アルファの"中の人"に聞く、定番アウター「MA-1」の魅力と選び方|コラム

発売前にXでお知らせ!

このスニーカーの追加情報や購入方法を発売前に公式Xでポスト中!

アルファの"中の人"に聞く、定番アウター「MA-1」の魅力と選び方|コラムについて

数あるミリタリーアウターの中でも、特に親しまれている「MA-1」。街中でもよく見かけるアイテムだが、そのルーツやバリエーションを把握している方は意外と少ないのではないだろうか。そんなMA-1を語る上で無視できないのが、史上最も多くの個体をアメリカ軍に納入してきた「ALPHA INDUSTRIES(アルファインダストリーズ)」の存在だ。

そこで今回、編集部はMA-1の代名詞でもある同ブランドを日本で展開する株式会社エドウインを訪問。このアイテムが生まれた背景や特徴はもちろん「今ならどう着ればいい?」という、着こなしの部分に至るまで幅広く聞いてきた。誕生から60年以上経ってもなお、MA-1が万人に愛され続ける理由に迫ったので、気になる方はぜひチェックしてほしい。

TEXT:杉山遼人

お話を伺った人

近藤貴史さん(株式会社エドウィン アルファ事業部)

アメカジ好きが高じて、株式会社エドウィンの前身となるA&Tインターナショナル株式会社に入社。現在所有する3着のMA-1の中ではシルバーカラーの一着がお気に入り。「帽子はこれしか被らない」というニューエラのRC 59FIFTYの7ハーフがトレードマーク。

目次


大きな襟が邪魔に? MA-1誕生の背景にあった戦闘機の進化

ある程度の服好きなら、一度は購入を検討したことがあるであろうMA-1。メンズファッションに欠かせないアウターであることは間違いないが、あまりに王道過ぎるアイテムゆえに取り入れるのに躊躇している方もいるだろう。何を隠そう筆者もその一人だったが、今回の取材を経た今では、手に入れたいアウターの筆頭候補になった。

「こういうアイテムって、男性にとってはロマンというか、ストーリー性に惹かれる部分が大きいですよね。その意味ではアメリカ軍に長く供給していた『アルファインダストリーズ』のMA-1は、他ブランドにない魅力があると思います。ヴィンテージのレプリカを作るブランドさんもあると思いますが、ストーリーという部分ではアルファに一日の長があるのかなと」

そう語るのはアルファ事業部の近藤さん。25年以上にわたり「アルファインダストリーズ」のMA-1を販売してきた経歴の持ち主だ。近藤さんの話と同社の資料を交えながら、早速そのストーリーを紐解いていこう。

そもそもMA-1が誕生したのは1950年代の半ば。世界情勢としては、朝鮮半島を南北に分断した朝鮮戦争、さらには1975年まで続くベトナム戦争など、アメリカとソ連の冷戦が激化していった時期だ。MA-1に代表されるアメリカ軍のフライトジャケットの変遷は、次第に高性能化していった戦闘機の歴史と切り離しては語れない。

「パイロットがプロペラ機に乗っていた時代はレザーやコットン素材のフライトジャケットが主でしたが、ジェット機が主流になる50年代に入ると素材はナイロンに変わります。MA-1の前身としてはB-15というモデルがあるのですが、要はその襟を取ってしまったのがMA-1の始まりです。プロペラ機からジェット機になるとコクピットの気密性が高くなり、ヘルメットもどんどん大型化していきます。そうするとB-15の大きな襟が邪魔になったんです」

MA-1の前身モデルB-15。ムートンの襟を取り除き、新たにニット地のリブ襟を取り付けた"B-15Cモディファイド"がMA-1のベースになった
アルファの前身となる「DOBBS INDUSTRIES(ドブスインダストリーズ)」が手がけた最初期のMA-1。その正式名称は「ジャケット・フライング・メンズ・インターミディエイト・タイプ MA-1」。ミリタリーにおけるインターミディエイトとは「-10℃~10℃の気温帯」を指す

納入数は4,000万着。フライトジャケットの完成形、MA-1の特徴とは?

ドブスインダストリーズから社名を変更し、アルファインダストリーズが設立されたのが1959年。他社製のMA-1も存在した中、なぜ「MA-1=アルファ」という評判が出来上がったのだろうか。

「アメリカ軍は何社かに製作のオファーをしていたと思いますが、それに対してアルファはちゃんとした提案ができた上に、継続的に改良する技術力もあったので受注数が増えていったんだと思います。現在は納入こそしていませんが、累計では4,000万着を軍に納めたというデータがあります」

軍への納入だけでなく、ミリタリージャケットを民間向けに販売する量も多かったアルファ。納入用と区別するために民生用のタグには3本のラインが入る(右上)。3本ラインは現在のブランドロゴにも引き継がれている(右下)

ちなみにアルファの前身の会社であるドブスインダストリーズが製作した最初期のMA-1は、今でも社内に保管されていた。そんな貴重な一着を拝見しながら、改めてMA-1の特徴を近藤さんに聞いた。

「フライトジャケット全般に当てはまりますが、戦闘機の中で着用するので狭い操縦席での収まりがいいように腰丈になっています。全体的に丸いシルエットも特徴ですね。操縦桿を握った時にストレスなく着られるように、袖の部分は腕を軽く曲げた状態を想定したパターンになっています。余談ですが、ちょっと屈んでハンドルを握った時の姿勢が似ているので、バイクに乗る方にもMA-1が好まれるのはそのせいかもしれません」

最初期のMA-1のスペックコードは「MIL-J-8279」。表地には"66ナイロン"と呼ばれるタフなナイロン地を配し、内側には保温性を高めるためのウールパイルの中綿が入る

リブ襟や左袖のユーティリティポケットは巷でよく見かけるMA-1と共通しているが、中央のジップ付近のボックスタブや左右の脇下にあるスナップボタンは初期のMA-1のみに付属するディテールだ。

「それらは酸素用ボンベのホースや通信用のケーブルを固定するためのディテールですね。最近のMA-1で見かけない理由は、単純に邪魔になったから。コクピット内の計器が進化するにつれて、ケーブルをジャケットに留める必要がなくなったのかなと。ミリタリーウェアのデザインはファッションと違って『必要だったら付ける、不要になったら外す』というのが徹底されているんですよね」

ヴィンテージ好きでなくても、そそられる佇まいの一着。その由来を知ると、各ディテールも魅力的に見える。強いてデメリットを上げるとすれば、中綿がウールパイルなので現行のMA-1よりやや重い点か

7度のマイナーチェンジを経たMA-1。あのオレンジの裏地は中期以降

1950年代半ばに「MIL-J-8279」として誕生して以来、90年代に至るまで7回のマイナーチェンジを繰り返したMA-1。計8型のバリエーションが存在する中で、一般に馴染み深いのは中期型となる「MIL-J-8279C」以降のモデルだろう。MA-1特有の仕様であるオレンジの裏地が登場するのもこの頃だ。

70年代に生産された中期型の一例「MIL-J-8279E」。前モデルの「MIL-J-8279D」との違いは左右のポケットにフラップが付く点。資料の一着はワッペンでカスタムされているが、ベースのデザインは現在アルファが販売しているMA-1と同じ。映画『ハンター』で着用されたことから"ハンターモデル"とも呼ばれる
ライニングに国際救難色であるレスキューオレンジを採用した仕様は、MA-1を代表するディテール。墜落などの事故が発生した際は裏返して着用する

「このオレンジの裏地も、地上クルーが着るための最終型である『MIL-J-8279F』や『MIL-J-8279G』になると、逆に廃止されることになるんです。地上クルーは墜落してレスキューされる可能性がほぼないからという理由ですね。僕も入社時に先輩から教わりました」

70年代半ば以降はパイロットのためのフライトジャケットという役目を後継種の「CWU-45/P」に譲り、地上の作業員や民間人が着るためのジャケットとして生産されたMA-1。7回に及ぶマイナーチェンジの内訳は、主にディテールの簡素化および軽量化として説明できる。

「MA-1のデザインの変遷としては、初期のクリップやボックスタブなどのディテールが削ぎ落とされてシンプルになっていくのが特徴です。素材の変化としては、中綿やリブにウールを使わなくなり、ポリエステルやアクリルを使うようになります。最終型に近づくほど軽いです。厳密に言うと、表地も最初は"66ナイロン"というやや重めのナイロンだったんですが、より軽量なデュポン社の"6ナイロン"を採用するようになります」

1973年にMA-1に代わるフライトジャケットとして採用された「CWU-45/P」。機内火災時の生存率を上げるために、新たに開発された耐火性の高いナイロン生地の"ノーメックス"を用いているのが特徴。 現在でも陸・海・空の3軍および海兵隊に採用されている

空から地上へ。ファッションシーンでも普及していったMA-1

アルファは数あるミリタリーメーカーの中でも、民生品の生産にいち早く取り組んだ会社でもある。80年代に入ると、日本でもタウンユースとして着用する人が増えていった。そのきっかけになったのは、やはりあの映画の存在が大きいと言えるだろう。

「最初のMA-1ブームは、86年公開の『トップガン』の第一作目が上映された頃ですね。実際に主演のトム・クルーズが着ていたのはCWU-36/PとG-1なんですけど、何となくみんなが錯覚してMA-1がブームになったような気がします(笑)。僕はまだ10歳くらいだったので、さすがに持っていませんでしたが、近所のお兄さんや街の大人たちが着ていた印象はすごく強いですね」

「次に印象深かったのは94年頃かな。裏原ブームが始まるくらいです。AFFA(※1994年に藤原ヒロシ氏と高橋盾氏がスタートしたブランド)で、既存のMA-1をカスタムして着るという流れができたんです。しかも、あれはMA-1の『トールサイズ』という少し着丈が長いタイプをベースにしていたんですよ。あの時期をきっかけにして、MA-1のカスタムや別注といった流れが生まれたと思います」

2010年代に入ると、カニエ・ウェストやエイサップ・ロッキーなどのヒップホップアーティスト勢がラフ・シモンズやヘルムートラング、ドリスヴァンノッテンといったコレクションブランドのMA-1を着用し、従来のアメカジの文脈に留まらないMA-1の着こなしも注目されるようになる。

2015年にはデムナ・ヴァザリア率いるヴェトモンが超ビッグシルエットのMA-1を発表し、今日まで緩やかに続くオーバーサイズ人気の火付け役にもなった。ちなみに、2013年にリリースされたカニエ・ウェストによる『Yeezus』のツアーグッズとして発売されたMA-1のボディに選ばれたのがアルファだったのも興味深い。

MA-1を選ぶポイントは? 生地、シルエット、ユーティリティポケットに注目

そんなMA-1を今選ぶとしたら、どんな点に注目すればいいだろうか。ポイントを挙げればきりがないが、あえて絞るとすれば「ユーティリティポケットの有無」「生地感」「シルエット」の3点。せっかくMA-1を着るのであれば、やはりユーティリティポケットは外せないポイントのひとつだ。

「ユーティリティポケットはMA-1を象徴するディテールです。シンプルなルックスのほうがいいとはいえ、これがなくなるとMA-1も単なるブルゾンに見えてしまいます。各ショップやブランドさんの別注でも、ユーティリティポケットを省略することはまずないですね。やはり実際にずっと必要とされたディテールだからこそ、みんなが惹かれるんだと思います」

別名「シガレットポケット」。煙草を連想させる大きさだが、作戦時のブリーフィングのメモや地図などを折り畳んで入れることもあったのではないか?と近藤さんは推測。あまり知られていないが、ポケットの先端にはペン先が貫通しないためのペンキャップが埋め込まれている

またMA-1は生地に妥協してしまうと、一気に魅力が半減してしまうアイテムでもある。ミリタリーウェアに疎くても、できるだけ本物のMA-1に近い生地の一着を選びたいところだが、現行のアルファで採用しているデュポン社の"6ナイロン"とはどんな生地なのだろうか。

「MA-1の後期型に採用されていたツイル地のナイロンです。アルファでは、このオリジナルの生地をフライトナイロンと呼んでいます。ちなみに本国のアメリカはもちろん、日本やドイツで展開している世界中のアルファで同じ"6ナイロン"の生地を使っています。各国ともこの生地をいじることはしません。合繊の中ではかなりタフなナイロンだと思いますが、しなやかで柔らかいんですよね。他社さんのナイロンはもっと硬いものが多いようです」

独特の光沢感とハリを併せ持つ"6ナイロン"。腕を曲げやすいパターンにするため、袖裏に入るパッカリングもMA-1らしさを演出する

続いてはシルエットにも注目したい。現行のアルファで展開しているのはUSスペックとジャパンスペックの2種類だ。3、4年前まではジャパンスペックのほうが売れていたが、最近ではUSスペックのほうが人気があるという。

「売り上げの割合で言えば、7:3くらいじゃないかな。引き続きオーバーサイズで着るムードが強いので、アメリカで流通していた頃のMA-1のシルエットに近いUSスペックを選ぶお客さんが多いですね。世代で言えば、僕らより下の20代や30代のユーザーには、USスペックのほうが人気があります」

「逆に50代、60代の方はもう少しシュッとしたシルエットを好む方が多いですね。全体の3割くらいはそういう方。ジャパンスペックのほうが袖が直線的で、すっきりした形になっています。日本人の体型に合わせて調整しているので、本来のMA-1らしさは薄れますが、いちアウターとしてはより取り入れやすくなっていると思います」

アルファ現行の「MA-1 ナイロンジャケット USスペック」。ポケットにフラップが付く中期型のデザインだ。全8色(税込み¥26,400)
身幅をシェイプし、MA-1特有の丸みのあるシルエットを軽減した「MA-1 フライトジャケット Japanスペック」。全7色(税込み¥26,400)

オールブラックも人気。今、MA-1を着こなすなら「大きめサイズをシンプルに」

MA-1を実際に着こなすためのヒントも探っておきたい。「ここ数年、自分の中でのMA-1の着こなしはほぼ変わらない」と笑う近藤さんご自身は、MA-1をどんな風に着こなしているのだろうか。

「ごく個人的なところで言えば、USスペックのちょっと大きめサイズを選んで、なるべくシンプルに着るのがいいかなと思っています。僕にとっての秋冬のコーディネートはインナーが『Tシャツ』から『クルーネックのスウェット』に変わるくらい。例えば、ロサンゼルスアパレルのグレーのスウェットを合わせたりするとすごく調子いいんですよね。グレー×グレーのワントーンで色が同化する感じというか」

やや大きめで着たい近藤さん(175cm)がいつも選ぶサイズはXL。一昨年まで販売していたというシルバーのカラーは、残念ながら今年は未展開。「展示会でサイズ確認のために置いておくと、その色が欲しいとよく言われます(笑)」とのこと
ほどよくドレープができるバックスタイルのシルエットもサマになっている。パンツは「ディッキーズ874」の36インチを合わせるのがお決まりなのだそう

シルバーのカラーを近藤さんが気に入っている理由としては、MA-1特有のミリタリー感がやや緩和される点にあるという。確かにミリタリーらしいオリーブカラーは王道だが、微妙にズラした色を選ぶことで、よりMA-1が新鮮に見えるメリットはありそうだ。

「​​実はアルファとしても『Vグレー』という色を去年から推しているんです。どちらかというと、初期型のMA-1に戻したようなニュアンスがある色味です。一昨年までは『Vグリーン』という名前のオリーブカラーをメインにしていたのですが、最近ではオリーブよりもVグレーを選ばれるお客さんが多いですね」

「また、ちょっとモードっぽい着こなしを好むお客さんに人気があるのは、裏地も黒に統一したオールブラック。『もし地上クルー用のMA-1にブラックが存在したなら?』というイメージの一着ですね。裏地がオレンジじゃないブラックはすごく人気がありますね」

裏地に至るまでブラックで統一した一着「MA-1 ナイロンジャケット USスペック」。USスペックのみでの展開となる(税込み¥26,400)

服好きにとっては、今の気分に合う着こなしをあれこれ考えるのも楽しいひと時だ。ただ、MA-1にはもっと広い意味で人々に愛される下地があると近藤さんは話す。

「MA-1が定番のアウターとして残っている理由としては、ファッションだけでなく単純に防寒アウターとしてのコスパがいいという部分も大きいと思います。軍の放出品として最初に一般に広まった際も、安価なのに作りがしっかりしているという点が受けていたはずです。そのDNAが脈々と受け継がれているからこそ、今でもお客さんに響いているんじゃないかと思います」

おわりに

アメリカ軍の技術の粋を集めたフライトジャケットであると同時に、幅広い嗜好を持つ人々のスタイルに馴染む懐の深さを併せ持つのが、MA-1の魅力なのかもしれない。ひとまずは新品・古着問わずにいろいろと試してみたいと思う。これまでMA-1に注目したことがなかった方も、これを機に自分に合うMA-1を探してみてはいかがだろうか?

information

株式会社エドウイン
問い合わせ先の電話番号:0120-008-503
HP:https://alpha-usa.jp

■スニーカーダンクアプリ

■ iPhoneの方はこちら
App Store

■ Androidの方はこちら
Google Play

新着投稿

みんなの投稿をもっと見る

写真や雑談を投稿

今日の人気記事

新着記事

この記事を見ている人は、こんなスニーカー・アパレルも見ています