エアマックス狩りは本当にあったのか?!スニーカー史に残る知っておきたいトピック10選|コラムについて
昨今続くスニーカーブーム。遡れば数々の見逃せないトピックがある。
そこで今回、名作Air Max 95(エアマックス95)が誕生した1995年から現在まで、数多くあるストーリーの中から厳選して10のトピックをご紹介。
懐かしのあのモデルや、知らなかった情報に期待しながら読み進めてほしい。
【TOPIC1/1995年】
Nike(ナイキ)からエアマックス95が誕生。第一次ハイテクスニーカーブームの到来
今でこそスニーカーがプレミア価格になることは珍しいことではないが、1990年代当初は靴1足に対してそこまでの金額をかける人はほとんどいなかった。ただ、それも1995年に大きく変わることになる。後に空前のヒット作と呼ばれるエアマックス95の誕生だ。
※当時のエアマックス95
これまでの売れ線的なカラーリングとは大きく異なる色使いに、デザイナーに対して苦言を呈する社員もいたほどで、リリース後もしばらく売れ残っていたようだ。しかし、著名デザイナーやファッションキーパーソンが雑誌で愛用品だと紹介するや否や、あっという間に完売。
日本での在庫がなくなった後、個人が並行輸入で持ち込んだものを10万円、中には20万〜30万円で販売していたショップもあったそう。そして、それすらも売れてしまい、場所によっては履いているエアマックスを強奪される事件まで発生するなど、"エアマックス狩り"という言葉も生まれニュースになるほどの騒ぎに。
驚きのプレミア価格は、まさに今に通ずるものがあるのでは?これこそが第一次ハイテクスニーカーブームの幕開けだった。
【TOPIC2/1999年】
ナイキからDunk(ダンク)が復刻。ローテクスニーカーの全盛期へ
via:atmos(Nike Dunk Low SP "Syracuse")
空前のハイテクスニーカーブームが巻き起こった1995年。先述のエアマックス95や同時期に脚光を浴びたReebok(リーボック)のInstapump Fury(インスタポンプフューリー)がブームを牽引していたが、やはり圧倒的な注目は去るのも早く、1997年頃には売れ行きも含めて下降の一途を辿っていた。
その反動で改めて注目され始めたのがローテクスニーカー。カート・コバーンが履いていたConverse(コンバース)のJack Purcell(ジャックパーセル)やナイキの(Air Jordan)エアジョーダン、ダンク、スニーカーではないがRED WING(レッドウイング)のIrish Setter(アイリッシュセッター)などだ。
アメカジや古着人気も相まって、ヴィンテージ市場でもこれらのシューズは人気になり、中でもダンクは当時日本未入荷だったこともありエアジョーダンと並んで高額に。
そんな折りに待望の復刻を遂げたダンクは、喜んで消費者に受け入れられ、日本ではあっという間にローテクスニーカーの盛り上がりが加速していった。
【TOPIC3/2000年】
ミレニアムに沸き起こる第二次ハイテクスニーカーブーム
via:atmos(Nike Air Kukini "Rattan and Particle Grey")
始まりがあれば終わりがあるのが世の常。下火だったハイテクスニーカー人気が、2000年を皮切りに再び盛り上がりを見せることになる。
その仕掛け人はナイキ。Air Zoom Haven(エアズームヘイブン)、Air Rift(エアリフト)、Air Presto(エアプレスト)、Air Kukini(エアクキニ)といったニューモデルを続々とリリースしていったのだ。
ダンクの復刻で新たなムーブメントを作り出していながらも、さらなるトレンドを生み出そうとする前向きな姿勢は、さすがと言わざるをえない。
このニューモデルたちは見事にヒットし、第二次ハイテクスニーカーブームへと繋がることになる。
【TOPIC4/2009年】
スニーカー業界のお騒がせ人、カニエ・ウェストがYEEZY(イージー)をスタート
via:solecollector
何かとスニーカー業界を騒がせているYe(イェ)こと、カニエ・ウェスト。彼がスニーカーに関わり始めたのが遡ること2009年。ナイキと契約してリリースした2足のAir Yeezy(エアイージー)は即完売、そして価格が高騰するなどして順調に人気を獲得していったが、2014年にロイヤリティの問題からナイキとの契約を打ち切る結果に。
まさにこれこそが、お騒がせ行動の第一歩なのだが、その翌年、adidas(アディダス)と契約。ナイキとは5年間で2足のリリースしかなかったが、アディダスとのイージーはコンスタントにリリースを発表していった。
via:sneakerfreaker
ところが昨年、パートナーシップ解消のニュースが舞い込む結果に。
事の発端はいくつかあるが、インラインでイージーブランドと酷似したシューズがリリースされ、カニエが激怒。アディダス社の批判を繰り返していた。
その後も彼はデザイナーのトレマイン・エモリーと揉めたり、反ユダヤ主義的な発言したりなど、物議を醸す行動を連発。アディダス社は、「当社の価値観に反する」ものとして今回の契約打ち切りに至った。契約は本来であれば2026年まで残っているものとされていたが、関係性の修復は難しかったようだ。
今後、歴史に名を刻むような新たなイージーは作られるのか? 気になるところである。
▶︎続報?adidasがKanye Westとの再契約を検討中との噂
【TOPIC5/2017年】
Off-White(オフホワイト)のデザイナー、ヴァージル・アブローによるナイキ"THE TEN"発売
via:SNKRS(Off-White × Nike Air Jordan 1 Retro High The Ten "Chicago")
後に Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)のメンズ アーティスティック・ディレクターに就任することになる「ヴァージル・アブロー」。この頃はまだ、Off-white(オフホワイト)も彼の名前もそれほどまでに知られていなかったが、このナイキとのコラボレーションによって、世界にその名を知らしめることになった。ナイキ"THE TEN"の発売だ。
via: sneakers-magazine(Off-White × Nike "THE TEN" collection)
ここで改めてその概要を振り返ってみよう。"THE TEN"はプロジェクト名のとおり、10足のスニーカーをベースに"REVEALING"と"GHOSTING"という2つのテーマを設けていた。
"REVEALING"では隠されていたものを明らかにするという意味で、シュータン内部をむき出しにしたり、スウッシュの位置や大きさを変更。"GHOSTING"では半透明なアッパーを採用するなどしている。
SNKRS(※Off-White × Nike Air Jordan 1 Retro High The Ten "Chicago")
全10足の中でもやはりダントツの人気はエアジョーダン1。市場価値は年を追うごとに、今もなお高まっている。
このプロジェクト、当初は10足のはずであったが、その盛り上がりから翌年も継続。スニーカーの歴史を語る上で、外せない出来事となった。
【TOPIC6/2018年】
ダッドスニーカーがブームに。そのきっかけは一体何だったのか?
via:snkrdunk(BALENCIAGA Triple S)
今やスニーカーカテゴリーのひとつとして成立したダッドスニーカー。そのブームのきっかけは何だったのだろうか?
爆発的な人気のきっかけは、BALENCIAGA(バレンシアガ)が2017年のメンズ秋冬コレクションで発表したTriple S(トリプルS)でまず間違いないだろう。
via:mensfoliomy(BALENCIAGA Triple S Allover Logo "White")
VETEMENTS(ヴェトモン)からデザイナーに就任した「デムナ・ヴァザリア」が手掛けたこの一足は、発売と同時に即完し、その後のハイブランドは追随するようにダッドスニーカーをリリース。これまでほとんど交わることのなかったハイブランドとストリートが交わるきっかけにも繋がっている。
では、デムナはどうやってこのダッドスニーカーを生み出したのか?
これに大きく影響しているのが、ノームコア。ノームコアとは、「トレンドに左右されず、あえて周囲の人と同じような普通を選ぶ」という意味合いで一般的に浸透したファッション用語。このトレンドの一部として出てきたのがダッドスニーカーだったのだ。派手に見えない、シンプルで着まわしの効くアイテムを着るこのスタイルで、ニューバランスのスニーカーなどが着目されていたのを覚えているだろうか。
それをファッションとして進化させたのが"トリプルS"だった。トレンドにいち早く着目し、新しいものへと昇華させたデムナの先見の明には、感嘆せずにはいられない。
【TOPIC7/2019年】
トラヴィス・スコットにより、ナイキのスウッシュが逆に
via:rap-up
時を同じくして、スニーカー好きに衝撃を与えたのがアメリカのヒップホップアーティスト、トラヴィス・スコットとナイキによるコラボレーション。見慣れたあのスウッシュを逆にするという斬新なデザインは、見るものに驚きを与えた。
今も続く逆スウッシュの始まりは、2019年2月。グラミー賞で「トラヴィス・スコット」がパフォーマンスをした直後に、米国のSNKRSと特設サイトにてゲリラリリースが敢行され、即完売を記録。
via:feature(Travis Scott × Nike Air Jordan 1 Retro High OG)
ナイキとのチームアップ自体は、既に2017年にもエアフォース1誕生35周年のプロジェクトに参加したりエアジョーダン4のコラボモデルのリリースなど行われていたが、やはりエアジョーダンの人気は、すさまじいものがあった。これは後述するDior(ディオール)もそうである。
このモデルからトラヴィスコラボは人気が加速。回を追うごとに注目度が増していった。
【TOPIC8/2019年】
世界を驚かせたディオール × ナイキのエアジョーダン1が登場
via:nike(Dior × Nike Air Jordan 1 High OG "DIOR")
ダッドスニーカーの登場もあり、ストリートと交わりが密接になっていたハイブランド。同時期の2017年にはSupreme(シュプリーム)がLouis Vuitton(ルイ・ヴィトン)と驚きのコラボレーションを果たすなど、両者の垣根はもはやなくなっていた。
そんな折に飛び込んできたのが、ディオール × ナイキのリリースだ。手掛けたのは、先述のルイ・ヴィトン × シュプリームの立役者「キム・ジョーンズ」。元々自身でストリートブランドを手掛けており、彼自身がジョーダンコレクターなだけに納得できるコラボレーションだった。
via:nike(Dior × Nike Air Jordan 1 High OG "DIOR")
発表されたのは2019年12月3日、マイアミで行われたディオールの2020プレフォールコレクション。
このコラボレーションで生産されたエアジョーダン1は1万3千足と言われており、上顧客への提供後、残りの8,000足が販売になったと言われている。当時のレート換算で日本円にしてローカットモデルは約21万円、ハイカットモデルは約24万円という高額な価格にも関わらず、特設サイトへのエントリーはなんと約500万人。
スニーカーに資産価値があるということを決定づけた出来事になった。
この流れは今も続き、LOEWE(ロエベ)とOn(オン)、ルイ・ヴィトンとナイキのエアフォース1へと続くきっかけになったことは確実だ。
【TOPIC9/2020年】
JJJJound(ジョウンド)とNew Balance(ニューバランス)の"992"。ジョウンドの名が知れ渡る。
via:mita-sneakers(JJJJound × New Balance 992)
ハイプなコラボスニーカーの陰で、着実にその人気を広げていたのがニューバランス。このブランドはコラボモデルよりも、USAメイドのモデルなど、インラインの人気が高いのが特徴だったが、ジョウンドとのコラボレーションで誕生した992の誕生によって一気に人気が爆発。このコラボモデル発売が、ニューバランスというブランドの認識を一変させたと推測される。
このモデルの発売日には販売店舗には1,000人もの人数が列をなした。地味だと言われていたニューバランスが一躍、ハイプなスニーカーの仲間入りを果たし、また多くの人が知る人ぞ知るブランドだったジョウンドを認知するきっかけとなったはずだ。
この両者によるコラボレーションはその後も続き、どのモデルも大人気に。すべてがプレミア価格となっている。
【TOPIC10/2022年】
ゴープコアの人気は足元にも。スニーカーブームは新たなステージへ
via:atmos(Salomon XT-6 "Lunar Rock")
これまではナイキやアディダスなど、大手スポーツブランドの人気が目立っていたスニーカーだが、昨今新たな局面を迎えている。
たとえばランニングシューズのデザイン性が改良され、日常的に履けるようになったり、アウトドア文脈のスタイルが人気を得てトレッキングモチーフのシューズに人気が集まったことだ。
via:atmos(Asics Gel-Lyte III OG "White")
ブランドはAsics(アシックス)やOn(オン)、Hoka(ホカ)、Salomon(サロモン)など。スタイルの細分化によって、スニーカーの人気もそれぞれの着こなしに紐づくようにわかれていったと推測される。
90年代はハイテク or ローテクの二分化で済んでいたものが、今ではさらにランニング、トレッキングなど、どんどんカテゴリーが細かくなっているのだ。さらにファッションブランドとのコラボレーションも目立った。
via:ModernNotoriety(JJJJound × Asics GEL-Kayano 14 "White")
アシックスはジョウンド、サロモンはMaison Margiela(メゾン マルジェラ)など、既存のスニーカー好きにも刺さるデザインは盛り上がりを見せ、今後もどんどん広がり見せていくはず。
これからのスニーカー業界はどんな動きを見せてくれるのか。楽しみである。
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