッピーと呼ばれる若者たちは、都会から脱出して自然の中に回帰していくライフスタイルを模索していた。そんな反戦運動や公民権運動とも共鳴したヒッピームーブメント発祥の街が、まさにカリフォルニアのサンフランシスコだった。

そんな雰囲気が感じ取れるのが「ザ・ノース・フェイス」のオープニングパーティー時のひとコマ。ボブ・ディランのポスターが貼られた店内で演奏を披露したのは、あのグレイトフル・デッドや米・フォークシンガーのレジェンドであるジョーン・バエズだったそう。入口のセキュリティーを務めたのはバイカーギャング集団のヘルズ・エンジェルズだったというのも今振り返ると驚きだ。

ダウンパーカー、寝袋、バックパック、テント…。画期的な製品を開発した70年代

そんな記念すべきショップのオープンから2年後、満を持して「ザ・ノース・フェイス」の名を冠したオリジナル商品の開発がスタートする。最初の製品であるスリーピングバッグは高品質のグースダウンを惜しみなく使用しただけでなく、業界で初めて最低温度規格を表示した点も画期的だった。1970年には現在のダウンパーカーの原型ともいえるシェラパーカーを発売する。

via:goldwin

アウトドア用ダウンパーカの原型とも形容できるシェラパーカーは、現在も販売されている。当時のデザインを踏襲しながら、環境に配慮した素材を取り入れてアップデートした「マウンテンキャンプシエラジャケット」¥66,000
あのアイコニックなハーフドームロゴがデザインされたのは1971年。カリフォルニアにあるヨセミテ公園の花崗岩ドームをモチーフにし、3本の線は世界三大北壁であるアイガー、マッターホルン、グランドジョラスを意味している

その後も世界初のドーム型テント「オーバルインテンション」や、アルミ製のアウターフレームを持つフレームパック「バックマジック」など独創的なアウトドアギアを次々と生み出していく。

ちなみにオーバルインテンションの性能を世に知らしめたのは、1976年のパタゴニア遠征時。イギリスとカナダの合同隊が時速200kmの暴風雪に遭遇した際、他メーカーのテントが次々と吹き飛ばされていく中で、オーバルインテンションだけが荒れ狂う暴風雪に耐えたのだという。

創業から10年程度を振り返っただけでも、すでにアウターやシュラフ、テントやバックパックなどのアウトドアでの活動に不可欠なギア全般を高いレベルで開発していたことがうかがえる。

via:goldwin

アメリカの発明家・思想家のバックミンスター・フラーが提唱したジオデシックドーム(最小の表面積で最大の容積を覆える構造体)の理論を応用したドーム型テント「オーバルインテンション」。当時のCEOであったケネス・ハップ・クロップが同氏のもとを直接訪れて共同で開発した

90年代のニューヨークが火付け役。アウトドアからストリートへ

西海岸を中心とするアウトドアのフィールドで確固たる地位を築いた同ブランドが、ニューヨークのストリートでも注目されるようになったのは1990年代。冬の寒さが特に厳しいニューヨークでは、雨風から身を守るための高性能なアウターが必須だ。一般的に狭いアパートに住んでいることが多いニューヨーカーたちは屋外で過ごす時間が長いため、彼らが「ザ・ノース・フェイス」のプロダクトに目を向けたのは必然だった。

また、80年代までは西海岸の勢いに押されがちだったヒップホップの主導権が東海岸に移り始めたのも「ザ・ノース・フェイス」の人気を決定づけた理由のひとつ。ウータン・クラン、スミフ・ン・ウエッスン、ブート・キャンプ・クリックなどの面々が同ブランドのアイテムをPV内で着用したことでストリートでの知名度は一気に上昇した。冬場のマンハッタンやブルックリンでのPV撮影は気温が氷点下になることもあったため、防寒性に長けた同ブランドのアウターは彼らにとって現実的な選択肢だったはずだ。



1993年にリリースされたデビューアルバム「Enter the Wu-Tang (36 Chambers)」に収録された「Method Man」。ソロパートをスピットするメソッドマンの後ろで、エクストリームスキーヤー向けだった「スティープ・テック」のアポジージャケットらしきものを着たクルー2人の姿が確認できる

90年代にストリートからの支持を獲得することにも成功した「ザ・ノース・フェイス」。2000年代に入り、その人気が再び加速した要因としてはシュプリームの存在も大きいだろう。1994年にロウアーマンハッタンに店舗を構えたシュプリームが満を持して、同ブランドとタッグを組んだのは2007年。数あるコラボモデルの中でも、今回取り上げるマウンテンダウンジャケットのベースとなる「マウンテンジャケット」は素材や仕様を変えて何度もリリースするほど、シュプリームにとって重要なモデルだ。

実はマウンテンジャケットおよびその後継モデルの「マウンテンライトジャケット」を主に支持していたのは、ニューヨークを拠点に活動していたグラフィティライターたち。目深に被れば顔を隠すことができる深いフードや、スプレー缶がすっぽり収まる縦長のフロントポケットは彼らのライフスタイルにフィットしていた。あのシュプリームが何度もマウンテンジャケットやマウンテンライトジャケットをリリースする理由は、そんな裏歴史としての「ザ・ノース・フェイス」のストーリーをリスペクトしているからに他ならない。

2019年春夏にリリースされたマウンテンジャケット。大胆にフロントに刺繍されたアーチロゴが話題となった

ハードシェルの名作「マウンテンジャケット」をアップデート。マウンテンダウンジャケットの魅力とは?

ここで2016年に初のお目見えとなったマウンテンダウンジャケットの魅力にも迫っていきたい。だがその魅力を語る上で、同モデルのベースとなっているマウンテンジャケットの存在は無視できない。マウンテンジャケットがはじめてリリースされたのは1985年。当時のデザインディレクターであるサリー・マッコイが考案した同モデルは"エクスペディションシステム"と呼ばれる新しいコンセプトを体現していた。

彼女はいちデザイナーでありながら、アスリートたちに同行してエベレストのベースキャンプに参加。その経験を元にしてシェルジャケットにダウンやフリースなどの中間着を自由に取り付けられるレイヤリングシステムを考案した。ちなみにヌプシジャケットやデナリジャケットもエクスペディションシステムの構想内のアイテムとなる。

現在も販売されているマウンテンジャケット。ヌプシやデナリなどを連結できるジップインジップ仕様がエクスペディションシステムの特徴だ。冬季の登山からスノースポーツまで、秋冬の山岳シーンでオールラウンドに活躍する

連結する中間着を選べるマウンテンジャケットに対して、単体での防寒性を強化するべく生まれたのが今回のテーマであるマウンテンダウンジャケットだ。70デニールの2層構造のゴアテックスを使用した表地の裏には600フィルパワーのダウンを封入。現代の高度な洗浄技術によって汚れを徹底的に除去したクリーンなリサイクルダウンは高い保温性を確保している。

デザイン面としては、大きなフラップ付きポケットをフロントに配したシンプルなデザインは変わらない。どこかレトロな雰囲気があるため、古着やヴィンテージのアイテムを合わせても成立する懐の深いアウターだ。シェルジャケットの下に着る中間着をいちいち考えるのは煩わしいと思う人にはピッタリの一着だろう。

via:goldwin

表地や中綿にはリサイクルナイロンとリサイクルダウンを採用。自然環境と共存するためのモノ作りの姿勢は創業時から変わらない。2022年秋冬以降はサイズ感を変更。身幅をハーフサイズ大きく、裄丈を1サイズ長くし、現代的なサイズ感にアップデートしている。「マウンテンダウンジャケット」¥70,400

Mountain Down Jacket "Utility Brown"

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Mountain Down Jacket "Neutopes"

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ちなみに「ザ・ノース・フェイス」といえば、肩や袖に施したブラックの生地とボディの生地からなる2トーンカラーのデザインも魅力のひとつだが、当初は意図的なデザインではなかったそうだ。単にブラックの生地の最低発注量を満たすために使用していたというエピソードが知られている。

つまり、ノースの2トーンカラーはある意味では意図せず生まれたデザインだったが、結果的に他ブランドにはない個性を獲得したとも言える。ユーザーに長年愛されるプロダクトにするためには、そんな偶発的な要素も必要なのかもしれない。

マウンテンダウンジャケットのコーディネート例3選

ここからは実際の街中でのマウンテンダウンジャケットの着こなしを3パターン紹介していく。カラー選びや合わせるパンツによって、それぞれの個性を演出している様子が印象的だ。ぜひ手に入れる前にイメージを膨らませてみてほしい。

No.1

オリーブカラーのマウンテンダウンジャケットとフェード感のあるグレーのカーゴパンツが絶妙にマッチ。ホカオネオネのシューズはベージュをチョイスして、全体を中間色でまとめたのも技あり

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No.2

根強い人気があるブラックのマウンテンダウンジャケット。ブラック×グレー×オリーブの間違いない色合わせのアクセントにした、ボリューミーなカーゴパンツの取り入れ方が巧い

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_takuya.s_

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No.3

もちろん雪国での生活にも対応してくれるマウンテンダウンジャケット。ソレルのウィンターブーツの履きこなしもリアルでかっこいい

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ojj_700

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まとめ

半世紀前に創業したブランドにも関わらず、いまなお普遍性を失わない「ザ・ノース・フェイス」。「街中で着てる人が多いから…」と避けてしまうのはもったいないブランドだ。ヌプシやバルトロライトとはまた違う魅力を持つマウンテンダウンジャケットも、ぜひチェックしてみてほしい。

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